一日目、昼の記録 - 選定のオルディナンス

2014/05/12から2014/05/14までの、〈勇者〉と〈神具〉の語らいの様子です。
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クレアーヘリオン @Clairherlion

おかしい、とは、すぐに気づいた。けれど、遅すぎた。部屋を出て今まで、僕は誰とも会わなかった。すれ違うどころか、遠目に見ることもなく、歩いてきた。だから、気づいた時には、もう遅かった。 振り向こうとすると、足下が崩れ始めた。罅割れの向こうから、闇が溢れだして、足場を飲み込んでいく。

2014-05-12 00:00:18
クレアーヘリオン @Clairherlion

振り向いては、立ち止まってはいけない。その迷いは、僕を奈落へと誘う。理解して、駈け出した。ただ、前へ。 腰の剣が邪魔だった。記憶を失った僕は、そこに剣が存在することに、慣れていない。だから、剣帯を外して打ち捨てた。それは、床に落ちて音を鳴らすこともなく、底なしの闇に沈んで行った。

2014-05-12 00:00:27
クレアーヘリオン @Clairherlion

走った。ただ、走り続けた。この異常な現実(この感触は、夢や幻ではない)に直面しても、僕は恐れを抱いてはいなかった。楽しみさえ覚えて、崩れる床と追いかけっこをした。 分かれ道。直進するつもりが、できなかった。その先が、背後と同じように崩れはじめたからだ。誘導されている。そう感じた。

2014-05-12 00:00:36
クレアーヘリオン @Clairherlion

追いやられた先、突き当たりに、扉があった。ほとんど体当たりをして、僕はその先へと転がり込む。 ――崩落の気配が、消えた。 「……はは……」 笑みをこぼす。少し上がった息を整えながら、周囲を見回す。 「さあ……ここ、どこだろうね」 暗い、広間のようだった。六つの台座と、何かが並ぶ。

2014-05-12 00:00:40
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

並ぶ六つの台座がひとつ。そこには柱時計が在った。ひとを見下ろすようにそびえる時計。黙々と時を刻む大きな時計。黄金と白銀とが緻密に組み合わさって。宝石と水晶とが星のごとく端々を飾って。植物の緑と幾つもの花冠を、衣裳のように帯びた柱時計が、そこに佇む。

2014-05-12 00:05:22
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

動き出していた秒針が、再び12の時を差し、止まる。バラバラな方向を示していた短針と長針が急くように動き出し、一箇所に集う。すべてが12の時を示す。柱時計から、重い鐘の音が響く。来訪を迎える祝福として。来訪をあざ笑う侮蔑として。あるいは他の目覚めを促す、覚醒の報せとして。

2014-05-12 00:06:15
ニゲルニグ @niger_nig

「これはまた、随分と可愛らしい勇者様が一番乗りだなァ?」 面白がるような男の声が広間の奥から聞こえた。 目をこらせば気づくだろうか、それは台座の一つに鎮座する黒く、大きな斧から『発せられて』いた。

2014-05-12 00:07:01
キュセル @ozQuseL

部屋に、照明が、灯る。 「――RaR,Re nisie ant oz misio 『主(キュエーネ[queene]』?」 全ての『神具』が、目覚める音。其々の『声』に混ざり、一つだけ、鼓膜に伝わる『音』がした。女の声を切り貼りして滑らかにしたような、声。『剣』が、口を利いた。

2014-05-12 00:09:48
人間《ディアドラ》 @actSkbz

《是。可愛らしい、と云う部分には同意致します》 黒き大斧の音に反応一つ。台座に鎮座する真白の分厚い書。表紙には虹色に煌めく大きな宝石が埋め込まれている。 《アステーリアは問います。随分と慌ててらしたようですが、何か御座いましたか、と》 涼やかな音は無機質に。ただ思考を伝えるのみ。

2014-05-12 00:11:06
ミシェル @tfhMichelle

重そうな扉の前で彼はしばらくぼんやりしていた。 どうにも、ここまで自力で出向いたという記憶がない。気づいたら見たことのない扉の前に立たされていた____ように思える。 夢を見ているのか、と憶測が一瞬頭をよぎりはしたが、何故だか彼には、これが夢でないという奇妙な確信があった。

2014-05-12 00:16:52
キュセル @ozQuseL

「情報開示。キュセルはキュセルらの『候補』が必ずしも自らの意思でこの場に訪れる訳ではない事を認識しています」 機械的な『声』に、声が返る。漆黒のフランベルジェ。機械仕掛けのそれは、台座の一つの上に佇んで居た。 「提案。キュセルは、新たに現れる『候補者』へも、認識の共有を求めます」

2014-05-12 00:17:08
クレアーヘリオン @Clairherlion

声が聞こえて――いや、感じ取って、見回す。人の姿はない。それを期待したわけではない。ただひとつ音として伝わったものも、人の喉から出たものではなさそうだった。つまり人ではないものが、複数。 灯った光、眩しさに目を眇める。 「勇者? って、僕のこと?」 声の出元、台座の上を見やって。

2014-05-12 00:20:50
ヨモギ @ord_yomogi

台座の上から鈴鳴りの如く。 「我らの流儀にあっては幾度幾星霜尽きず厭きず繰り返してきたことではございますが」 声は張り詰めた琴の如く。 「なれど此度は一度目の此度であればまた繰り返しましょう」 心なしか緑青が鈍く煌めく。 「問いかけを  汝(なれ)は何を求めるのかと」

2014-05-12 00:21:03
ミシェル @tfhMichelle

ぼうっと扉を見上げ、ふと、向こう側から漏れる気配のようなものに気づく。 耳を澄ませてみると、まるで数人の男女がめいめい離れた場所の椅子に腰掛けて声だけで遣り取りをしているような。

2014-05-12 00:22:00
マキナ(machina) @ord_machina

並ぶ六つの台座の一つ。そこにそれは在り、そこにそれは無い。 白銀と黒から成る異形の弓は、照らす光で煌き、沈み。 不動のまま、しかし明朗に。 『いや、はや、これはこれは。ここに在りてここに居らぬ私も、皆々様の御来場」 と持ち手の歯車を鳴らす。 「今なおお待ちしておりましょうぞ」

2014-05-12 00:22:45
ニゲルニグ @niger_nig

「ああ、そういや勇者サマ達はどうやってここに来るのか俺らはしらねぇな」 書物の言葉に芝居がかった口調で斧は言う。 ふむ、と一息考え込むような声を出し。 「共有ってのはあれだな。ひとまず俺ら神具も含めて、全員やりてぇ所だね」

2014-05-12 00:25:41
ミシェル @tfhMichelle

____その遣り取りの中央にひとつだけ動く気配があった。 「誰かいるのかな」 わかりきっていることが、つい口をついて飛び出す。……独り言を言う癖は今日もご健在だ。

2014-05-12 00:26:00
人間《ディアドラ》 @actSkbz

《是。確かに、情報の共有は必須事項かと思われます》 星の巡りが此処からでも認識出来た。輝きが強く灯ったのが見える。――扉の前。 《そこの可愛らしいお方以外にもう一人、外にいらっしゃると、アステーリアは告げます》 《――共有は、集まったと思われる段階でと云う事でしょうか》

2014-05-12 00:28:27
スウェンテイル及びThe C @sousaku_asobi

「ふむ。ようやく言葉も解放されたようだね。ようですね。みたいだな。……どのような言葉を紡いでいたか。どんな風に喋ってたっけ」一言一言をじっくりと確かめるような、そんな調子で。時計から響く、ひとの声。男性のように低く、時には女性のように高く。幼子のように甘く。声音は一定ではない。

2014-05-12 00:28:30
ニゲルニグ @niger_nig

「そう、ここに来られたんだ。お嬢ちゃんは『勇者』だ」 笑いを含んだ声で斧は告げる。 明るくなって尚くらやみを含んだ色をしたそれは軽い調子で続ける。 「まぁ、神具……俺らだな。神具の数からしてまだもう少し増えるだろうよ。 ようそこ、選定会場へ」

2014-05-12 00:30:33
アルファベット @alpha_ordinance

「どうやってここに来るのか」。  その言葉に呼応したように、その何処とも知れぬ空間の、遥か天上にあたるのだろう彼方から、「ふぇ」という情けない声が遠く響いた。

2014-05-12 00:31:16
マキナ(machina) @ord_machina

「然り、然り。今は、マキナ、無機なる調べを奏でるものと名乗る、私も」 六つの台座に鎮座する者達に呼応するように。 「いつか皆々様の調べを奏で、唯一たる真の銘を称し」 六つの歯車が整然と廻り始め。 「ええ、そうです、そうでしょうとも。この時この場、ここにいる貴女のような勇者の為に」

2014-05-12 00:31:59
牡丹 @ordnanceI_peony

――静寂が、幾ら続いただろうか。 これが世に聞く走馬灯かと、女は思う。己の世界に、閉じ隠る様な感覚。訪れるべき現実は、幾ら待てども降りかからない。頬を撫でる風。戦場のものではない寒気を感じて、牡丹はようやくその目を開いた。 「……ここ、は」 眼前の大扉を前に、息を詰まらせて。

2014-05-12 00:32:13
アルファベット @alpha_ordinance

「っぇあああああ――!?」  悲鳴がたっぷりと時間をもって近付いて、場の中央、既にいる少女に並ぶ位置を目指していたかのように、人間がひとつ叩きつけられた。  落下だった。絵に描いたような雑な落下である。

2014-05-12 00:32:49
ミシェル @tfhMichelle

少年は扉に手を添えて、そっ、と力を込める。 さぞかし重いだろうと思っていた扉は意外にも簡単に開きはじめる。 「____わ!」 扉の内側から溢れ出した目映さに、思わず声が漏れた。

2014-05-12 00:33:33
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