無
@rapi_L11
「生きるか死ぬか、それが問題だ」 目の前の男が、少年の母国語を流暢に口にする。それが、かつて英国ルネサンス文学の最高峰と謳われたシェークスピアの悲劇のセリフとも知らぬ幼い少年は、自分の身の上を重ねあわせてその言葉をそのまま受け入れた。
2014-05-17 20:58:10
無
@rapi_L11
生きて何をするか。 何ができるのか。 そうではない。 生きたいから生きるのだ。 ほんの数時間前に、本来ならば自分の命はとうに消え去っているところだった。あの綺麗な少女に命を半分にしてもらわなければ、今ここに自分は立っていない。
2014-05-17 20:59:06
無
@rapi_L11
否、実際は雪の上に膝をついているのだが。そんな事は些細なことである。 生きたいからではなく、生きて何をするかを考えなければならなくなった。
2014-05-17 20:59:30
無
@rapi_L11
「ここで死ぬか、それとも私に調教されるか。選びなさい」 教養のない無知な少年にもわかるよう、言葉を選んで告げてきた。元はストリートチルドレンと分類され、泥水を啜りながら生きて来てはいたが、その生に自由などなかった。ドルシアナの奴隷と言っても良い。
2014-05-17 21:00:23
無
@rapi_L11
奴隷に対して『調教』という言葉は覿面だった。 少年は自分の唾液を飲み下すことがやっとで、自分が何を告げたのかも覚えていない。 けれども確かに、その時、彼はその残酷な取引に応じてしまったのは事実だった。
2014-05-17 21:00:53