(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss を使用していただけると大変ありがたいです。宜しければ暫くの間、お付き合い下さいませ。ニンジャ来たら中断します)
2014-05-17 21:04:04ピピピ。ピピピ。軽快な電子音が部屋に響く。ベッドの枕元からだ。目を覚ますにつれて、素肌を薄いシーツに覆われているのに気づく。私は腕を伸ばして、枕元の目覚まし時計を叩いた。耳障りな音が止まる。一仕事終えて、はふぅ、とため息が漏れる。 1
2014-05-17 21:05:21……それから少しして、ドンドンドン、とやかましい音が聞こえてきた。「いつまで寝てるの!早く出てきなさい!」「なあに、まだ5時でしょ?」「何言ってるの!もう6時よ?」「え?」顔を起こして、目覚ましを見る。5時に鳴ったはずの目覚まし時計の針が、6時過ぎを指していた。 2
2014-05-17 21:09:02しまった、二度寝したか!慌ててベッドから這い出す。ドアを開けると、巫女服の女の子が仁王立ちしていた。「オハヨ」「遅い!」容赦なき右フック。顎にクリーンヒットだ。寝起きで脳を揺さぶられるなんて貴重な経験である。正直しんどい。 3
2014-05-17 21:12:28「全員とっくに会議室よ」「やー、ごめんごめん」「まったく……ところで、アサヒが部屋にいないのだけれど」「アサヒなら私の隣で寝てるよ?」容赦なき左フック。だが避ける。二度も同じ手は食わない。「起こして連れて来なさい!」「あいよ」 4
2014-05-17 21:17:04ドアが乱暴に閉ざされる。「朝から元気ねえ」と溜息をついて、私はベッドのシーツを引っぺがした。「くかー……」一糸まとわぬ女の子の寝姿が、白日の下に晒される。「アサヒー、朝よー」肩を揺すってやると、アサヒはむにゃむにゃ言いながら擦り寄ってきた。 5
2014-05-17 21:20:40すりよる頬は瑞々しく柔らかい。ふわっとしたショートボブの髪が、私の腕をくすぐる。何度抱いても飽きない子だ。体が疼く。ドアを見る。「ちょ、ちょっとぐらいなら……」すりよるアサヒの頭を抱いて、そっと唇を重ねる。それからそっと、彼女の両足の間に手を伸ばした。 6
2014-05-17 21:25:07「おらっしゃあっ!」ゴアオォン!物凄い音と共に、ドアが吹き飛んだ。とっさにアサヒを庇った私の背中に、へこんだドアが直撃する。「グワーッ!?」「だから早く来いって言ってるでしょうが!レズってるんじゃないわよ!」やばい、すっかりバレバレだった。 7
2014-05-17 21:28:49「ごめん、ホントにごめん!すぐ行くから!」廊下に向かって呼びかけてから、私はアサヒの体を強く揺する。ようやく、この子は目を覚ました。「……おはよー」「おはよう。アサヒ」「はぁい」寝ぼけ眼が可愛い。アサヒがベッドから降りて、廊下に向かおうとする。「ちょっと、服!」 8
2014-05-17 21:34:50私の声で、アサヒは服を着てないことを思い出したみたいだ。床に落ちていたブラジャーをつけ始めた。私も鏡の前に立つ。急ぎだけど少しは身だしなみは整えないと。タンクトップとカーゴショーツを着て、少し考えてからジャケットを羽織る。少し寒かった。 9
2014-05-17 21:38:37黒い長髪をポニーテールにまとめる。寝ぐせを一発でごまかせる、お気に入りの髪型だ。化粧は後でいいや。時間がない。「先行ってるねー」黒いパーカーを羽織ったアサヒが出て行った。ブラジャーとパーカーしかしてなかった気がするが、まあいいや。私も後を追って会議室に向かう。 10
2014-05-17 21:42:15「お待たせしましたーっ!」「遅いぞ!」作戦会議室に駆け込んだ私とアサヒに、早速怒鳴り声が降りかかった。提督が怒っている。「いやー、ごめんごめん。アサヒが可愛くってつい」「おま……何て格好してんだ!」「服、近くにあったやつを借りてきた」 11
2014-05-17 21:45:40提督の目はほぼ裸パーカーのアサヒに釘付けだ。「なあに、気に入ったの?」「いや違ェよ!」「いやでも、いいわよねーあれ。提督、確か着たままするほうが好きだったわよねえ?今度ああいう格好してあげようか?」「やかましい!」怒鳴る提督の顔は微かに赤い。ほんとむっつりなんだから。 12
2014-05-17 21:49:07「なぁーに、想像しちゃった?なんならここで一発……」「そんくらいにしとけや」後ろから声。振り返ると、紋付袴を身にまとった、切れ長の目の女の子が私を睨みつけていた。「なによー、そんなにピリピリしちゃって」「……話を聞きゃ分かる。とっとと座らんかい」「へいへい」 13
2014-05-17 21:52:57「……よし、もういいな」提督がタブレットを操作すると、会議室のスクリーンに海図が映し出された。「赤煉瓦から出撃命令が入った。我が羽田特務艦隊は、これより沖ノ島海域に出撃する」東京のずっと南、小笠原諸島の更に先にある小さな島だ。「そんなところに、何の用なの?」 14
2014-05-17 21:59:50「昨日に入った情報だ。沖ノ島海域で……横須賀の第3水上戦隊が消息を絶った」「……なんですって?」提督の言葉に、思わず私は聞き返していた。横須賀第3水上戦隊は、イージス艦『磐長』を旗艦とする合計4隻の艦隊だ。主に小笠原諸島周辺のパトロールを行っている。 15
2014-05-17 21:59:56大規模作戦の参加経験も多く、私たちも何度か共同作戦を組んだことのある歴戦の艦隊。それがいきなり消息不明になるなんて考えられない。それに。「第五駆逐艦隊はどうなったの!?」あの4人の姿を思い浮かべながら、私は叫んでいた。 16
2014-05-17 22:03:43「……分からん。『磐長』を初め、全艦が消えた。艦娘たちもどうなったか、知る手段がない」「そんな……」第五駆逐艦隊は、不知火、叢雲、夕霧、陽炎の4人の艦娘で構成された部隊だ。3水戦に所属して、通常艦艇の支援を行っている。日本海海戦でも共闘した艦娘たちだ。 17
2014-05-17 22:07:10特に叢雲と陽炎の二人が非常に可愛い。もちろん全員可愛いんだけど、戦いが終わった後真っ先にデートのお誘いをしたのはあの二人だ。断られたけど。「あの子たちが、どうして……?」せめて、どこかで無事であって欲しいと思いたいが、海の怖さはよく知っている。 18
2014-05-17 22:11:15「……この事態に対処するため、大本営は横須賀第1艦隊の派遣を決定した」「第1艦隊をですか!?」さっき私を起こしに来た、巫女服の女の子が声を上げた。気持ちはわかる。何しろ第1艦隊は、国防海軍の中核艦隊だ。「どうやら上は、東京を攻撃される前に、全力で叩き潰すつもりらしい」 19
2014-05-17 22:15:25確かに沖ノ島でこんなことがあっちゃ、戦力の出し惜しみはしていられない。「我々羽田特務艦隊は、第一艦隊を側面より支援する」「何、私らが前線張るんじゃないの?」「上の連中は、まだウチらの力を信用しとらんのじゃろ」後ろの紋付袴の子が不満げに呟いた。 20
2014-05-17 22:19:13艦娘が生まれてから3年、私たちの立場は今まであまり良くなかった。通常艦艇と比べて遥かに安い燃費と、今までの軍隊には無かった魔法という要素を持った私たちだけど、やっぱり女の子に人間を辞めさせて、最前線に送り込むという行為には反発を持つ人間が多い。 21
2014-05-17 22:23:21そんな世論をぶち破ったのが、この前の日本海海戦だ。初めて組まれた艦娘中心の艦隊で、かつてない深海棲艦の大軍勢を撃退したことで、ようやく私たちの存在は世界に認められた。だけど、上層部にはまだ私たちの力を疑問視する声が強い。まあ、あの戦いまぐれがあったのは確かだけど。 22
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