茂木健一郎氏 @kenichiromogi 第1240回【古事記、イイネ!】連続ツイート

2014.5/19 茂木健一郎氏 【古事記、イイネ!】連続ツイート …現代において、『古事記』のような神話に触れることの意味は、私たちの命が由来するところの起源のあり方、いわばwild typeに接することで、私たちの命がより強靭なものになるという作用にある気がする。鈴木三重吉の『古事記物語』を読んでいる間、私の気持ちは大らかになった…
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート第1240回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、このところ、iPhoneで読んでいたもの!

2014-05-19 06:39:08
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(1)夏目漱石が弟子の鈴木三重吉に送った手紙の一節「僕は一面に於て俳諧的文學に出入すると同時に一面に於て死ぬか生きるか、命のやりとりをする樣な維新の志士の如き烈しい精神で文學をやつて見たい」は有名だ。その鈴木三重吉は『赤い鳥』で、児童文学の父だ。

2014-05-19 06:40:19
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(2)鈴木三重吉が『赤い鳥』に連載していた『古事記物語』が青空文庫ベースのiPhone上のアプリ i文庫にあったので、この所、移動しながらとか、トイレの中とかで読んでいた。古事記を読み返すのは久しぶりだが、とても面白い。いにしえの人たちのおおらかさが楽しいのだ。

2014-05-19 06:41:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(3)古事記に出てくる原初のかみさまたちは、とても大ぶりで、衝動的で、しかして人間的である。その読み味は、ゼウスやアポロンやいろいろなかみさまたちがやはり好き勝手に振る舞う古代ギリシャの神話に少し似ている。争いもすれば、一目惚れもする。敵味方のあり方もおおらかだ。

2014-05-19 06:42:56
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(4)それが、時代が下って、初代天皇が登場される頃に至って、『古事記』の読み味はいろいろな意味で近代、現代につながる感触となる。人々のふるまいはより抑制的で、均衡のとれたものになる。社会や倫理のあり方も今の私たちの連想が及ぶものになっていく。その移行が面白い。

2014-05-19 06:44:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(5)日本書紀は、中国の編年体の史書の形式に従って「よそ行き」に書かれた文書であるが、一方の古事記は「上代特殊仮名遣」と言われる当て字で、文字を持たなかった当時の日本人が、音をあらわそうとして現代で言えば「夜露死苦」みたいな工夫をした。そこがまたよい。

2014-05-19 06:47:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(6)古事記は、天皇の代々になっても、争いや裏切りといった偶有性を描き、今に続く天皇のあり方が、創成期にはどうであったかということを考える上で興味深い。ただ、裏切る者、謀反を起こすものに対しても「敬語」が使われる『古事記物語』の読み味は、なかなかに不思議である。

2014-05-19 06:49:25
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(7)以前、高千穂に行った時、若い宮司が、「天照大神さまは、生きていらした時は人間のお名前があったと存じますが、私たちはそれを存じ上げません」というのを聞いて以来、そもそも神話における「神」とは何なのだろうと時々考える。人間の振る舞いは不思議な移行を遂げる。

2014-05-19 06:50:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(8)先祖にさかのぼるほど、「今」の私たちの考え方、感じ方、行動様式とは異なる人間のあり方につながっていくのであって、しかしその人たちは間違いなく私たちの祖先なのである。「神話」における「神」とは、そのような、私たちとは異なる、しかしつながっている人間のあり方なのだろう。

2014-05-19 06:52:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

こい(9)現代において、『古事記』のような神話に触れることの意味は、私たちの命が由来するところの起源のあり方、いわばwild typeに接することで、私たちの命がより強靭なものになるという作用にある気がする。鈴木三重吉の『古事記物語』を読んでいる間、私の気持ちは大らかになった。

2014-05-19 06:53:27
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート第1240回『古事記、イイネ!』でした。

2014-05-19 06:53:46