茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1245回「まねをすると、劣化コピーになる」

脳科学者・茂木健一郎さんの5月24日の連続ツイート。 本日は、最近ふと思ったこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート1245回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、さいきんふと思ったこと。

2014-05-24 07:35:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(1)最近、「コピペ」という言葉が流行っていて、博士論文だけでなく、国会答弁のための書類でもあったとかなかったとか。それで、デジタル時代になってコピーをするのが簡単になった今日この頃なのだけれども、改めて、コピーというか、模倣することについて考えてみたい。

2014-05-24 07:36:53
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(2)西洋絵画の名作を、模写したものが時々あるが、必ずといっていいほどオリジナルよりも悪い。いわゆる、「劣化コピー」である。これはなぜなのかと時々考えてみる。たとえばダヴィンチをまねしようとすると、技術が足りないから悪いものになる、という考え方になりやすい。

2014-05-24 07:38:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(3)しかし、模写がオリジナルよりも悪いのは、もっと深刻な問題があるのではないか。プログラムで言えばソースコードがわからないというか、その表現者がそののような表現をした、その根本的な事情というか、生理が代替できないというところに、困った問題があるように感じられる。

2014-05-24 07:39:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(4)もし、ダヴィンチの模写をする人がいたら、おそらくその結果はオリジナルに比べれば惨たるものになるだろう。では、その人がぐるっとモナリザに背を向けて、その人のやり方で、勝手に、好きなものを書き始めたらどうか。案外、ぜんぜん違った、勝負になるものができるのではないか。

2014-05-24 07:40:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(5)人間もそうで、誰かのまねをしようとすると、必ずその人の劣化コピーになる。太宰治のまねをして小説を書いても、結果は惨たるものなのだ。なぜって、その人には、太宰があのような表現をした、その必然性の一番コアの部分は再現できていないからだ。

2014-05-24 07:41:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(6)ビジネスにしても、グーグルやアマゾン、フェイスブックのまねをすると、必ず劣化コピーになる。だから、ぐるりと反対を向いて、ぜんぜん違うことをした方が、自分の中にある必然性、生の履歴が反映されて、しっくりときたもの、案外勝負になるものができるであろう。

2014-05-24 07:42:42
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(7)だから、何かにインスパイアされるということはあってもいいけれども、そのインスパイアの内実は、抽象化された、ある普遍的次元において、あるいはアウラそのものに即してあるべきであって、決して、その対象そのものの表出をなぞるということであってはいけないのである。

2014-05-24 07:43:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(8)それぞれの人の持っている調子、身体のバランス、生理の機微というものがあるはずで、その土の中に根ざして、腐葉の中から芽生えたものならば、必ず勝負になる。というか、勝負にならなくても本望というか、とにかくそれ以外にはないと言えるわけだから、すっきり後味がいい。

2014-05-24 07:44:51
茂木健一郎 @kenichiromogi

まれ(9)モノマネが上手い人(英語で言えばimpressionist)は、実は本人をコピーしているのではなく、本人にインスパイアされて、本人自体を突き抜けてどこか別のところにいってしまうくらいの勢いがあるのである。だから、「本人よりも似ている」。その人自身の表現になっているのだ。

2014-05-24 07:46:19
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート1245回「まねをすると、劣化コピーになる」

2014-05-24 07:46:38