ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/11/09

キヨシロウ @kiyoshiro_aoi

#twnovel ついに時間旅行が可能になったので、多くの人々が自分の望む過去や未来の世界に旅立っていった。しかし一方通行の旅だったので誰もこの世界に戻って来れなかった。この世界の歴史が変わる事はなかったが、未来は少し静かになった。

日向日影🍊📖@文化系物書きVtuber（HUB） @hyuugahikage

#twnovel 未来に着いた我々がネットに接続すると、「！」「乱」「み」など1文字の吹き出しが乱舞している。ガイドにこれは何かと聞いた。「流行のサイトです。ホームページ、ブログ、SNS、ツイッターと、簡易で字数が少なく制限の多いものへと変遷しましたよね。その究極です。」

layback @laybacks

目を覚ますと夫が薄明かりの中で何かを読んでいた。「まだ起きていたの？」「ああごめんよ。起こしてしまったね」夫は紙切れをサイドテーブルの上に置いた。「何を読んでいたの？」夫はわたしに体重をかけないようにやさしく覆い被さってくる。首筋に冷たい手が触れる。「遺書だよ」 #twnovel

雨之森散策 @t_amamori

十八になった月に国から人生設計書が配布された。この冊子通りに人生を歩めば報奨金が入るらしい。まず25歳迄に就職30歳迄には結婚、40歳迄には子供を二人以上作り家を建てる。厳しいが特に最後の65歳迄に子供を自立させて自然死する事というのは至難だ。これもお国の為か。 #twnovel

とおる6th @windcreator

彼のツイートは私の心に突き刺さってずぶずぶと深く埋まっていく。「たった140字で何が出来る」だなんて言うかもしれないけど、プロポーズが140字以上だった試しなんてないでしょう？ そういうこと。政府を落とせば国が変わるように、心を侵略されたら後はもう、染まるだけ。 #twnovel

浅葉積木 @tsumiki_a

人通りのない暗い夜道、見知らぬ若い女性の後ろを歩く。女性の足が速くなったようだが私の歩く方が速い。徐々に距離を詰める。手が届くほどの距離まで近づいたとき、女性は急に曲がって細い路地へ入っていった。私はそのまま直進した。まもなく自宅に帰り着いた。それだけの話だよ？ #twnovel

@olive_sw

今日一つだけ嘘をついた。傘を忘れてきたって。朝から降っていただろって、呆れたように言われて、鞄の中のたたんだ傘がばれやしないかって少しだけどきどきした。肩がふれそうな距離で歩いたのは今日が初めて。雨降りの街路樹がこんなに明るく見えるって知ったのも今日が初めて。 #twnovel

KEN8 @_akausagi_

#twnovel ペット育成ゲームを買った。初めは面白く夢中でプレイしたが、二ヶ月程で飽きてしまった。このゲームの利点はペットが絶対死なない事である。しかしそれは短所とも言えるだろう。｢死｣は終わりであり区切りである。それを省いたゲームに残るのは永遠という名の退屈なのだ。

TAG @bttftag

#twnovel 「電子メールやが革新的と捉えられた本当のところは、その無比の確実性にある。メールを送信すれば、まあほぼ確実に相手のところに届く。現金書留なんて信じられないものまで確実に相手に届く、日本人には分かるまい」と南米出身の同僚に吐き捨てられたが、そんなこと言われても。

すわぞ @suwazo

#twnovel ミステリ界の大御所Ｓ氏は突然すべての財産を注いで宇宙船を造り、ただひとり宇宙へ飛び立った。ミステリを捨てＳＦに走ったのだと嘆く世界中のファンのもとに、彼が何者かに殺害されたというニュースと、『この究極の密室殺人の謎を解け』というＳ氏からのメッセージが届いた。

ヨシムラ @ortk

玄関を開ける。夜明け前の薄闇が広がっている。遠くの方に朝日が見える。背を向けて歩き出す。あと何回、これを繰り返すのか、考えたくなくて、iPodから伸びるイヤホンを耳にねじ込む。いつだってそうだった。あの日死んだ金魚の為に穴を掘っていたときも。 #twnovel

ぼろいねこ讃 @nekoboro

大気が大急ぎで駆け抜けている。わたしのシャツはそのせいでハンガーごと飛ばされてしまって、彼方。そして、わたしに見せたことがない表情を見せた。シャツはこの事態を楽しんでいるんじゃないかとすら、思った。 #twnovel

中村ヘボピー @hebop_

「昔はそうじゃなかったのに、最近の君は小学生の女の子によく視線がいくね。まさかそういう趣味にでもなったかね」「吸血鬼でない君にはわからんだろうよ。今のご時世、処女の血を吸おうと思ったらどうしたって、あの年頃の子も考慮に入れねばならん」 #twnovel

みたね @mitane

きみの冷たい足をさすっていると、まどろんでしまう。生ごみを出し忘れたせいで感じる腐臭も、もうどうでもいい。ああ、きみも同じにおいがするころになってしまったのかい。次のごみの日はいつだっけ。 #twnovel

八本正幸 @nekogamihakase

人間豹は飢えていた。場末の酒場で狼男と呑んでいるとテレビにいつかの女芸人が現れた。「突撃レポート！噂の都市伝説・恐怖の人間豹を追え!!」人間豹は呑んでる鮭を吹き出した。画面には不細工な豹の着ぐるみを着た女芸人が走り回っている。狼男が笑い転げた。 #twnovel

140字物語 @shortshortshot

最近物が消えたり、置き場所が違ったりするので、隠しカメラを仕掛けてみた。帰って映像を見てみると、髪の長い女が押入れから出てきて物色し、また押入れに戻っていった。余りの衝撃に心臓は爆発寸前。すぐに電話！と携帯を取る。「もしもし！母さん？俺結婚したい人ができたんだ」 #twnovel

(｡･ω･｡) @AWACS004

外れた硝子の間から家に入る。ひんやりした外見の家だったけれど、中はほんのり暖かかった。長い長い廊下を、大勢の人が行ったり来たり…皆同じような服を着ているから、多分兄弟だろう。僕にも兄弟は沢山いる。一番歳が近い妹のことを考えたら、少しだけ空に帰りたくなった。 #twnovel

黄金の米菓子 @OK_1111

#twnovel 「『フリーター、家を買う。』ってどうよ？」「どうって？」「内容とか題名がさ」「意外性があっていいと思う」「どうかな」「題名が簡潔だし」「そうかな」「不満でも？」「俺が見たいドラマとは違う」「どんなのが見たいんだよ」「『ブリーダー、犬を飼う。』」「誰も見ねえよ」

Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 図書館の鍵を預かった。金色に光る、きれいな鍵。私はそれを胸ポケットにしまって大切に家に持ち帰った。眠る前に、電灯の明かりでそのきらめきを眺める。彼は本の番人。今夜、私を夢の世界に導いて。枕の下にそれを置いた。

@sobatoyou

久しぶりに会った彼と家に引き篭もり今日で3日。寝ている時以外は殆どセックスに明け暮れた。食事しながら、テレビを見ながら、お風呂に入りながら。それこそトイレにいく間も無く交わり続けた。今朝、彼が何も言わずにいなくなる迄。次の逢瀬はまた来年。これが私達の愛の形。 #twnovel

和田東雲 @wadatouun

羊は月に恋をした。月に会いに行くために、羊は雲を身に纏い、ふわふわ空を飛んでった。だけども月はとっても遠い。多くの者は引き返し、そのまま地上に住み着いた。諦めきれない羊の群れは、地球の柵を飛び越えた。みんなそれを覚えていて、眠れぬ夜を羊に捧げる。1匹2匹3匹と。 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 平凡な肩紐かけのエプロンなのに、片方の紐がずれ落ちているだけでキャミソールに見えてくる。服の上から着ているのに、服の下の裸も知っているのに、紐がずれただけでどうしてこんなに興奮出来るのか。「裸エプロンでもしてほしいの？」と彼女が聞く。違う、そのままでいいんだ。

minamicloud @minamicloud

ハニワは生きていた、という説がある。ひも状にした粘土を積み重ね、形を整え、火で素焼する事によってハニワが作成されてきた、と一般的には認識されている。だが奈良県の加太利河古墳の発掘調査において、生命活動の痕跡を僅かに確認できる埴輪が発見されたらしいのだ。ハニホー。 #twnovel

穏やかに健やかに(๑´◡`)_旦 @chotto1koto

#twnovel 「犯人はお前だ！」プチトマト刑事がマジシャンを指差す。「その前に一つ手品を」刑事からプチトマトを貰ったマジシャンは手を握る。次に手を開くとトマトが無い。「そこを開けて下さい」チノパンの股間を指差す。チャックを開けるとトマトが出てくることを、まだ彼らは知らない。

高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕（宝島社文庫）」より発売中 @Takuya11

#twnovel やたら風が強い日だった。街では色々な物が飛ばされた。帰りがけに真面目で通っている男に声をかけられた。街角で彼は私に不器用な告白をした。軽くいなして帰宅し湯船に浸かる。心までほぐれると彼の事をふと思い出す。悪い感じはしない。風は私の中の不要な物も吹き飛ばしたようだ