福島原発事故による健康被害はどれだけ発生すると考えられるのか?―Cyborg0012さんによる『UNSCEAR2013年報告書』検証(2)

2011年3月11日の東日本大震災にともなう福島原発事故によって、放射能汚染が広範囲に広がり被曝による健康被害が懸念されています。健康被害をどう考えればいいのでしょうか。  以下では、前回(末尾リンク参照)にひきつづき、国連科学委員会(UNSCEAR)によって公刊された2013年報告書の内容を検討してみましょう。とくに甲状腺の健康被害に焦点があてられます。  甲状腺癌患者はどれだけ増えると考えられるのか、チェルノブイリと比べて少ないのか、他の健康被害はどうなるのか。Cyborg0012さんによる考察のまとめです。(全69ツイート)(2014年6月2日作成)    補足。このまとめは『UNSCEAR2013年報告書』に関するcyborg0012氏の考察のつづきです。前回のまとめに関しては、以下を参照してください。 続きを読む
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cyborg001 @cyborg0012

ウクライナでは、地域の平均甲状腺被曝量(1-18才)が35ミリGyを超える場合、「高線量地域」、それを下回る場合「(中)低線量地域」として区分されている。35ミリは現行のヨウ素剤配布基準50ミリをかなり下回る基準である。なぜ35ミリが高線量地域を区別する基準なのか?

2014-06-01 19:29:56
cyborg001 @cyborg0012

甲状腺被ばくが平均35ミリGyを超える地域では、それ以下の地域よりも甲状腺癌がはっきりと多発しているからである。山下俊一氏や柴田義貞氏ら長崎大学系医学者のウクライナに関する論文(Fuzik M. et al. 2011)を見てみよう。

2014-06-01 19:31:08
cyborg001 @cyborg0012

山下氏らの論文では、高線量地域(彼らは平均35ミリ以上を高線量地域、それ以下を低線量地域と区分している)を境に、甲状腺癌の男女発症率に統計的有意差が示されている。 pic.twitter.com/15AQ4xq6KA

2014-06-01 19:32:39
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山下俊一氏らの論文に掲載されている以下図が示すように、10万人対罹患率で言えば、すべての年齢で「35ミリ地域基準」を境界に統計的な有意差が発見されている。 pic.twitter.com/OLkwHjil6K

2014-06-01 19:34:14
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山下氏らの論文にある時系列の罹患率推移図でも同様である。 pic.twitter.com/hCnpzA9MuA

2014-06-01 19:37:29
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cyborg001 @cyborg0012

さらに深刻なデータが、ウクライナ内分泌代謝研究所の小児甲状腺癌に関する研究論文(Tronko M. D. et al. 1999)では報告されている。

2014-06-01 19:38:38
cyborg001 @cyborg0012

内分泌代謝研究所の1986年から1997年の小児甲状腺癌症例では、345人の患者のうち甲状腺被ばく量が50ミリGy (0.05Gy)以下と評価された子どもが、36.2%も占めている。 pic.twitter.com/VsV2gel5Ru

2014-06-01 19:41:21
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cyborg001 @cyborg0012

さらに、ウクライナでは、全患者のうち15.6%は10ミリ(0.01Gy)以下というとても低い被曝量の子どもなのである。 pic.twitter.com/KzELYFqbZA

2014-06-01 19:42:50
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cyborg001 @cyborg0012

1.0Gy以上の大量の被曝を受けた子どもの甲状腺がん患者が全患者の11.3%である。よって、それよりも多い人数の患者が、たった10ミリGy(0.01Gy)未満の甲状腺被ばくで生まれていることになる。

2014-06-01 19:45:46
cyborg001 @cyborg0012

実際に、ウクライナでは中線量地域(14-35ミリ)や低線量地域(14ミリ未満)においても量・反応関係が示されている。 pic.twitter.com/7TiBYQYJyi

2014-06-01 19:47:53
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cyborg001 @cyborg0012

1999年にWHOは安定ヨウ素剤配布基準として10ミリGyの採用を各国政府に通告した。チェルノブイリ地域のこのような疫学知見を採用した結果である(以下図)。 pic.twitter.com/U852X5Y7qA

2014-06-01 19:50:27
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cyborg001 @cyborg0012

こうして見れば、日本政府よりも遥かにシビアに甲状腺被曝リスク評価を行っているUNSCAREであるが、小児甲状腺癌に関する彼らの被曝影響評価はチェルノブイリの疫学的知見を反映しておらず、残念ながら、十分なリスク評価とまでは言えないであろう。

2014-06-01 19:52:53
cyborg001 @cyborg0012

コスト・ベネフィット論者は、被曝による健康影響を過小評価する傾向にあり、予防原則論者が危ういと考えるのは、まさにこの過小評価がもたらす人の生命や健康、権利に対する重大な侵害である。これは様々な公害の歴史が示している重要な教訓でもあろう。

2014-06-01 19:53:43
cyborg001 @cyborg0012

ちなみに、UNSCAREは「将来的な小児甲状腺癌の増加」には言及しているが、現在福島で発見されている甲状腺癌に関してはスクリーニング効果説を採用している。 pic.twitter.com/CiJze60XT2

2014-06-01 19:54:56
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cyborg001 @cyborg0012

上記引用で示されているように、UNSCAREは福島で現在発見されている甲状腺癌を「オカルト微小癌」と混同するような示唆を行っているが、これがミスリードであることは論を待たない。

2014-06-01 19:56:19
cyborg001 @cyborg0012

甲状腺オカルト癌に関する古典研究であるFrancila et al. 1986によれば、18才未満の子どもではオカルト癌は発見されていない。論文では「思春期終了前の子どもではオカルト癌は存在しない可能性がある」との示唆がされている。 pic.twitter.com/Ycm1ZgvUtb

2014-06-01 19:59:11
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cyborg001 @cyborg0012

また、20代、30代では2割から3割で3オカルト癌が発見されているが、そのほとんどが1.0ミリ以下のとても小さな癌で占められている。およそ半数(53.8%)の癌は0.05ミリから0.2ミリであり、肉眼での確認が不可能な極小癌である。 pic.twitter.com/j7A1MARHm2

2014-06-01 20:02:00
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cyborg001 @cyborg0012

これに対して、福島の平均径は14.0-15.0ミリの臨床癌(触診可能な癌)、最大径は40.5ミリである。これを「オカルト性微小癌」と混同するUNSCAREの示唆はかなり悪質であろう。

2014-06-01 20:02:56
cyborg001 @cyborg0012

ちなみに、福島の平均径は山下俊一氏らのベラルーシ検査で発見された癌に匹敵する。さらに、最大径については、福島は複数のケースでベラルーシよりも大きい。 pic.twitter.com/8kMltgMdqB

2014-06-01 20:04:48
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cyborg001 @cyborg0012

かりに、福島で見つかっている癌がオカルト癌であるならば、ベラルーシのケースも同様であろう。オカルト微小癌を持ち出し、スクリーニング効果説を援用するのは(かなり悪質な)ミスリードと言わざるを得ない。

2014-06-01 20:05:20
cyborg001 @cyborg0012

このように、UNSCARE2013報告書は、WHO2013報告書とともに、小児甲状腺癌に関して日本政府に予防原則に従った政策を実施するよう求めるとても重要な権威的根拠であるが、その限界も(当然であるが)見極める必要があるだろう。

2014-06-01 20:06:59
cyborg001 @cyborg0012

また、周知のように、UNSCAREは甲状腺癌以外の病気(小児白血病、固形がん、先天性異常等)については「被曝による識別可能な健康被害の増加」を否定している。

2014-06-01 20:08:03
cyborg001 @cyborg0012

むろん、UNSCARE2013のこうした予測は「健康被害は生まれない」との趣旨ではなく、「健康被害は僅かながら生まれると予想されるが、確認や因果関係特定化が可能なレベルには至らないであろう」といった保守的な予測を意味している。この点を最後に考えてみたい。

2014-06-01 20:09:58
cyborg001 @cyborg0012

UNSCARE2013によれば、原発20キロ圏内や計画的避難区域の大人については、事故時の被ばく実効線量は平均で10ミリSv以下とされている。その後福島県に居住し続けた場合でも、生涯にわたる実効線量は10ミリSvを少し超える程度と評価されている。

2014-06-01 20:11:19
cyborg001 @cyborg0012

日本人の自然放射線被ばくは年間2.1ミリSv、生涯でも170ミリSvである。福島第一原発事故による一般公衆の受けた被曝量はとても低く、たとえば福島市の住民の事故後1年間の実効線量は、およそ4ミリSvと評価される(子どもはその2倍)。

2014-06-01 20:11:52