2.「見てはならぬ本、見てはならぬ文字」

付き従う黒犬は人を人以外に見る眼球はない。 呪われた書物を弄ぶ青い猫。今日も街は歪に時を刻んで行く。
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「いない本、いけない本」

店主に頼まれ図書館に足を運ぶ世話係の男。彼が司書に見せたメモには、「世に出回る事はできぬ本」即ち“禁書”であった。

知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@old_library 「図書館はここだよな? 俺ぁ、裏通りの青猫堂っつー情報屋の使いなんだが。挨拶周りも含めて来た。ここにゃあ色んな本があると聞いてたんだが、このメモにあるような本はあるか?」店主から預かったメモを見せれば、そこには黒魔術関係の書籍のタイトルが並んでいる

2014-05-11 13:09:30
図書館 @old_library

@Maksim_xxxxx 「情報屋さんでございますか、ご来館誠にありがとうございます。(本のリストを見る目が一瞬厳しくなるが、すぐににこやかな表情に戻り)黒魔術に関する書物でしたら、研究書の類でしたらございますよ。」

2014-05-11 13:32:37
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@old_library 「・・・あぁ、本に色々面倒事がある訳か。誤摩化されたらこっちのもんも渡せって言われてんだが、その本貸し出し禁止って奴か?」エプロンからくしゃくしゃになった紙を更に相手に渡せば、それは図書館でそれらの類いの本を利用した者からの紹介状で

2014-05-11 13:44:47
図書館 @old_library

@Maksim_xxxxx 「当館には、研究書や解説書はございますが、魔道書などの現物は所蔵しておりませんが……(困ったように微笑みつつ) 失礼ながら、別の図書館と間違えていらっしゃるのではありませんか?」

2014-05-11 14:18:05
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@old_library 「まぁ、いいか。それじゃあその研究書の類いでいい。次からは店主がくるかも知れないが・・・・ここ、女の働き手は何人いるんだ?」相手の返答に仕方なくメモと紙をポケットに突っ込み、辺りを少し見てからたずね

2014-05-11 14:21:02
図書館 @old_library

@Maksim_xxxxx 「畏まりました、担当の者が持って参りますので少々お待ちくださいまし。わざわざご足労いただいても、所蔵していない本はお貸しできませんが(申し訳なさそうに返し)……女性職員は十数名おりますが、もしや女性は苦手でございますか?」

2014-05-11 14:31:22
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@old_library 「十数名か・・・。俺はそうでもないが店主がどうにも悪癖レベルでな。どうしようもないくらいに用ができれば、来るかも知れんが」

2014-05-11 14:38:21
図書館 @old_library

@Maksim_xxxxx 「そうでございましたか。そもそも男性職員の方が多いくらいですから、ご来館の際にはそちらが対応するということも可能でございますよ。少年から老人までおりますからご希望がありましたら遠慮なく仰ってくださいまし(くすくすと笑いつつ)」

2014-05-11 16:02:03
図書館 @old_library

「……あの部屋の書物を“利用した”方なんて存在しないはずなのだけれど……あれは偽物だったのかしら?念のために館長に確認しておきましょう。」

2014-05-11 19:13:30
図書館 @old_library

「あのレベルの魔道書は貸出どころか閲覧も禁止のはずなのだけれど……もう随分と外に漏れてしまっているのね。困ったわ……。」

2014-05-11 19:15:30
図書館 @old_library

『先輩!ただ今戻りました!』「あらおかりなさい。随分とお楽しみだったようね?」『……えっと、ちゃんとバックナンバーをいただいてきたのでお許しいただけないでしょうか……?』「……まぁいいわ。それよりも、禁書リストにきちんと目を通して用心しておきなさい。」

2014-05-11 19:28:11
図書館 @old_library

『ということは……もしかして来てしまったんですか?貸出希望者……。』「ええ、きっちりリスト化されていたわ。」『私のいない間にそんなことが……うう、私うまくお断りできる自信がないです……。』「まぁ、女性がお嫌いなようだったから、貴女が担当することはないと思うわ。」

2014-05-11 19:31:34
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「失った息子一人蘇らせる為に、13人の命を生け贄にした女の日記、か」書斎で一人、呟く声とページをめくる音がする。手元にある本は鳶色の表紙に真っ黒なページの異様な本だ。「続きの日記が読みたかったんだが、まぁ仕方ないか」

2014-05-11 19:20:02
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

日記を閉じてから、店主はそれを真っ赤に染まった麻紐で十字に結ぶ。この本は、こうしないと書き手の狂気が今も尚残り香としてある為、漏れでてしまうのだ。勿論、読めば“当てられる”事もある。店主はそれを本棚に戻すと、仕事の種類整理を始めた。

2014-05-11 19:23:57
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「それにしても、趣味とはいえここにある本も図書館の方々にお咎めをくらいそうだねぇ。今日の様子を聞く限り」くすくすと笑いつつ、店主がいるのは書庫。長い長い時間の中で譲ってもらったり対価として集めた本が並ぶそこは異様な程空気が冷たく、血の気もないのに血なまぐさい香りが立ちこめている。

2014-05-11 19:51:42

「本物は見えない」

13人の子供を殺した女の呪われた手記、それを手にする青い猫は笑いながら悪巧みをする。
目当ての物が届いた店主は世話係と出かける事を告げるが、男にはお菓子屋の先約があった。ならば、と店主は付き沿う事にした。

知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「なぁ、前にいってた13人のガキを殺した女の手記。あれ、読んだらどうなんだ?」「あの本の中には今も尚、婦人の魂が封じられていてね。読めば“婦人にそのものになる”よ」

2014-05-11 21:03:32
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「あぁ、じゃあ“レプリカの本”の事、宜しく頼むよ?」古い友人の一人との依頼である会話を終わらせ、店主は電話機を切る。そうしてソファの上で足を組み直し、それはそれは楽しそうな笑顔で一人呟く。「図書館の関係者は気がつくかな? 気がつけば、“本物の目”だ。あぁ、楽しみだなぁ」

2014-05-11 23:43:05
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「あぁ、待ちわびていたよ」書斎で店主が、いつになく嬉しそうな声を漏らす。その手にあるのは地下にある黒魔術の禁書の一冊・・・ではなく、それの“贋作” 先日精巧な贋作を作れる技術者に頼んだものだ。

2014-05-13 12:02:16
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

元は、子供を不幸な出来事で失った一人の女の手記。女は子供を復活させようと、罪なき13人の子供を拉致しその体をバラバラに刻み生贄とした。その詳細がまざまざと書かれた書物は“女”そのものが宿り、普通の人間が読めば“女”となって同じ事をするのだという。

2014-05-13 12:06:49
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

そして読まなくとも、勘の強い人間ならあてられて奇行を始める。最悪、悲惨な方法で自殺をし“女”に自ら身を捧げようとするらしい。・・・ここまでは“オリジナル”の効果。贋作にはそこまで強い効果はないが、力ない者が読んでただでは済まないのは確実だ。

2014-05-13 12:10:14
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

そんな危険な代物を、店主は平然と血染めの麻紐で十字に結び——封じると椅子から立ち上がって書斎に出た。そこで階段の掃除を終わらせたらしい世話係と鉢合わせになる。「犬君、今日は一緒に外出してくれないかい? 君の散歩もかねて」「犬の散歩みたいな感覚で言うな」

2014-05-13 12:12:32
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「ていうか、今日は無理だ」「おや? どうしてだい」「・・・俺が何をしようと俺の勝手だろう?」「あぁ成る程、お菓子屋に行くんだろう? 大方私がこの前食べたフルーツケーキに未練を持って主人に聞いたら昨日は無いといわれ、それで今日食べに行くんだね? 届けさせると私に食べられるからね」

2014-05-13 12:22:48
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

店主がすらすらと推理した言葉は全部正解だ。正解だが「・・・やっぱ食うつもりなんじゃねぇかよ!」「私に黙ってケーキを一人食べようなんてそうはいかないねぇ、雌の顔を見てケーキを食べるなんてのはご免だが、抜け駆けともなると解せない。良し! ならばお菓子屋に私も同行しよう!」

2014-05-13 12:26:08