3.「人を食わなかった話」(6/17更新)

この街は時に人を食い物にしなければ生きてはいけない。黒犬は人を食い物にする街を闊歩し、そうして一匹の子犬と出会う。 ※6月17日、現在ある流れを全て集約致しました。関係者の皆々様許可下さりありがとうございました。
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「神に愛されなかった者」

先日のやり取りで気落ちしていた世話係へ、店主は一日の休暇を与える。男が最初に足を運んだのは裏通りの一際汚れた区画だった。
神に愛されなかった運のない者は食い物にされ、運が与えられなかった者は人を食い物にする事で神に愛されるよう願う。

知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「・・・・・・・」店の棚掃除をしながら、ボサボサ頭の男はどこか上の空だ。昨日で随分、気疲れしてしまった。そんな背中に声がかかる。「犬君。君は少し疲れている。・・・今日は君の休暇にしよう、1日休みなさい」「・・・は?」

2014-05-14 10:46:47
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「この近辺の挨拶周りも、君は同性の方には全く足を運んでいない。君は異性が苦手なのも知っているがね。兎角、今日は顔を見せるのもかねて街を散策したまえ」「んな、突然言われても・・・」

2014-05-14 10:50:16
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

しかし確かに店主の言う通り。自分が知るこの街の人間に、まだ同性は少ない。しかも先日ねちっこく店主に友達がいない奴・・なんて一方的に哀れまれた。苛立ちを思い出しつつ、エプロンを外すとそれを畳んで「・・・・わぁったよ。反論しても、意味ないだろうしな」

2014-05-14 10:53:04
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

ボサボサ頭の男が市場を歩いている。果物屋やパン屋が、わざとらしく孤児を追い払い怒鳴っていた。視線を別の方向に向けると、日傘を刺した貴婦人とその息子がそれを指差して笑っている。「・・・・」男は胸糞悪くなり、顔をしかめた

2014-05-14 11:52:38
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「・・・・・」不思議と男の足は、裏通りの方へ進む。店に帰るのではない。路地を曲がり、迷路のように複雑な道を進んで進んで、どんどん奥に向かう。奥へ向かうほど建物は痛み、路上で寝ている浮浪者は死体と変化していく。「・・・・臭ぇ」腐臭と、人の精神から匂うそれに呟いた。

2014-05-14 12:09:05
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

気落ちしているからこその休暇日だったが、“だからこそ”今日は裏通りを行くに相応しいと感じた。そうして足を進めると、人攫いや奴隷売りなどが商いする区画に入って行き。

2014-05-14 12:15:19
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

ここは一際治安が悪い。男は一切汚れていない衣服なので、かなり目立つ。不躾にじろじろと見る浮浪者や、財布を狙うスリの視線を感じたが無視する。今日の財布は、店主に貰った他人の手に渡らない呪いのある袋だ。当たり屋が肩をぶつけようともしたが、注意して良ければいい。

2014-05-14 12:18:57
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

ここが、自分の本来いる場所なのだと男は目に刻み付ける。吐瀉物を吐く檻の中の子供、それに憤慨して棍棒で叩く奴隷売り。蠅が集る死体、へらへらと笑い涎を垂らす娼婦。こういう者達の上に、自分達がいる。

2014-05-14 12:21:38
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

そこでふと、奇妙な者を見つけた。人の死体の上に、何匹かの大小様々な犬が集っている。恐らく、死体を食っているのだろう、この街では不思議な事ではない。だが一匹だけ、様子がおかしかった。

2014-05-14 12:29:18
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

その黒い耳の立った子犬だけは、死体を食おうとしない。他の犬はまるまると太っているのに、その犬だけは痩せていた。黒い犬は鼻先を死体に近づけ何度も噛み付いてはいるが肉を引きちぎるほどの力はなく口を離してしまう。

2014-05-14 12:30:57
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「・・・なんだお前、人は食いたくねぇって?」男はむんず、とその黒い犬の後ろ首を掴んで目の前に掲げると返事はないと知りつつも尋ねる。犬は抵抗する体力もないのかだらりと四肢を投げ出したまま灰色の目でこちらを見るだけだ。

2014-05-14 12:32:49
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「・・・・・」何故だかその犬に似た出来事を知っているような気がした。自分は、人を食う趣味なんてない。だけど既視感のようなものがあった。「・・・・」男は無言のまま黒い子犬を片腕で抱くとどこかへと足を運ばせた

2014-05-14 12:36:17

「死体に群がれなかった子犬」

人を食えなかった子犬を見つけた男は、その犬の里親探しをしようと店主に電話する。そうしてふと犬は空腹ではないのかと思い、日用品雑貨店に犬の餌がないかと足を運んだ。

知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「ほう? それで珍しく電話してきたという事か」「・・・・用件伝えてんだからさっさと教えろ」「急かさなくても良いだろう? そうだな・・・犬を飼育してくれる者か。とりあえずなんでも屋にでも行くのが良いんじゃないかね?」

2014-05-14 13:09:27
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「なんでも屋・・・」「あとは林檎屋かな? ただ、あそこはそういう犬でもいいのか私は把握していないが」「ああいうとこは良い。・・・で、何でも屋の場所は」表通りにある親切な煙草の店主に電話を借り、店主のいう住所をメモしながら答えて

2014-05-14 13:16:40
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

「ばーさん、電話ありがとな」ガチャン、と受話器を置いてから店主である老婆にいいながらその手に硬貨を渡す。子犬を抱え直してから、ふいに犬を見つめては先に何か食べるものを与えるべきかと考え「・・・と、なると日用雑貨店か?」

2014-05-14 13:19:05
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@SolarFlowerShop 「・・・邪魔するぞ。店主はいるか? 欲しい物があるんだが」先ほどから鳴きもしなければ無抵抗のままの痩せた子犬を抱えたまま店に入ってその場で声を上げ

2014-05-14 13:50:01
日用雑貨店 @SolarFlowerShop

@Maksim_xxxxx すぅ・・・。(寝ている店主の隣に、ご用の方は起こして下さいと書かれたベルが置かれている。)

2014-05-14 14:19:51
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@SolarFlowerShop 「・・・・・・・」この街で、しかも店の経営者で、居眠りができるというのはどれだけ呑気なのか。呆れて物がいえない状態ではあったが、ここでなんだか起こしてしまうのも躊躇ってしまう。しかしそうも言ってられないのでゆさゆさと店主の肩を揺らし「おい・・・」

2014-05-14 14:27:20
日用雑貨店 @SolarFlowerShop

@Maksim_xxxxx んっ…あ、いらっしゃいませぇ♪(飛び起きて寝起きの営業スマイル)

2014-05-14 14:33:05
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@SolarFlowerShop 「・・・アンタ不用心過ぎるだろ」まだ起き切れていないようなその顔に頭を抱えたくなりながら呟いたが、腕に抱えた犬の存在を思い出して。「これ、拾ったんだがよ。コイツが食えそうなもんなんか置いてないか」

2014-05-14 14:53:11
日用雑貨店 @SolarFlowerShop

@Maksim_xxxxx そんな事はないですよぉ?おねーさんはぁ、こう見えてもガードがかなり高いのよぉ?(少し不機嫌そうな顔をしてみせる) あらぁ、大丈夫ですかぁ?わんちゃんに、今すりりんごを作ってあげますねぇ?(カウンターの後ろの扉に入った)

2014-05-14 15:00:02
知識商店【青猫堂】 @Maksim_xxxxx

@SolarFlowerShop 「いや悪いが全く見えん」不機嫌そうな顔を見返し、そのまったりした話し方に思った事をすっぱりと言うものの犬の様子を見るなり奥へ引っ込んでしまえば呼び止めるのも間に合わず「え、品物でいいっ・・・人の話聞けよ・・・」

2014-05-14 15:05:15
日用雑貨店 @SolarFlowerShop

@Maksim_xxxxx お待たせしましたぁ♪疑うんですかぁ?じゃあどろぼうさんしてみますかぁ?どーなってもぉ、知りませんよぉ?(にっこりと微笑み、すりりんごが入った器を手渡す)

2014-05-14 15:12:26
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