- hachisu716
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早苗「はずかしながら、はじめてです……」 文「あらあら。若いのに恋のいろはをよく識っていらっしゃるようでしたし、てっきりこちらの方も百戦錬磨の手練れかと」 早苗「女子高生の恋は、広く浅く。耳だけ年をとるだけで、意外とソフトで純情なんですよ……」
2013-06-23 09:58:31消え入りそうな声で呟きながら、耳どころか首まで真っ赤にして、細い腕で潤んだ目許を隠す早苗 クスクス笑いながら、真っ赤な耳朶に、掬うようにそっと指で触れて囁きかける文 文「初い感じも可愛いですよ。怖かったら云って下さい。痛いときもね」 早苗「痛くない方が、いいですね……」
2013-06-23 10:05:02文「勿論、そのつもりです。優しくしますよ」 早苗「よろしく、お願いします……」 そして、そっと脱がしにかかる文さんと、その過程で少しずつ素肌に触れる文の丹念な指に感じてしまう早苗さんください
2013-06-23 10:07:42早苗「(文の肩に顎のせながら背中からくっつく)文さぁん、構って下さいよ。さびしいです」 文「(書き物しながら)早苗さん、ちょっとあつっくるしいです。文さん今、繁殖期でちょっとアグレッシブになってるんですよ」
2013-06-23 10:28:34早苗「あら、カラス天狗でもそういうのあるんですか。いいですよ、もてあました性欲を私にぶつけてくださっても」 文「識ってます? カラスの交尾って肛門をこすりあわせるんですよ」 早苗「!?」
2013-06-23 10:29:34早苗「あれっ? 文さんって目はいい筈ですよね? 老眼ですか?」 文「失敬な。衰退期にはまだまだ入っていませんよ。これは映ったものを分かりにくくするもの。天狗は目が良すぎるので、近場を見るときは、敢えてこういうものを使って乱すんです」 早「つまり、老眼ってことじゃ」
2013-06-23 10:37:14文「かけてみて下さい。でも、少しの間だけですよ」 早苗「うわっ……何にも見えません……ていうか、なんかこれ、万華鏡みたい……気持ち悪いです」 ほんの少しかけていただけなのに、眉間を指でおさえて、少しふらつきながら眼鏡を外して返す早苗。その腰を支えてやる文。
2013-06-23 10:40:43文「乱す、とはこういうことです。視るものを遠くや近くにする、ということではなくて。バラバラにする。それを接(は)ぎ合わせながら視るんです。分かりますか?」 早苗「分からないですけど……とりあえず、あの万華鏡みたいなものを頭の中で組み直すんですね、パズルみたいに」
2013-06-23 10:44:14文「まあ、頭の中で、というのは人間だけの感覚ですけど、貴女にしてみればそういった感じだと思います。……パズルって何です?」 早苗「一枚の絵を、また組み直せるように愉快な形でバラバラにしたものです。ウチにあるので今度お見せしますね。……その眼鏡で見えるんですか?」
2013-06-23 10:47:10文「視えますよ。視えすぎる不要な情報は省いて、必要なものだけを繋ぎ合わせて意味を汲み取る。新聞も同じです。日常やっていることなのであまり考えませんでしたが、改めて云われてみると愉しいことですね。私は好きです」 早苗「へえ……」
2013-06-23 10:53:27つまり、眼鏡をかけている間はいつもわざわざパズルをやっている、ということか、と納得する早苗。 永く生きているだけあって、天狗のやることは酔狂だ。 書き物を続ける文を見守っていた早苗は、ふと思いついて、思ったことを訊いてみた。 早苗「私を近くで見るときは、眼鏡をかけます?」
2013-06-23 10:56:51近くで、というところに、少しだけ含みを持たせてみる。 ちょっとした誘惑をしたつもりだ。 それを汲み取ったかは分からないが、天狗はペンを置き、酔狂な眼鏡を外して、躰ごと早苗に向き直った。 文「……近くで、」 早苗の言葉を繰り返す。
2013-06-23 10:59:15薄い口唇に、ふっと笑みをのせる。子どものやんちゃを見守るような、それでいて閨(ねや)でそっと情人の素肌を囲うような、そんな笑みだ。 文「早苗さんを視るのに、不要な情報などありませんよ」 うそぶく天狗は、目の前の華奢な雛鳥の腰を抱いて、そっと腕の中に仕舞い込んだ。
2013-06-23 11:03:33文字通り、まさに烏の濡れ羽そのものの、艶のある黒髪を持つ頭を、早苗は抱き返す。 早苗「……酔狂ですね」 文「ええっ、酔狂ですか?」 早苗「酔狂です。だって、それは色眼鏡っていうものですから」 いつだって軽く口説くふりをしながらも、指先は壊れ物を扱うように優しいのだ。
2013-06-23 11:11:13本当はそれも永く生きる天狗の持つ、手管の内かもしれないが、早苗は彼女特有の情の深さだと思っている。 いつでも、自分を心から大事にしてくれているのが分かるのだ。 文「……あやや。恋の色眼鏡ですか。これは一本とられましたね。私は早苗さんを甘やかしますからねえ」 早苗「そうですよ」
2013-06-23 11:15:40文「ああ、可愛い、可愛い」 囁きながら、心地よさそうに頭を擦り寄せる文を、早苗はそっと指で撫でながら、口付けのために膝を折った。 豆乳のみたい
2013-06-23 11:18:16