- hachisu716
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夜。せっかく綺麗に月が出ていたので、縁先でお酒一緒に飲んでいたあやさな。 頭がゆらゆらと頼りなくゆれ始めている早苗の背中に手を添えて、 文「……もう、無理しないほうがいいんじゃないですか? そろそろ限界でしょう」 早苗「んんぅ……お空が、回ってます」
2013-06-23 17:08:49文「ほら。お猪口、貸して。預かりますから」 早苗「んんー……」 危うく手からこぼれ落ちそうになるお猪口を手ごとすくい上げるように受け取る文。
2013-06-23 17:13:43ゆらゆらと揺れる背を掌で撫で上げると、もはや習慣になってしまったのか、何も言わなくても、早苗はそのまま吸い込まれるように文の膝に頭を預けた。 初めて酔いつぶれたときから、こうして文の膝を枕にして眠るのだ。 子どものように背を丸くする早苗の、瑞々しい若葉のような緑の黒髪を撫でる。
2013-06-23 17:18:13むにゃむにゃと可愛らしくぐずりながらも、やがて力が抜けるようにふっと寝入ってしまう。こんな調子も、いつも通りである。 ああ、今夜もつつがなく、安らかな寝息を立て始めた、と思っていた矢先。 うっすらと開いた翠緑の眸(め)が、酔いで熱っぽく潤んだまま、見下ろす天狗の視線を捉えた。
2013-06-23 17:26:09重たげにあげた手で、髪を撫でる指を自分のそれと絡めるように、そっと握り込む。 早苗「いつも、お酒、付き合えなくて……ごめんなさい」 ふっくらとした桜色の口唇が、ひとこと、そう言葉を紡いで、若葉の双眸で天狗をじいっと見つめてくる。
2013-06-23 17:32:58あや、これはいつもと違う運び。 天狗は少しだけ目を丸くすると、ひたむきな視線をやんわりと受け止めて、少女の手ごと、ぽんぽんとあやすように頭を撫でた。 文「いいんですよ、これも愉しみのひとつなんですから」 だからきちんと私の膝で、よくお休みなさい。
2013-06-23 17:41:29そう告げてやると、少女はまた安心したように(それともただ意識が途切れただけか)、頭を擦り寄せて眠り始めた。 そもそもが、上司の鬼以外で、酒量で比ぶるもの無しの天狗である。 彼女の酒に付き合えるものなど、鬼か天狗か、月かしかないのだ。
2013-06-23 17:46:17文「月だって、夜が明ければ見えなくなってしまいますしねえ」 呟いて、膝の上で眠る少女の林檎色に染まる頬を起こさないようにそっと撫でる。 彼女にとって酒とは従来、宴席の賑やかしい人妖の中であっても、心情としてはいつもひとりで飲むものである。
2013-06-23 17:52:04どうせ最後まで付き合えないのだからと、何処かで数に入れていないのだ。 文「……あなたは、ちゃんと私の数に入っていますよ」 今夜は月が綺麗だから、一緒にお酒でもどうですか? そんなことを言いながら愉しそうに酒壜を抱えてくる彼女と、席を並べて、一緒に酒を呑む。 ふたりで。
2013-06-23 17:57:39それだけで、とても特別なことだから。 文「月だけじゃなくてね。下戸(げこ)視て一杯っていうのも、いいものですよ」 安らかに眠る寝顔を指でつつきながら、取り上げたお猪口から一杯、酒を呑み干した。 月見て一杯 下戸見て二杯 気分がいいので、今日は少女の分まで朝まで呑むつもりである。
2013-06-23 18:05:07早苗「……、文さーん」 文「はい?」 早苗「……ちょっと相談が」 文「何です、」 言い切らない内に、椅子に座る文の膝に横向きに座り、正面から首に腕を回す早苗さん。 文「か……あや」 軽くまばたきする文。 早苗「何でか分からないんですけど……今日、すごくムラムラしてるんですよ……」
2013-06-25 19:32:32言いながら、甘えるように胸板に面を擦り寄せて、ぎゅっと文に抱きつく早苗さん。 いつもより気持ち、体温が高い気がする。 ほんのりと香る、桃が熟したような甘い匂いと、肩胛骨に指をかけてくすぐるような動きで、ああこれは本気だな、と察する文。 しかもかなり切羽詰まっている。
2013-06-25 19:38:51文「あややや……ふふふっ、今日はそういう日なんですか?」 クスクスと咽喉の奥の方で笑いながら、煽るというよりは宥めるような手つきで、縋りつく早苗を抱き締め返しながら、いい匂いのするさらさらの緑の髪に鼻先をうずめる。 早苗は文の胸の内で、肯定とも相槌ともつかない曖昧な声を返す
2013-06-25 19:46:52文「記事も一段落したところです。いいですよ、しましょうか」 背中を撫でてやると、んーともあーともつかない声を漏らしたあと、早苗はどこか居心地悪そうに身じろぎをして、ぼそぼそと訊いてきた。 早苗「……すみません。こんな私って、はしたないと思います?」
2013-06-25 19:54:04文「はしたない子は、大好きですよ」 頭を撫でてやると、安心したように鼻先が擦り寄ってくる。背中に回った指に、力が籠る 早「……すごく、したいです。文さんと」 余裕のない声が、鼓膜を甘く揺らす。 何よりも心を踊らせる媚態に、文は耳許で甘く囁き返した。 文「満足するまで、いくらでも」
2013-06-25 20:06:28早苗「……ぁ、だめ、っ……すぐ、……いっ、……そうで……す……ぁ、あ」 文「あや、今日は本当に弱いんですねえ……ここも、好きでしょ(ぐりっ)」 早「ひ、ゃぁ、あっ!(ぎゅう)」 文「ん、いい子ですね。もう少し、奥にいきますよ」 早「――っ、……ぅ、や……は……っ、ぅ」
2013-06-25 20:36:04文「なんです、このハイカラな形のブツは……」 早苗「サリキッスですよー。虫さされに塗るんです。ちょっとヒリヒリしますけど、効きますよー」 文「去りキッス……?」 早「まあまあ、いいからこれを塗って下さい。首筋がもう痒くてしょうがなくて……私、自分の後ろ塗るの下手なんですよー」
2013-06-27 20:15:50