幸村長編まとめ①

幸村さまの妄想が思ったよりたらたらと続いたのでまとめてみた第一弾
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ゆこ @yuko_ps

私は目立つのが嫌いだ。どうしようもなく周りの目や評価が気になって、いつも周りが私のことを話しているのではないかとありもしない被害妄想をめぐらせてしまう。だから、「君のこと、ずっと気になってたんだよね」…こんな状況は本当に、困る。目の前でにっこり微笑むのは、かのテニス部の部長様。

2014-06-08 14:22:12
ゆこ @yuko_ps

校門前で待ち伏せされ、周りには立海の生徒がわんさか。好奇の目が集まってるのがわかる。大体、この男はなにを言っているんだ。「あれ、聞こえなかった?つまり、…俺と付き合って欲しいんだけど」ざわつく周囲。時折上がる悲鳴。にこやかな笑みから彼の心情は読み取れない。ああもう、逃げ出したい。

2014-06-08 14:27:12
ゆこ @yuko_ps

あ、あの…ごめん無理!なんとかそう言い切って逃走。背後から、ありえない、幸村が振られた、と言う声が聞こえてくる。ああ、泣きそう。さようなら私の平凡なスクールライフ。でもこれで幸村くんも私に幻滅しただろうし、関わることもないだろう。…そんな風に考えていた自分のいかに甘かったことか。

2014-06-08 14:32:41
ゆこ @yuko_ps

翌日のお昼。案の定、教室にいるのはいたたまれず屋上にでも行こうと教室を出たら。「どこ行くの?」なぜか、教室の扉にもたれかかる幸村くんの姿。昨日と変わらない笑顔が怖い。え、ええと…屋上、だけど。目をそらして答えると、じゃあ俺も行こうかな、とのお言葉。…嫌だ、なんて言えるはずもなく。

2014-06-08 14:37:13
ゆこ @yuko_ps

…どうして私は、昨日振った相手とお昼を食べているんだろう。隣でお弁当を食べる幸村くんと、ちびちびと焼きそばパンを食む私。緊張と恐怖で味なんかわからない。「…でさ、昨日のことなんだけど」はいぃッ!思わず敬語。だって怖い。幸村くんが私を見る。相変わらずの笑顔。「お前に拒否権ないから」

2014-06-08 14:41:55
ゆこ @yuko_ps

…はい?何を言われたかわからず一瞬フリーズ。え、拒否権?てか、え、お前?昨日は君だったような、え?昨日とはまるっきり違う雰囲気に戸惑っていると、ふいに幸村くんの手が頬に触れた。びくっ!大げさに肩が揺れる。「…まさか、あんな公衆の面前で俺に恥かかせといて、逃げれるとでも思ってた?」

2014-06-08 14:45:38
ゆこ @yuko_ps

たらり、冷や汗。触れられている部分がやけに冷たい。幸村くんってこんな人だったのとか拒否権ないとか意味がわからないとか色々思うことはあるけど。「ふふ、心配しなくても、お前はすぐに俺を好きになるよ」ていうか、させるから。…どうやら私は、非常に厄介な人に目をつけられてしまったらしい。

2014-06-08 14:49:00
ゆこ @yuko_ps

あの恐怖の宣告から、校内では「あの幸村が一人の女を追っかけ回してる」というなんとも恐ろしい噂が流れ始めた。…まあ間違ってはいないのだが。追っかけられている私はというと、泣きそうだ。ほんとに。今日も今日とてお昼は一緒だし。「お前友達いないの?」…遠慮ない一言がクリティカルヒット。

2014-06-08 14:55:16
ゆこ @yuko_ps

い、いないよ…。泣きそうになりながらそう答えると「まあ実際いなさそうだしね」…もぐもぐエビフライを頬張る姿がちょっと可愛いと思ったのが間違いだった。もともといないけど、さらに周りから人が遠のいたのは自分のせいだって気付いてるんだろうか。「俺と付き合えば、お前の株も急上昇するのに」

2014-06-08 15:02:13
ゆこ @yuko_ps

その言葉に、え?と返すと「顔よし、性格よし、勉強スポーツともにできる、美術的センスに長けてるし人望もある。ほら、こんな完璧な男の彼女だよ?」指折り数えて、ね?と微笑む悪魔、もとい幸村。…二つ目には大いに異議を唱えたい。無理だけど。そもそも、なんでその完璧イケメンが私を好きなんだ。

2014-06-08 15:05:54
ゆこ @yuko_ps

なんで幸村くんは私を好きなの、ていうかほんとに好きなの。そう尋ねようとした時、チャイムが鳴って。質問をぐっと飲み込む。…今は、いいか。そう思いお昼の片付けをしていると、幸村くんが口を開いた。「そうだ、今日部活ないから教室で待ってなよ」ええ…。もちろん、拒否権はないよ。…ですよね。

2014-06-08 15:19:23
ゆこ @yuko_ps

放課後、教室で待っていると幸村くんが現れて。帰るよ、という一言に、やっぱり一緒に帰るのか…と気が重くなる。最近、好奇の視線に加えて嫉妬のそれが向けられていることには気付いている。幸村くんは、気付いているんだろうか。…私は、彼女たちから私に向けられた目を見るのが、怖くて仕方ない。

2014-06-08 15:25:53
ゆこ @yuko_ps

「…」「…」帰り道。気まずい空気。いつも気まずいけど。横を歩く幸村くんはいつも通りで、気まずいと思ってるのは多分私だけなんだろう。だけど今日は全然話さないな、なんて思ってたら。「…お前さ、その挙動不審やめなよ」俺の彼女なんだから堂々としてればいいだろ。その言葉に呆気に取られる私。

2014-06-08 15:35:20
ゆこ @yuko_ps

こ、これは…慰めてくれてる、の?いやそれより!そこまで考えて、口を開く。ゆ、幸村くんと私って付き合ってたの!?思わず大きな声が出た。すると今度は幸村くんがぽかんとする番で。あ、こんな顔もするんだ、なんて呑気に思ってたら、その顔がみるみるうちに赤く染まって。え、幸村くん?と尋ねる。

2014-06-08 15:41:46
ゆこ @yuko_ps

恐る恐る顔を覗き込もうとしたら、がっと片手で額を掴まれて。 い、痛い!「うるさい見んな喋んな」じたばたと抵抗すると、ようやく離される。気付くとすたすた先を歩く幸村くんの後を慌てて追いかけて。斜め下から見えた耳が少し赤かったけど、きっと気のせい。幸村くんが赤面なんて、そんなまさか。

2014-06-08 15:59:16
ゆこ @yuko_ps

あれから、さらに口数が減った幸村くんだけど(やはり顔が赤い気がしたけど多分夕日のせいだそうだ)ちゃんと家まで送ってくれた。彼女発言については、恐ろしくて聞けなかった。多分言ったらころされる。だけど、『堂々としてればいいだろ』…ちょっとだけ嬉しかった、なんてことは、もっと言えない。

2014-06-08 16:03:50
ゆこ @yuko_ps

まあ人間はそう簡単に変われるはずもなく、今日も周りの視線を盛大に気にしながら登校。びくびくと廊下を歩いていると、前方から見慣れた顔。お、おはよう…!持てる限りの勇気を出して挨拶。そういえばいつも幸村くんから話しかけてくるから、私からは初めてかもしれない。「!…おはよう」…あれ?

2014-06-08 19:53:04
ゆこ @yuko_ps

廊下に人がいるというのに、いつもの営業スマイルはどこへやら。そらされた目線に戸惑っていると「…俺、一時間目移動だから行くね」にこり、違和感をかき消すように、すぐに作り笑顔。そのまま隣を通り抜ける彼を引きとめられるはずもなく。…珍しく、ざわつく周囲のことが気にならなかった。

2014-06-08 20:04:14
ゆこ @yuko_ps

それでもやっぱりお昼は一緒に食べるんだなあ…。いつもより数倍気まずい空気の中でもそもそとウインナーをかじっていると「…お前さ」は、ハイッ!?動揺してウインナーを落とした。だって怖い。「お前は、俺のことをどう思ってるの」そこに笑顔はない。幸村くんの瞳の中に怯えた私が映っている。

2014-06-08 20:16:45
ゆこ @yuko_ps

ど、どうって…。幸村くんはただじっと私の言葉を待っている。思わず、怖い、と言いそうになったけど、それは駄目だ。私の命が危ない。か、かっこいいし、テニス部の部長だし、勉強もできるしすごいと思うよ。なんとか当たり障りのない感じにそう答えた。のに、目の前の幸村くんはなぜか不機嫌そうで。

2014-06-08 20:24:30
ゆこ @yuko_ps

あれ?私なんかやらかした…?目の前の暴君を怒らせたかとひやひやしていると、はあーーーっ…と盛大なため息。「…俺は、そういう周りの評価を言ってるんじゃないんだけど」お、怒ってる…気が…する……。びくつく私に、すっと伸ばされる腕。頬に触れる手のひら。いつかの、告白された次の日と同じ。

2014-06-08 20:38:37
ゆこ @yuko_ps

「お前は俺のことを男としてどう思ってるのか、って聞いてるんだけど」どくり、心臓が疼く。頬に触れる手は同じ。…ただ、あの日と違うのは、手が触れた部分がやけに熱い、ということ。心臓がうるさい。それもこれも、こんな整った顔が目の前にあるからだ。幸村くんが急にらしくもないこと、言うから。

2014-06-08 21:28:41
ゆこ @yuko_ps

だ、大体、幸村くんほんとに、私のことが好きなの…、どうにか絞り出した精一杯の言葉を「は?何言ってんのお前」と切り捨てる幸村くん。つらい。すると頬に触れていた手が離れて、私の方を見ずにぼそりと一言。「…好きじゃなかったら告白するわけないだろ」…だから、顔赤くするのやめてください。

2014-06-08 21:44:45
ゆこ @yuko_ps

どうやら、幸村くんは本当に私のことが好き、らしい。改めて本人に言われると照れる。恥ずかしすぎて顔から火を噴きそうだ。だって、告白された時はまさか本気だなんて思わなかったから。そのあとは扱いひどかったし。「…で、結局お前はどうなの」まだ少し赤い顔で幸村くんがこちらをちらりと見た。

2014-06-08 22:02:21
ゆこ @yuko_ps

うっ、と言葉に詰まる私。ごまかす、なんて高等技術を私は持ち合わせていないし、大体、させてはくれないだろう。え、ええと……その、嫌いじゃないよ、幸村くんのことは…。ただ、お付き合いする、っていうのは、さすがに…。しどろもどろになりつつそう答えると、幸村くんは「ふーん…」と呟いて。

2014-06-08 22:22:26