表通り爆破物事件

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シャオイー(小伊) @applex002

これは薬、かしら。誰かに飲まされて?…だとしたらこのまま放っては置けはい。「目覚めが悪いのは嫌いなのよ」だかと言って何ができるという訳でもない。大人一人を運べる力ももちろんない。できるのは、薬が抜けるまで側にいることくらい。面倒だわ、と言葉では言いながらも男の側に腰をおろした。

2014-06-10 13:40:31
【黒火薬】 @powder_kw

@applex002 『ひぐっうぐっ』 (浮浪者から反応が無い) (嗚咽に混じり口から泡が溢れ出す) (強い薬の影響か、致死量を与えられた浮浪者は程無く息絶えた) (周到な口封じだ)

2014-06-10 13:40:31
シャオイー(小伊) @applex002

@powder_NR_KRMGT 「…っ、もし!…しっかりなさい!」容体が急変した男の頬を叩き呼びかけるも男は程なくしてこときれた。「……っ、」少女はゆっくりと立ち上がると再び騒ぎの中を歩き出す。まだあちこちで爆破音が響いていた

2014-06-10 13:47:26
【黒火薬】 @powder_kw

(表通りに、自爆した孤児の肉片が飛び散っている) (あまりにも無惨な光景に通行人が嘔吐した) (その横を走り去る男が一度路地裏に入り、裏通りで待つ"仲間"の中年に声を掛けた) 『不味いなぁ、時限式は正午で全部爆発したけど、まだ自爆式が残ってるよぉ』 『目星は?』 『この辺かなぁ』

2014-06-10 13:23:40
シャオイー(小伊) @applex002

被害は甚大だった。爆破で崩れた建物、吹き飛んで血の染みとして地面に張り付いた人だったもの。そんな爆発に巻き込まれて火傷を負ったもの、負傷したもの。「アルフやコーネリアスの残業がまた増えるわね」皮肉のように呟くも、いつものような覇気はなかった。

2014-06-10 13:53:35
シャオイー(小伊) @applex002

『お母さん!お母さん!』崩れた建物の柱に足を挟まれた女性に、泣きながら呼びかける子供。女性はその呼びかけに答えないどころかピクリとも動く様子はない。四方に見られるそんな惨状。耳を塞ぎたくなる悲鳴、断末魔。…まるで地獄絵図だ。立ち込める硝煙のにおいで気が触れてしまいそうだった。

2014-06-10 14:24:37
【黒火薬】 @powder_kw

『…降るな』 (病院周辺の"始末"を終えた男が鼻を鳴らす) (夕立が近い) (街にも爆発音が聞こえなくなった) (木箱の回収を終え、最後の煙草に火をつけた男は仲間に後処理を任せその場を立ち去る)

2014-06-10 15:13:20
シャオイー(小伊) @applex002

崩れかけた階段の下で膝を抱えて座る少女。腕に頭を埋めて少しも動かない所為で表情はわからない。風がない所為で立ち込めた粉塵が視界を悪くしていた。色々なものを取り込んだ濃密な空気が少女の汚れない白さえも覆い隠してしまいそうだった。

2014-06-10 14:37:29
【黒火薬】 @powder_kw

(じゅっ…と男の煙草の火が消える) (最後の一本が鎮火し、悲しげにそれを見詰めた) (乾きかけたジャケットにぽつりと大粒の滴が落ちる) 『…帰るか』 (踵を返して裏通りに入る男は、足下に横たわる子供の死体を平然と跨ぐ) (黒煙の燻る街に、夕立が降り始めた)

2014-06-10 15:57:59
【黒火薬】 @powder_kw

『おっせーよ…朝から降って欲しかったし』 (屋上でぐったりと座り込む青年が、顔を濡らす空の恵みに悪態つく) (焦げ臭い匂いが薄れ、薄暗くなる街に生温い雨が降り始めた) 『あはは…あー…疲れた…』 (仰向けに転がり、煤臭い体を洗い流した)

2014-06-10 16:07:00
シャオイー(小伊) @applex002

サァアアーーーと雨の音が耳に届いた。街に蔓延る硝煙も、地面を染める血液もを洗い流す空からの雫。…泣いてる。 街が、泣いている。 ぼんやりとそんなことを思った。それでも動く気にはなれず、急激に冷える空気にただ膝を抱きしめた。

2014-06-10 16:11:41
【黒火薬】 @powder_kw

(街は静かに雨に流され、冷たくなる) (動かなくなった肉の塊) (泣き付かれて呆ける子供) (瓦礫に埋もれた家族を探す男) (脚を失い這いつくばる老人) (黒く煤けた石畳を洗い流し、滲んだ血の汚れが薄らいだ)

2014-06-10 16:48:50
シャオイー(小伊) @applex002

「…子供の頃に誘拐されたことがあるのよ。犯人はとても大きな声でわたしを怒鳴りつけて脅したわ。そして椅子に縛り付けたわたしにナイフを突きつけて笑ってた」人知れず小声で話しはじめた少女。ゆっくりと顔をあげる彼女の頬には幾つもの雨の跡が筋になっていた。 「…来るのが遅いわ、クリス!」

2014-06-10 16:46:47
シャオイー(小伊) @applex002

『…申し訳ありません』 強がりな主人は良く泣く。すぐに泣く。笑っていたかと思うともう泣いている。その癖に絶対にそれを認めようとはしない。

2014-06-10 16:53:31
シャオイー(小伊) @applex002

『申し訳ありません、傘をお持ちするのを忘れてしまいました。濡れてしまいますがこのままでも構いませんか?』「…仕方ないわね」だからそれに気づかないふりをするのが主人のいうところの"執事の仕事"なのだろう。 『帰ろう、シャオ』 差し出した手に重ねた彼女の手はとても冷たかった。

2014-06-10 16:56:04
シャオイー(小伊) @applex002

(雨に濡れて、主人の涙も洗い流されてしまえばいい)

2014-06-10 16:58:02
【黒火薬】 @powder_kw

(夕立が止む) (あっという間に過ぎ去った騒動はまるで夢だったように、それでもその爪痕はくっきりと) (裏通りは不思議なほど何も壊れていない) (水溜まりを避けるように若者が歩き、店主と、ずぶ濡れの犬と馬が後に続いた) (裏通りの角で、火薬の"飼い主"が待っていた)

2014-06-10 17:22:54