加賀さん観察日記 Part15

キタユキ @k_t_y_k

「私はママの付き人だったので、襲撃のことも、何故お二人が来られたかも知っていました」 お前偉かったのか… 「そんなことはありませんよ。皆役割分担して、ママを助けていただけです」 パンツ一丁ではにかむ大鯨。哲学を志す場の出だけあって、歪みねえ精神が垣間見えます。 #加賀さん観察日記

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『お帰りなさいませ……今は、素直に御帰還をお祝いすることもできませんが』 畳敷きの部屋で、青い龍鳳は二人に三つ指を突きます。 『なに、心苦しいのはお互い様です。出迎えて頂いて早々、育ての母と心の故郷へ放棄を言い渡すなど、この明石のケツ穴も嘆いておりますわい』 #加賀さん観察日記

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『放棄……』 『襲撃予想は、１週間後。速やかに退避を』 『……回避路は』 『ごめんなさい、大隅さん。今回は、どうすることもできません』 明石の横に控えていた大淀が頭を下げるのをみて、龍鳳の顔に一瞬絶望の色が宿りましたが、すぐに元の穏やかな顔に戻りました。 #加賀さん観察日記

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『いつも通り、ママでいいんですよ、大淀ちゃん』 『……ごめんなさい、私達、ママのゲイパレス、守れなかった……』 『貴女が謝る必要なんて、どこにあるのですか。まだ起こっていない結末を嘆くのはやめましょう。今は、被害を出さないように策を練りましょう』 #加賀さん観察日記

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頭を下げたまま泣き崩れる大淀の背を、龍鳳は寄り添いながらそっと撫でていました。隣にいる明石も貰い泣きで涙を拭っています。彼女達にとってこのゲイパレスという施設が、どれほど大切なものかを伺い知ることができますが、何がどうなってこの映像なのかさっぱりわかりません。 #加賀さん観察日記

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大鯨に解説を求めようにも本人もさめざめと泣いているので自力で補完しろ、ということのようです。 とりあえず、ゲイパレスという男性素体研究施設が新日暮里にあり、大鯨と龍鳳が研究対象だった。だが何者かの襲撃が浜風によって予測され、大鯨達はやむなく聖地を手放した。 #加賀さん観察日記

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大淀はともかく、映像に映っている明石はどう見ても工廠でケツまくってるあの明石です。そういえばケツだけで漂流してきたのを保護した記憶があるので、大鯨達と共に新日暮里から逃げてきたのでしょう。ここにきた大鯨の保護情報とも考えると、かなり離散してるようですが。 #加賀さん観察日記

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「……すみません、つい思い出に浸ってしまいました。この後ママと明石さん達は話し合い、私達の疎開ルートを考えてくださいました。ゲイパレスにいる全員が、襲撃してくるであろう部隊に気づかれず、安全に逃げられる道を、です。【運び屋】の方も大いに協力してくださりました」 #加賀さん観察日記

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【運び屋】。なんか聞いたことがあります。長波のことか？ 「ええ、あの髪の毛の独特な方。明石さんと一緒にいらっしゃって、脱出ルートを考えてくださったのはその方なんです。私達の命の恩人なんです」 その恩人が今キンタマ中毒だとは多分今言うべきことではなさそうです。 #加賀さん観察日記

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明石と大淀が長波にコネ持ってたのも意外ですが、奴はもしかして業界の大物とかそういうのなんでしょうか。ただその筋の有名人なら、叢雲や雷あたりから噂は入るはずです。 それよりもさらに気になることが一つ。浜風です。大和絡みであろう彼女ですが、妖精哲学と何の関係が？ #加賀さん観察日記

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「浜風さんは、私もよく存じ上げないのですけれど。なんだか、全国各地の実験プラントを回ってらっしゃるそうなんです。ゲイパレスもその中の一つらしくて。不思議な人でした。ママは彼女からいつも未来予知、みたいなのを貰ってたんです。しかも凄い精度の」 #加賀さん観察日記

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予知。 「ええ。大体一ヶ月以内に何が起こるか、っていうのを彼女はくる度にママに伝えてたみたいなんです。雪崩が起きるとか。運ばれてくる物資の一部が腐ってるから触るなとか。最初は皆半信半疑だったんですけどね」 石川で会った時はそんな印象はなかったのですが。 #加賀さん観察日記

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で、その予知でお前らも何とか逃げ出せたってわけか。 「そうなんですけど、そこから一ヶ月ほど各地を転々とすることになりまして…」 え、この前の話じゃないのか。 「ごめんなさい、これ、3月の中頃の話なんです」 ややこしいなおい… #加賀さん観察日記

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「４月のうちは明石さんが岡山の高架下に匿ってくださっていたのですが、そこも見つかって襲撃され、みんなや明石さん、ママとも離れ離れに…」 大鯨はまた目から大粒の涙を流し始めます。マズいことを聞いてしまいました。過去のことは聞かないのがこの鎮守府の掟なのに。 #加賀さん観察日記

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ごめん、無神経に聞き過ぎた。辛いならもう話さなくていい。 そう声をかけてから、パンツ一丁で男泣きをする大鯨の背をさすってやります。 「…お気遣い、ありがとうございます。でも、あと、これだけは話させてください。私達を襲撃した部隊は、きっとここにもくる」 #加賀さん観察日記

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一体誰なんだ。そいつらは。 「“灰被りの犬”」 犬？ 「明石さんや浜風さんは、“機関”と呼んでいました…ママも」 秘密結社とかそういう類か。 「わかりません。ママのくれたログには、このマークしか」 映像が消え、床にシンボルが現れます。 灰まだらの、犬の首。 #加賀さん観察日記

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「このマークは多分、彼らのシンボル。…でも、それ以上のことは、何も」 明石に聞けばわかるか。 「そう思って私も尋ねたんですけど…明石さん、凄い怖い顔で、『知らない方がいい』って」 いかにもヤバい匂いがします。面倒ごとに首を突っ込むつもりはなかったのですが。 #加賀さん観察日記

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「ニッポン！」 「やせん！」 「ナガトモ！」 「やせん！」 大鯨の話から数日。不穏な謎が更なる謎を呼び「ほっといていいかな」という考えが頭の6割を占める中、鎮守府は穏やかに時間が流れていきます。 「ニッポン！」 「やせん！」 「ナガトモ！」 「やせん！」 #加賀さん観察日記

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無論面倒ごとだけでなく、めでたいニュースも入ってきています。まず、飛龍が改二になりました。それに伴い彼女と運命を共にしてしまった飛行部隊の情報もサルベージされ、新たに『友永隊』ユニットが形成される運びとなったのです。熟練パイロット妖精の加入は心強いことです。 #加賀さん観察日記

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「友永隊、サッカー明日だよ」 「サッカーアシタ？」 「ナガイ」 「ナガスギ」 「ナガトモ」 「ナガトモ」 友永隊は基本的に飛龍と行動を共にしています。工廠の妖精さん達と違い、艦娘のユニットとして産まれた彼(女？)達は本体である飛龍の影響を120%受けています。 #加賀さん観察日記

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サッカー好きな飛龍の妖精である友永隊は、勿論サッカーが大好きです。ワールドカップが近い事もあって、休憩室のテレビ前は友永隊の独占領地と化しています。おかげで多聞丸直属の精鋭飛行部隊であった彼らの勇姿はまだ見ることができていません。これには飛龍も苦笑いです。 #加賀さん観察日記

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「やせん！やせん！」 そんな友永隊の横で、全くサッカー関係なしに声を荒げる軽巡がいます。川内です。彼女は彼女で改二通知が来たため、一人大はしゃぎしているのです。うまいこと掛け声になってるように聞こえますが、一切関係なく一人昼間から夜戦夜戦と息巻いているのです。 #加賀さん観察日記

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川内の喉は相変わらず潰れたままですが、更なる改造によっては治るのではないか、と霧島さんは川内に告げました。今は人工声帯で限られた単語しか話せないけど、声が出せるようになれば戦闘に連れて行ってもらえる。思う存分夜戦ができる。はしゃぐのも無理のないことです。 #加賀さん観察日記

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そういう理由で、友永隊と川内は日の高いうちから演習もせずにテレビ前で、 「ニッポン！」 「やせん！」 「ナガトモ！」 「やせん！」 ワイワイキャーキャーと、 「インテル！」 「やせん！」 「ナガトモ！」 「やせん！」 お前らもうちょい静かにはしゃげ。 #加賀さん観察日記