@ATOR86さんによる艦これ二次創作 「航空戦艦は空を征く」

@ATOR86さんによる、艦これ二次創作です。
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副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

球磨と深雪、五月雨は思わず辺りを見回す。艦娘の大きさで遮蔽物のない海上。5分と言えばもう姿が見えてもおかしくない筈だが、来る筈の戦艦2隻の姿はどこにも見えない。 「…龍驤の姉御、まだ提督の事信じてる?」 「たった今分からんようになった。計算すら出来んようなったかなあのアホ…。」

2014-06-14 16:35:06
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

深雪の問いに溜息しながら答え、巻き物を広げる。手持ちの式は零戦52型に烈風、彗星。 「防空はウチらの周りだけで充分や。攻撃を考える必要はあらへん。戦闘機隊、発艦や!艦攻隊、艦爆隊も続いて発艦!キミらは交戦はせんでええ!索敵だけお願い!」

2014-06-14 16:35:28
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「愛だねぇ…。」 「クマー。」 何だかんだ言いながら指揮に従う龍驤の背中を見ながら、深雪は10cm連装高角砲を背部の武装ステーションから取り出し、球磨は自前の零式水偵の発進準備を始めた。

2014-06-14 16:35:36
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「降下3分前!環掛け!装具点検報告!」 ヘリが速度を維持したまま高度を下げ始め、降下長から号令がかかる。 伊勢、日向は自分達の降下装備を急いで点検する。

2014-06-14 18:57:31
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

滑り降りるナイロンロープはキャビン内のフックにしっかりと固定されており、ブレーキ役として尻の横でロープを掴む右手に体重を掛けても外れる事はない。 「「ロープ良し!」」 二人の点検呼称が重なる。

2014-06-14 18:58:13
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

そのロープに繋がるカラビナ。途中で外れぬよう開口部がネジ式になった頑丈なそれが確実に装着されているかを確認。 併せて身体ハーネスとロープカラビナを繋ぐ、自動ロック式の一際大きなカラビナの接続を確認。よし、問題ない。 「「安全環よし!!」

2014-06-14 18:59:16
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

カラビナに接続された身体ハーネスの各部接続を確認。一本のロープで腰全体を支える、所謂「座席結び」もあるが、教えている暇がなかった、と提督が出がけに言ってたのを日向はふと思い出した。 「「ハーネス良し!!」

2014-06-14 18:59:35
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

ロープを滑り降りる際に最も重要な手袋を確認する。普段戦闘に出る時は素手だが、今回は分厚い革製の手袋を装着している。その手袋のほつれや破れを点検…良し。 「「手袋よし!!」」

2014-06-14 18:59:46
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

最後に、自分の身につけているそれ以外の装備全てを確認。 日向はふと、自分の左腕に目をやる。彼女自慢の航空甲板は取り外され…ロープ降下の際に邪魔になると指摘された…今は35.6cm連装砲の予備弾倉を納めた弾嚢が装備されている。

2014-06-14 19:00:08
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「どしたの日向?」 「…いや、航空甲板が無いとなんだか落ち着かなくてな。」 向かい合って点検を行っていた伊勢の問いに日向は苦笑しながら応じる。 「我ら航空戦艦から「航空」を奪うなど、非常時とはいえ提督もなかなか非道い事をしてくれるものだ。」

2014-06-14 19:00:20
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「なーにバカなこと言ってんのさ。」 ため息混じりに紡がれた日向のぼやきを、向かいの伊勢は一笑に付した。 「あたしら今、立派に『航空戦艦』だよ!」 日向は一瞬虚をつかれた顔をし、次いでその答えが気に入ったように破顔した。 「違いない!」 「降下1分前!」

2014-06-14 19:00:34
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

ヘリが速度を急激に殺す。 減速Gを感じ、身体が揺れる。Gを感じなくなった頃、ヘリは水面上20m程の位置で静止していた。 「「装具全て良し!」」 「位置に着け!ロープ投げ!」 ヘリのスキッドに降り、ヘリの床に接続されたロープの残りが入ったバッグを海面に投げ落とす。

2014-06-14 19:00:58
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

バッグ着水。バッグから伸びたロープにキンク(捻れ)は見当たらない。 「「ロープ良し!」」 腰を後ろに引き、降下体制を取る。自重の支えを、足から緊張したロープを握る右手に移行。もう足は降下の一瞬ヘリから距離を取る為の手段に過ぎない。

2014-06-14 19:01:11
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「日向、降下準備よし!」 「伊勢、降下準備よーし!」 左手を挙げて報告。 左右の艦娘の降下準備完了を確認した降下長は手の平を前に出し、地面と平行に振る。 「降下用意!」 「「降下用意!」」 左手をカラビナに掛かるロープへ。

2014-06-14 19:01:30
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

降下長が手のひらを上に上げ、バイザー越しの視線を二人に向けて口を開く。 「済まんが頼むぞ。伊勢、日向、あいつらを無事に連れ帰ってくれ。」 「分かっているさ、任せてくれ、降下長…いや、『提督』。」 「降下!」 手が振り下ろされた。

2014-06-14 19:01:42
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「「降下!」」 スキッドを蹴り、一瞬遅れて右手の握りを緩めてロープをリリース。 一瞬にも満たない刹那の浮遊感。 直後に重力が日向の身体を捕まえ降下が始まる。

2014-06-14 19:03:38
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

引っ張り耐荷重3tのナイロン製三つ打ちロープは、艤装と本人を合わせた重量をしっかりと支えていた。 目の前をスキッドが通過したのを確認して左手でロープを軽く握る。 ふと正面を見ると伊勢がほぼ同じ速度で降下しているのが見える。どうやら同時降下には成功したらしい。

2014-06-14 19:04:04
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

尚降下。 ロープの抵抗で自由落下程ではないがどんどん速度は上がる。海面が速度を増して近付いて来る。 自分の速度も考え高度数メートルの位置で右手を握ってブレーキ。 ロープとの摩擦で右手の手袋が熱を持つ。厚い革の生地越しでも伝わって来る程の熱に、素手でなかった事を感謝する。

2014-06-14 19:04:22
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

水面上2メートル程の高さで完全停止。伸びきったロープが収縮しようと上に引かれるその一瞬を見逃さず、再度ロープをリリース。 日向の両足が、左右同時に着水した。

2014-06-14 19:04:37
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

これをしくじって片足着地をやると足首を捻って動けなくなる、と付け焼き刃の訓練の際口酸っぱく言われたな、と思い出しながらカラビナに残るロープを外し、今や遥か上空に静止するヘリを見上げ親指を立てる。

2014-06-14 19:04:49
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

機上から降下を見守っていた降下長が手を挙げて返事をするのを見届けると、日向はヘルメットとゴーグルを外し、次いで手袋を外して放り投げた。これはもう必要ない。 「私達」の戦いには。

2014-06-14 19:05:02
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「行くよ日向!」 同じく装備を投棄した姉が声をかけ、走り始めた。その身体がどんどん大きくなってゆく。 「私も始めるか。」 先を行く姉のポニーテールを眺めながら、日向も『起動』を開始する。 視界が一瞬揺らぎ、戻った時にはいつも通り『起動』が完了していた。

2014-06-14 19:05:15
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

艦娘を艦娘たらしめるその威容。 身長220メートル、35.6cm連装砲4門を背中の武装支持架に搭載、全身に対空火器を装備した、鋼鉄の女神が2柱。 「航空戦艦伊勢、出撃します!」 「伊勢型航空戦艦、日向。推して参る!」

2014-06-14 19:05:45
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

「あっかーん!ちょっちピンチ過ぎやぁ!」 「5分と言わず、今すぐ救援が来ないとクマたちは全滅だクマー!」 「ちっきしょー!調子に乗って好き勝手やりやがってぇ!」 島の裏側は混乱を極めていた。戦艦級2隻と軽空母級の到着と同時に重巡級が左右に散開し、今や半包囲の形を取りつつある。

2014-06-14 19:07:02
副赤@9/24 ぱんあ43 C-20 @ATOR86

龍驤の戦闘機隊の奮戦によって航空優勢は保たれているものの、飛来する砲弾については如何ともしがたく、遠征艦隊の4隻は撃たれるままになっていた。 4隻の周囲に砲弾が着弾し、絶えず水柱が上がる。

2014-06-14 19:07:17