章大 長編

クラゲの秘密のお部屋 @04eighter

#136 from章大 ❶ 『大きくなったら章ちゃんのお嫁さんになる』 そう幼い頃に誓った貴方は 今ではテレビでしか観れない遠い存在で ギターをカッコ良く弾いたり 色んな役を演じたり でも 変わらない笑顔を見る度に あの頃の約束を思い出してしまう 貴方は私の事覚えてますか？

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#136 ❷ 幼い頃良く遊んでいたけど 中学生になった頃から何と無く仲良くしているのが恥ずかしくなって 段々と疎遠になって 会話も挨拶程度しか交わさなくなっていった 知らない間に彼はテレビにでる様になっていて 何度か舞台やコンサートを見に行った

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#136 ❸ 最初は舞台から必ず目が合っていた けれどコンサートの会場が大きくなると 気づいてさえもらえなくなった それでも何処かで幼い日の約束を忘れられずに貴方を見に行く私 いつかまた出会えたらなんて そんな事あるはずもなく 大学卒業と同時に彼を追うのも辞めてしまった

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#136 ❹ 就職して毎日忙しく働く 会社で知り合った人とお付き合いをしていて結婚もきっとそう遠くない未来 現実はこんなもん いつか迎えに来てくれるなんて夢で 今の彼に不満も無くてむしろ幸せを感じている私 けれど… テレビの露出が増えた彼を見る度に 胸の奥に眠る想いが疼く

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#136 ❺ ある日彼氏と地元に帰える 両親に紹介をする とても気に入ってくれた その後久しぶりに近所を歩く 「あれ？○○ちゃん？」 見ると章ちゃんのお姉さんだった 「すっかり綺麗になって！え？彼氏？結婚すんの？」 変わらないお姉さん しばらく話をしていると章ちゃんの話になった

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#136 ❻ 「あの子も忙しいみたいで。でもしょっちゅう電話してるの。今もしてみる？」 と急に言われて少し動揺してしまう どうにか断り別れ際に携帯の番号を聞かれて交換した 不意に接点が生まれて章ちゃんに番号が知られたら もしかしたら何て思ってしまう私 そんな事あるわけないよね

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#136 ① 小さい頃俺のお嫁さんになりたいって言ってくれてた けど中学生になって思春期で成長していく君にどう接してええかわからんくなって 挨拶程度しか交わさなくなった 俺はテレビの仕事を始めて 舞台やコンサートがあると見に来てくれるのが嬉しくて もっと大きくなるって粋がってた

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#136 ② 小さい会場で直ぐに見つけられた 彼女はいつもまっすぐ俺を見てくれてて それが何より嬉しくて 段々と大きくなって行く会場で 彼女が居ないか探す いつの間にか見当たらなくなった 今でも彼女が居てくれる事を願うんや 貴方は俺を見てくれてる？ それとももう過去なんかな？

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#136 ③ 忙しい毎日の中でいつも唐突にかかってくる姉貴からの電話 たわいもない話をして 甥っ子や姪っ子とも話をする いつもみたいに話をしていると 「そや！この前○○ちゃんに会ってん」 と彼女の名前がでて持っていた缶ビールを派手に落とした 「結婚しやるみたい」

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#136 ④ 「え？」 「そりゃもう30やし結婚くらいするよね」 何て言ってる姉貴の言葉何て頭に入って来んくて 彼女が結婚する 俺と結婚したいって言ってた彼女が もうあれは遠い昔の話になってしまったんだと思うと少し苦しくなった 彼女が幸せならそれでいい でも会ってみたいとも思う

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#136 ⑤ すると姉貴がとんでもない事を言った 「携帯の番号聞いたの」 俺は藁をもすがる思いで姉貴から彼女の番号を聞いた でも掛けても良いのか？ 迷惑だと思われないか？ 彼女と話して何になるん？ そんな思いから彼女の番号を見つめる日々 俺はどうしたいんやろう…

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#136 ❼ 彼氏の両親にも挨拶を済ませて 式場を選んだりといよいよ結婚準備にとりかかる 結婚と同時に仕事を辞めるからその引き継ぎに追われて とても忙しい日々 章ちゃんの事もあれから数日は思ったけれど結局連絡は来なくて いつの間にか忘れていた

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#136 ❽ 休日 新居探しに出かける 妥協したく無くてなかなか決まらない 一つのマンションを見学に行く すごくいい所だった 帰りにエレベーターを待っていると降り出てきた人は小柄で少し派手な服を着ていた パッと目が合う ドキッとした 目の前にずっと会いたかった人が居た

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#136 ❾ 気づかないフリをしてエレベーターに乗る 扉が閉まる時こちらを見た章ちゃん それから次のマンションに行ってもずっとあの顔が思い浮かんで 何も頭に入って来なかった その日は本当は彼の家に行くはずだったけど適当に言い訳をして自分の家に帰る まだドキドキしている自分

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#136 ❶０ 家に着くと直ぐにベッドに雪崩れ込む 最後と決めて行ったコンサート以来で生で見た あの頃よりも大人になってて でも変わっていなかった こっちを見ていた章ちゃん 私に気がついてくれたの？ そんな事を考えながらそのまま眠りについた

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#136 ⑥ その日は仕事が早く終わって 予定も無いし早々に家に帰って来た エレベーターを降りるとカップルとスーツの男が立って居て 女性を見て驚いた 綺麗な大人な女性になった彼女 寄り添って居たのが彼氏なのがわかった 新居でも探してるんかな とても幸せそうやった

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#136 ⑦ 扉が閉まる時チラッと見ると彼女と目が合った気がした 気づいたのかな？ ここに住むん？ もう会えへんって思ってたのが偶然？運命？ わからへんけど現実になったら もう一度を願ってしまう あの彼氏といる幸せそうな彼女を見た そんなん見たらこのままの方がええよな

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#136 ⑧ けど俺はそんな簡単に彼女の幸せばかりを願うような男じゃない 今日見て思った事 それはやっぱり彼女が好きやと言う事 おかしいかもしれん もう何十年も昔の事ずっと覚えているなんて でも彼女だってそうやと思う きっと覚えて居てくれている

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#136 ⑨ エレベーターが閉まる時そう思った 俺は携帯を持って彼女に電話をした 彼氏と居るんかもしれん でもそんな事どうだっていい 電話に出て 俺の声を聞いて 動揺すればええ そんな卑怯な考えが頭をよぎった 何度目かのコールのあと 恐る恐る『はい…』と電話に出た彼女

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#136 ①⓪ 「あの、俺、章大。姉貴から番号聞いて掛けてん」 『え？章ちゃん？』 「ごめんなー。急に電話して。今日マンションに居ったやろ？あれ彼氏？」 『う、うん』 「そっか。結婚するん？」 『そうだよ』 「おめでとう」 『ありがとう』 今君は困ってる？じゃあもう少し困って？

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#136 ❶❶ 少しウトウトし始めた頃鳴り出した携帯 ディスプレイには知らない番号からで躊躇しながらでる 相手は章ちゃんだった 久しぶりに聞く声 結婚する事も知っていてお姉さんから聞いたんだなと思っていた すごくドキドキする それが伝わってしまうんじゃないかって思うくらい

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#136 ❶❷ 少し語尾を伸ばした話し方も ふふっと笑う笑い方も 昔のままで彼氏の家に行かなかった事を安堵した きっと今私はあの頃章ちゃんに恋していた時と同じ顔をしているから たわいもない会話の後 不意に章ちゃんが 「なぁ。会いたい」 と言った 「会いたいねん」

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#136 ❶❸ ストレートに言われた言葉は私を素直にした 『私も会いたい』 「また連絡するな」 と言われて電話を切った 会ってどうするの？ ただ昔話に花を咲かすだけ ただそれだけ 一回会ったらその後はもう何もない 私は彼と結婚するの そう自分に言い聞かせる自分がいた

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#136 ①① 必死にドキドキを隠す様に話す彼女 バレてへんって思ってるやろうけどわかってただからもっと俺で頭がいっぱいになればいいなんて思って 「会いたいねん」 って言ってみた そしたら意外にも彼女も会いたいって言ってくれた 一度会ったらそれっきりって思ってるやろ？

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#136 ①② ごめんやけどそうはさせん 俺にとったら最後のチャンスで これを逃したら彼女と一生交わる事も無いし 嫌われてもいい だから俺が好きって伝えるまで それまでは俺の事意識しとって？ 翌日 スケジュールから適当に日をメールした 彼女から返信が来て 時間と場所を告げる