ラバウル少佐日誌:とある艦娘の過去と未来編其ノ参

艦これ二次創作小説です。とある艦娘の過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(前回までのあらすじ: 熱海に住む十四歳の少女、木乃曽実(きのかつみ)は、数年前の事故で重傷を負ったものの、完治していた筈であった右肩に違和感を感じ始めていた。 しかし、それを言い出せないままに待っていた姉達と合流。『姉妹会』が始まったのであった)

2014-06-17 21:37:26
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ふぁぁー……あ」 北上は、少し大きめの欠伸をすると、机に突っ伏した。 「で?つまり、バレーのスマッシュが上手くなりたいってコト?だったらアタシバレー得意だから……」 「全然違うわ北上さん」「アレレ」 大井は苦笑いつつ、木乃へ顔を向ける。(2)#ラバウル少佐日誌

2014-06-17 21:49:26
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「右肩の調子が悪くて、バレーボールで失点を重ねてしまった。そうなのね?木乃さん」 「うん、大井姉さん……多分『あの時』の事故で、右肩壊しかけた、アレが原因なんだと思う」 「アレ、なぁ……」 球磨川は遠くを見る目つきで、顰め面をする。(3) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 21:54:28
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「アレのせいで、タマ達はバラバラになっちまったにゃ。……まあ、引き取ってくれた球磨川の家に、不満はにゃいが」 珠樹は球磨川にもたれ掛かり、眠たげな様子でぼやいた。 「アタシゃ不満だらけだよー。何だってあんな堅苦しい家に……うぐぅぅー」(4) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:00:49
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「で、話し戻すけどよ」 球磨川は、木乃の顔を覗き込む。 「そんならまず病院行け。医者に診て貰わねえ限りは、どうにもなんねえだろ」 提案に、木乃は顔を俯ける。 「それは……出来ない」(5) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:14:23
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あっ……そうだった、な」 「もーお、アネキ無神経過ぎだよー」 北上は起き上がると、それまでの気だるげな態度が嘘か何かであったかのような、真面目な表情を木乃へ向ける。 「それで思い出したけど、最近どうなの、家は。あんまり良い話聞かないけど?」(6) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:15:11
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

木乃は……。 嗚咽を上げ始めた。 「父さんが……漁に出れなくて。酒の量も、増えて……」 「あーあ、曽実(かつみ)泣かせてやんのー」 球磨川が意地悪く、北上を笑った。 「で、なんかお前の母ちゃん、今の親父とは離婚して、新しい男とくっつくって聞いたけど」(7) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:20:48
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「そ……そうなんです、球磨川さ……あいや、姉さん」(今言い直したにゃ)(言い直したね) 珠樹と北上のコソコソと交わした会話も耳に入らない、木乃。 「でも、その新しい父さん、なんですけど……」 木乃は顔を上げ、球磨川と目を合わせた。(8) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:28:34
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「知ってる。もう調べさせたし」 「流石アネキ、仕事早いねえ」 球磨川はしかし、表情を和らげないまま、 「ほらよ」 数枚の写真をテーブルの上に投げ出した。 「えっ……ちょっと待ってこの人って」 大井が、明らかに動揺の声を漏らす。 珠樹は他所を向いていた。(9) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:33:49
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「曽実、悪い事は言わない。あなたウチに来なさい。ウチの両親は、私が説得するから」 「……いえ、別にいいんです。大井姉さん」「良かねえよ!」 立ち上がり、球磨川は怒鳴り声を張り上げる。 (10) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:44:56
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「コイツが何モンか分かって言ってんの?お前ェ、股ぐらが潰れるまで身体売らされて、終いに死にゃあ臓器もバラ売りされて骨も残らねえぞ!?」 「アネキ落ち着け、他のお客さんが」「シャァラアアアアップ!」 (11) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 22:51:30
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

球磨川は北上を押し退けると、 「おい!」「ううっ……」 テーブルを思いきり両拳で殴り、木乃へ詰め寄る。 「おい……!ふざけんじゃねぞ?曽実!テメエはあの家やテメエだけのもんじゃねえ、あたし等姉妹のモンでもあるんだよ!だから」「だったら!」 (12) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:00:12
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

機関銃のような球磨川の説教を、木乃は更なる大声で黙らせた。 「だったら尚の事、言わせてもらいますけどね、姉さん……!」(13) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:09:12
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「オレ達は……貰われ子、なんですよ……!」(14) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:16:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

木乃の答えに、その場にいる誰も、意見する事は叶わなかった。 「だから、オレ達は、誰も一人前にモノ言う資格持った奴なんていない。……それ位分かりますよね?姉さんは明日の晩、許嫁と寝なきゃいけないんですから。ねえ?」 「テメエ!」(15) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:21:39
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

球磨川が、木乃に掴み掛かる。 だが。 「その辺でいいよ、お姉ちゃん」 二人の間に珠樹が滑り込み、球磨川の手を解かせた。 そして珠樹は、 「いいか、木乃曽実」 冷めきった眼差しを木乃へ突き刺す。 「勘違いするな。私達は『姉妹』だ。だけどもう、家族じゃない」(16)#ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:28:48
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

木乃は目を見開き、暫し瞬きも忘れた。 ……やがて、彼女は項垂れた。 「ごめんなさい……ごめんなさい、姉さん」 「取り敢えずお前の肩に関わる医者代位は、お姉ちゃんとタマが小遣いはたいてやるにゃ。だけど家の事は、お前自身がどうにかするにゃ」(17) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:35:57
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

珠樹は、それだけ言った。 それ以上は、何も言いはしなかった。 「じゃあこれで曽実の話は終わりだにゃ。他に何か相談あるに……」 (18) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:44:37
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「……っと、何、今の」 5人は一斉に、『異変』に気付く。 「地震……にしては、妙に短っ!?きゃっ!」 二つ目の揺れで、5人は確信した。 これは、地震ではないと。(19) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:49:52
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「おいおい……この平和な日本に、何処の国が艦砲射撃なんかやりやがった!?」 球磨川は、訳の分からない事を口走りながら店を出て行く。 「お嬢ちゃん!お勘定」「タマがもっとくにゃ」 「悪い、タマ姉!」「待って、北上さん!」 「みんなして何処行くんだよ!」(20) #ラバウル少佐日誌

2014-06-17 23:57:43
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

木乃は慌てて、三人の背を追うが、 「うおっ!っと」 三人は、店から出て直ぐの場所に立っていた。 「どうしたんだよ、姉さ……」 球磨川の視線を追った木乃は、 「な……」(21) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 00:04:32
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「何だよ、アレ」 ……それは、白い肌の巨人とでも言うべきだろうか。 一体身長は何十……いや、何百メートルあるのか分からない程に巨大だ。 両腕に付いた大口径の重砲からは、煙が吐き出されている。 「……何だよ、アレ」 木乃は、茫然とそれを見やる。(続く) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 00:14:18