twnovelまとめ

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「どうして逃げないんだ？」男は問う。その瞳を怒りで燃やしながら。「拒む理由なんて、ないもの」あっけらかん、といった調子で女は答える。ああ、そうか、と男は気づく。女は男を傷つけたいのだ。拒まないことで、拒んでいることを示したいのだ。それでもいい、とキスを落とした。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「どこに行っていた？」その声は、氷のように冷ややかだった。疑われているのだと、言われずとも理解できてしまった。いつからだろう、夫が私の言葉を信じてくれなくなったのは。記憶の中の夫は、いつも笑っていた。こんな冷たい目をすることはなかった。どこで間違ってしまったのか #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「何があったんだ？」いきなり部屋に飛び込んできて、十分以上も大泣きしていた幼なじみを刺激しないよう、智也は優しく問う。「べ、別に……理由なんてないし」嘘をつくとき、視線が泳ぐのは真穂の癖だ。言いたくないのか、言わずに解ってほしいのか。面倒くささにため息をついた。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「どこなのよ、ここ……」女は呆然としていた。ありえない。何これ。意味のない言葉ばかり頭を回る。「ここはどこー！？」辺り一面、虹色の花畑。日本では……いや、現実ではありえない光景に、ただ叫ぶしかなかった。仕事人間のアラフォーにファンタジー楽しめとか、正直キツイわ！ #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

その新緑の瞳は、生命力にあふれた光を灯していた。囚われてなお、折れぬ心。失せぬ志。負けた、と男は思った。「逃げなさい。君には外が似合いだ」かけられていた鍵を開け、少女を逃がす。少女は一度だけ振り返った。男が笑みを返すと、少女はその瞳に決意を宿して駆けていった。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

緊張が鼓動を高鳴らせる。それは周りにも聞こえてしまうんじゃないかというくらい、耳に響く。名前が呼ばれる。私が一歩二歩と足を進めれば、氷のように冷たく感じる視線にさらされる。ヴァイオリンを構えようとしたら、手が、震えていた。世界に拒絶されているような恐怖に襲われた #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

その鮮やかな赤に、私は一瞬で目を奪われた。視界が赤で埋まる。紅葉を描いたその絵は、緻密さはないものの大胆で、迫力があった。これだけの絵が私にも書けたら。いや、私も描きたい。対抗心が一気に燃え上がった。でも、赤は使うまい。そうだ、青で、どこまでも広がる空を描こう。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

目覚まし時計の電池が切れていた。頑固な寝癖はなかなか直らなかった。空を仰げば、今にも雨が降りそうな灰色の雲。「予定変更。DVDを借りて私の部屋へ集合せよ」「はいはい」映画は家でだって見れる。私のわがままに慣れている彼は、文句を言わずに承諾した。それでこそ下僕だ。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

今日はついてない。朝寝坊したし、靴下には穴が開いてたし、魚座は最下位だったし。加えてメロンパンが売り切れるなんて。「これ、あげる」声と共にメロンパンを差し出してくれたのは、クラスで人気者の山内くん。「ありがとう！」感謝の言葉が、するりと出てきた。今日はついてる。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「何してるの？」炎天下、青い空を仰いでいたら、声をかけられた。見覚えがある顔だ、と僕は思った。「ぼんやり、してる」僕は正直に答えた。「それは見てればわかるけど。帽子被りなよ」そう言って、彼女は僕の膝の上にあった帽子を手に取り、頭に被せた。どうやらお節介のようだ。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

100％の恋なんて、ありえない。真里は最近、そんなことを考える。好きって気持ちだけを抱き続けられるわけじゃないから。優柔不断さに苛立つこともあるし、喧嘩すれば嫌いって思う。それでも。「好き、なんだよなぁ……」自分が出せる最高のパーセンテージで、彼に恋していたい。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

ゆっくりと湯船に浸かると、水面が揺らいで入浴剤の花びらが散った。花びらを指でつつくと、それはお湯を染めて溶けていった。お気に入りのシトラスの香り。気分転換にはちょうどいい。「……気にしないもん」あいつが誰と一緒にいたって。今日見た光景を、必死に頭から追いやった。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「赤いマフラーなんて、女の子みたいだよ」私の言葉に、彼は苦笑する。「そうかもしれないね。でも、俺は君のヒーローでいたいから」正義のヒーローは赤を身にまとっているものらしい。子どものころからずっと、彼は私を守ってくれていた。赤いマフラーは、彼によく似合っていた。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「どうして吹けないの！？」手のひらサイズのお姫さまは、学習机の上で仁王立ち。怒っていても全然怖くない。「がんばってるんだけど……」手が小さいから、リコーダーの穴をちゃんと押さえられないんだ。「レの姫、ごめんね」音から飛び出してきた姫は、僕がレを吹けるまで帰れない #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

最近流行りのマキシ丈ワンピを買ったら、無性にお出かけしたくなった。こういうとき、恋人がいてよかったと思う。短縮で電話をかけてみる。七コール後、留守電につながった。「まとめるとそういうことなの」「だからって女二人でデートなんて、寂しくない？」「これはこれで楽しい」 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「美しいね」思わずこぼれた僕の言葉に、君は頬を赤らめる。いや、頬だけじゃなくて、全身を。白い肌は触れるだけでだんだんと熱を持っていく。まろやかな曲線は、やっぱり美しいとしか言えない。「春……」君はあおるように、僕の名を呼ぶ。「もっと見せて」僕は口づけを落とした。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

前方を歩く男性が、小さな巾着を落とした。落ちた拍子に転がり出てきた中身は、緑色の石。たぶん、マラカイトだ。巾着と石を拾って、前方の男性に駆け寄る。「あの、落としましたよ」振り向いたのはダンディーなオジサマ。大人の男性が天然石持ってるなんて、なんだかかわいいなぁ。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

じめじめとした嫌な季節に、めずらしく覗いた晴れ間。天気予報は今日一日晴れマーク。気持ちいいくらいくっきりとした空色に、私は一日上機嫌。「どっか遊びに行きたくなるよね！」昼休み、お弁当を食べながら私は言った。「放課後デートする？」恋人の提案に、元気よくうなずいた。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

天然石を集めるのが趣味だった。水晶やエメラルド、アマゾナイトやラブラドライト、チェリークォーツやオパライトなんてガラスだけどそれでも好き。だから、許さない。落とした視線に映るのは、バカ翔吾の青い靴下と砕け散った蛍石の結晶。「……ごめん」絶対に、許さないんだから！ #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「君にはまだ早いよ」六つ年上の恋人にそう言われて、私はむくれた。手に持った深紅のワンピースは、たしかに大人向けのデザインではあった。「五年後の君になら、似合いそうだけどね」恋人は優しい笑みを浮かべる。その言葉に、深紅のワンピースの似合う、未来の私に思いを馳せた。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「君もかわいそうにね」その声は慈愛に満ちていた。「僕に好かれなければ、こんな目にもあわなかったのに」つ、と彼はカッターで私の頬をなぞる。ガクガクと震える体が、私の傷を増やす。「でももう手遅れだよ。君を知ってしまったから……もう、戻れない」彼は泣きそうな顔をした。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

今日の犬神様はご機嫌斜め。しょうがない、いつもの作るか。犬神様が遊びに来るようになってから家に常備されているお餅や餡を使って、さくっとお汁粉を作る。小さな背と手でもこれくらいならできる。「犬神様、どうぞ」仏頂面が少しだけ和らぐ。まったく、神様というものは厄介だ。 #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

白鳥は優雅に見えて、必死にバタ足をしているらしい。「日曜日の擬人化がね、理想的だったの」話の半分も理解できない俺に、彼女は語る。理想的なのは彼女の外見の方だろうに、中身は残念。「私、日曜日と結婚したいわ」恋しているように朱に染まる頬。ある意味白鳥のようだと思った #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

「ごめんね」同い年の幼なじみは震える声で言う。その瞳からあふれる、透明な涙。今も昔も、彼女の涙は澄んでいてきれいだと思う。泣かせたくないのと同じくらい、自分の傍でだけ泣いてほしいと、心は揺れ動く。「ごめんね」罰を望んでいるように、彼女は謝る。僕は彼女を抱きしめた #twnovel

五十鈴スミレ@食べられｺﾐｶﾗｲｽﾞ2巻2/29発売✨ @midori_tya

ザーザーと外から聞こえる音が耳につく。玄関の向こうのモザイクのかかったような景色に、僕はため息をついた。天気予報を見忘れたのはどうやら自分だけらしく、昇降口には誰もいない……と思ったら。「入ってく？」 #twnovel #雨水濡という字を使わずに雨が降る情景を描写してみましょうか