駆逐艦若葉【艦これのえほん:第2巻】
一方、初春・子日・初霜の3隻は流氷に囲まれたまま、なすすべもなく流されていました。流氷が緩み始めているのでここから抜け出ることはそう難しくないでしょう。
2014-06-19 23:30:36しかし、初霜はスクリューを破損していました。わずかな速力しか出せません。このままでは敵の的にされてしまいます。初霜はそんなのは御免だと思っていました。軍艦として生まれたのならば、より多くの人々や船を守りたいのです。
2014-06-19 23:31:35「初霜、痛むか?」 初春が初霜をいたわるようにいいました。 「へっちゃらです」 「お前は若葉と違って隠すのが苦手じゃのう。顔が青くなっておるぞ」
2014-06-19 23:32:38「流氷から出たら、私達が曳航するよ!」 子日が言いました。 「ありがとう。子日姉さん」 初霜はほっとしていました。初春はいたわってくれるし、子日は元気づけてくれます。2隻ともいい姉です。
2014-06-19 23:34:01そして若葉はいつも初霜のことを守ってくれます。若葉が助けに来てくれると聞いて、初霜はとても心強かったのです。
2014-06-19 23:34:34やがて流氷は緩み、3隻は脱出しました。初春と子日が初霜を曳航しようとした、その時です! 「た、探信儀に感あり!!」 初霜が叫びました。近くに潜水艦がいるのです。初春と子日は引き綱を初霜につけている途中でした。爆雷戦の用意に間に合いません。
2014-06-19 23:35:45もうダメだ! そう3隻が思った時です。 「爆雷投下!!!」 木曾の大きな声が辺りに響きました。 それと同時に木曾と若葉が海中に向かって爆雷を投射します。間一髪、救援が間に合ったのです。
2014-06-19 23:36:59「近くに第6駆逐隊が居る。そこまで逃げるぞ」 若葉が3隻に言いました。 「初霜は若葉が守る!!」 若葉は誓いを込めた声で強く言いました。 「言いやがったな。度胸のある奴は嫌いじゃない。俺も手を貸す!!」 木曾も声を張り上げ、爆雷を投射します。
2014-06-19 23:38:06やがて黒い水柱があがりました。潜水カ級でしょうか、1隻撃沈したようです。しかし、潜水ヨ級でしょうか。魚雷を放ってきました! このままでは初霜にあたってしまいます!
2014-06-19 23:38:35「させないぞ!!」 若葉は全速前進で前に出ると、初霜の身代わりに魚雷に体当たりしました。船首の部分がはじけ飛びます!! 「わ、若葉ちゃん!!」 「若葉!!」 初春も子日も初霜も木曾も叫びました。
2014-06-19 23:39:31「……だいじょうぶだ。まだ沈まない」 痛みをこらえながら、若葉はなおも爆雷を投射します。 やがてまた黒い水柱があがりました。潜水艦を無事、全て撃滅できたようです。
2014-06-19 23:40:00木曾は大急ぎで若葉に引き綱をつけ、曳航し、海域から離脱しました。そして、第6駆逐隊の暁、響、雷、電の4隻の護衛でやっと鎮守府に帰ってくることが出来ました。
2014-06-19 23:41:02「若葉ちゃん……。ありがとう。また、怪我しちゃったね」 「若葉は構わない。今度は初霜を守ったための怪我だ。悪くない」 「でも、痛いよね……」 「初霜だって怪我をしている。痛い」
2014-06-19 23:42:02「初霜、今度は絶対守る」 若葉は、そう言うと少し考えて言い直しました。 「違うな。初霜と初春と子日と若葉で、みんなを守るぞ」 「……はい!」
2014-06-19 23:42:44若葉は、それ以来、余裕のある時はきちんと眠るようにしています。24時間寝なくても大丈夫なのはかわりません。でも、それはいざというときです。明日の準備を怠れば、あしたいい働きはできません。ですから、若葉は今日もゆっくりと眠ります。
2014-06-19 23:43:19初春は、そんな若葉の成長を見て嬉しそうでした。子日も同じです。初霜は、これからも、若葉と、みんなといっしょにこの海を守り続けようと誓いました。
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