ラバウル少佐日誌:とある艦娘の過去と未来編其ノ肆

艦これ二次創作小説です。とある艦娘の過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(あらすじ: 静岡は熱海市に住む、両親を失い姉達とそれぞれ別の親へ引き取られた事以外は、ごく普通の中学生であった木乃曽実(きのかつみ)。 彼女は、放課後にかつての長女が毎日主催する『姉妹会』に、その日も何時ものように参加した) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 19:08:02
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(だが、姉妹会の最初の議題に決着がついた直後、不気味な二回に渡る揺れが5人を襲う。 慌てて店を飛び出した彼女達が見たものは、数百メートルの背丈は有ろう、大口径のカノン砲を両腕に装備した、真白い肌の巨人だった) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 19:13:58
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

木乃は、ただそれを視界に入れる事しか出来ない。 背後の沈みゆく太陽を踏み潰すように浅瀬で仁王立ち、 両目を緑色に発光させ、 右腕の重砲を陸地へ向けて構えた『巨人』を相手に、 どう抵抗すればいいのかすら分からない。(1) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 19:19:59
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「姉さん」 大井が、球磨川に走り寄る。 「おう……あたしも、宇宙人とかバケモンなんて、あんまり信じるクチじゃなかったんだけどな……」 「巨人が攻めてくるなんて、一体何年前のマガジンの漫画だよ……って冗談言ってる場合じゃないよねアネキ、逃げよう!」(2) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 19:27:34
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

北上は球磨川に促し、 「おい!逃げるぞ曽実!」 「えっ……?」 球磨川の声に、木乃が振り向いた、その直後。 「うわっ!?」「ぎィ!」「うっ……!」「北上さん!」「……!」 5人は、吹き飛ばされた。(3) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 19:43:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ァ……っけはッ!はァッはっ……」 木乃は腹から地面に叩き付けられたものの、何とか息を整えつつ、立ち上がる。 ……立ちのぼる土煙の中、遠くにはまだ緑色の二つの光が見える。 あの巨人のモノだろう。 だが。(4) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 19:44:12
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(……何だ?) 木乃のいる場所へ向けて、猛スピードで突っ込んでくる緑色の光が幾つか、それとは別にあった。 かなり高い位置にあるものが6つ、低い位置にあるものが、4つ。 ……彼女は本能的に、近くにあった小さめのビルの中へ飛び込み、その二階まで駆け上がる。(5) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 19:50:24
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

幸いにもビルの中は無人であった。 だが、外から電子音声じみた異様な鳴き声と、人の怒号、悲鳴が聞こえ始める。 (アイツの仲間か……?一体、何しに来たんだ……!?) 彼女は、恐るおそるに、窓を開ける。(6) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 20:00:53
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「があアアアア!」「ギャアアアアア!」 ……木乃はその惨状に、声も出ない。 街は、先程見たそれよりもやや小型の巨人三体による至近砲撃で、次々に破壊されてゆく。 そして二匹の巨大な鉄の塊のようなものが、崩壊した建物から人間を探り出しては『捕食』してゆく……。(7)#ラバウル少佐日誌

2014-06-18 20:09:17
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

恐らく姉達も奴等の餌となるのは時間の問題であり、自身もここに長居は出来ない事を、彼女は覚った。 「……くッ!」 彼女は、逃げた。 大急ぎで一階まで降りると、ビルの裏口から飛び出た「うあァッ!」 直後に、彼女が先程までいたビルは砲撃を受けて、崩れ落ちた。(8) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 20:17:43
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「う……うっ」 木乃は爆風に倒れる。だが、悠長に痛みを感じている余裕は無い。 「姉さん達……ごめん、なさい……!」 届かないと分かっていつつも、彼女は声を絞り出さずにはいられなかった。 そして、比較的安全だろう山の方を目指し、走りだそうとした、 その時。(9) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 20:36:24
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

(……高梨?) 木乃は、海の方へ向かって走ってゆく、クラスメイトの高梨が目に入った。 「アイツ、何やってんだ……!」 彼女はその時、冷静な判断が出来なかった。 「おい待てよ高梨、高梨!」 木乃は、高梨を追い、街を下る。(10) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 20:44:08
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「高梨!」「ひあっ!」 海沿いの家の内、一件の窓ガラスを叩き割り、木乃は飛び込んだ。 「木乃さん……!?どうして」 「それはこっちが言いてえな。何してんだよ、死ぬぞ」 高梨は……静かに、その場から退く。 彼女の後ろには、ケージに入った小さな兎がいた。(12)#ラバウル少佐日誌

2014-06-18 21:01:11
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「この子……私が生まれた時に、お父さんとお母さんが飼ってくれた子が産んだ、この世に遺した子供なの。だから、捨てていくなんて、出来なくて……」 ケージへと、木乃は静かに視線を移し、そしてまた高梨へと戻した。 「分かった。じゃあそいつも連れて、一緒に行」(13) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 21:06:53
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

木乃が言い終わらない内に、 「……へ?」 高梨は瓦礫の雪崩に押し潰された。 「た……!あ……、あ」 木乃の視覚と聴覚が、ぼやけていく。 急激に、息苦しさが彼女の胸を締め付けてゆく。(14) #ラバウル少佐日誌

2014-06-18 21:15:45
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あ……あ、ぁ……」 失われてゆく意識の中で、木乃が最後に見たもの。 それは、口の付いた鉄塊から、水死体のように真白な上半身と、長い黒髪だけを露出させた、バケモノ。 バケモノは左手だけで、瓦礫を不自由そうに払い退ける。 その右手に、握られているのは……。(15)#ラバウル少佐日誌

2014-06-18 21:24:38