【艦これSS】朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

少し力が弱まってきたのを感じた私は片手で通信機のスイッチをいれる。 「明石！早く来て！朝潮が！朝潮が暴れてんの！」 返事もないままに通信が切れ、五分とたたない内に明石が部屋に飛び込んでくる。 そして無言のままに朝潮の片腕をゴムチューブで縛ると注射器を突き立てた。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「何それ」 「鎮静剤です。大丈夫、後には残りません。これでしばらくすれば大人しくなるはずです」 「う゛う゛う゛う゛う゛ーーー」 まるで野戦病院だ。出撃したわけでもないのに。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「……ひて……えひて……」 薬が効き始めたのか、朝潮は身体の動きを止めて何かを呟きだした。 「えひて……かえひてよ……かえ…て……ひれーかん……かえひて……」 朝潮はしばらくそうして身体を丸めて呟き続けた。ずっと。ずっと。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

それから更に数十分後。 「あえ゛？」 まだ若冠呂律は回っていなかったが、朝潮は突如顔を上げ、私、満潮、そして明石を見渡した。 「みひひお？ あまつかへひゃん？ あかひひゃん？ 皆ひゃんろーひたんれすか？」 ようやく瞳に理性の光が灯っていた。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「薬の影響でしばらくボーッとするかもしれませんが徐々に抜けていきますからね？」 明石が朝潮の耳元でゆっくりと告げた。 「ありがと明石。助かったわ」 「また何かあったらすぐ呼んで。当座は大丈夫だと思うから」 「ん、わかった」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

明石はそれじゃあと去っていった。また自分のラボに閉じ籠って研究に没頭するのだろう。知り合って１０年になるが、相変わらず何を考えているやら分かりにくいやつだ。悪い人間……もとい艦娘ではないのだけど。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

まだボーッとしたままの朝潮を、満潮は未だ心配そうに見つめていた。 「悪かったわね起こして。もう大丈夫そうだから、貴女ももう少し休みなさい」 「でも……」 「休みなさい。良いわね？これ以上誰かに迷惑かけたくないのなら」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

そう言うと渋々といった様子ではあったが 「わかった……任せるわ……」 そう言って再びベッドに潜り込む。疲れていた上に、朝潮を押さえ込んであちらも体力の限界だったのだろう、数分もしない内に寝息が聞こえだした。 #朝潮の蝶