【艦これSS】朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

だから見た目に騙されてタメ口きいたりすると大変な目にあったりするわけで……。 かくいう私は三年目。もう新人じゃありませんが余計な波風立てるのは阿呆のすることなんで、全員に敬語で接してます。付け上がる相手は利用しやすいですしね。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「また何ぞコソコソと嗅ぎ回ってるようじゃの」 「あははは。それが情報屋ってもんですからね」 「藪をつつくのは勝手じゃが、つついた後も考えんとの」 「仰る意味が分かりかねますね、なんの話です？」 「『そこに居るのが何か』という話よ」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「子猫なら笑い話にもなるがのう。人喰い虎なら首から上がガブリじゃからの」 場の空気が急激に冷える感覚。肌がピリピリするこの圧迫感。あらら、なんか地雷踏んじゃいましたかね？ 「警告ってことですか？」 「いや、老婆心というやつよ。のう情報屋、『破滅』とは何じゃと思う？」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「その襲ってくる虎の名が破滅……と？」 「いいや。破滅は襲っては来ぬよ。こうして――」 一閃！ ゆらりと揺らめいた古狐の手にした扇が私の喉元に突き付けられます。 「――こうして……傍らに佇んでただ待っているのよ。その喉首を掻き切る瞬間を、の？」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「そしてその境界は実に危うい。ゆめゆめ注意することじゃ、お主は今そこに立っておるのやもしれぬぞ？」 スッとそのまま扇を手元に戻し、口許を隠す古狐。 「わあ、おっかないですねえ。せいぜい気を付けることにします」 でもね、と付け加える私。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

　 「『近道』ってのは大抵、藪の中を行くもんですよねえ」 　 「……ほう？」 「それに私、阪神ファンでして。虎は大好きなんですよ」 「フ、適当抜かしおるわ」 「えぇ、適当ですよ？だから情報屋が務まるんです」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「では私も用事がありますので失敬」 踵を返したところで「待たれよ」と呼び止める声。いい加減相手するのかったるいんですがねえ。 「お主のタバコは確かechoじゃったな」 「？　そうですがそれが？」 「いや、な。にしてはここに残っている灰は長いのうと思ってな」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

満潮の吸っていたジョーカーの灰。 「それに今『私も』と言うたが……誰が先程までここにおったのかの？」 流石古狐、目ざといなあ……。まあここで変に疑いを向けられるのもなんだし。 「満潮さんですよ？尤も入れ違いでしたが」 嘘のコツはほんの少し真実を混ぜること。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「満潮？……ふむ。そうか……」 あら、何か知ってるんですかね？ 突つきたいとこですがこの古参四天王が一角はあまり敵には回したくないんで。 「それじゃ、失礼しまーす」 三十六計逃げるが勝ちです。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

さてさて、まずはあの優等生ちゃんの部屋に虫を設置しないと。出来たら執務室と提督の私室にも置きたいとこですが、執務室のセキュリティは完璧だし、私室の方は四天王さん方以外は立ち入り禁止ですからねえ。全く年功序列って奴はこれだから――「きゃっ！」きゃ？ #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「いたた……何よ、全く」 見れば地面に尻餅ついて倒れてるそれは、件の四天王が一角、天津風さんでした。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

【大鳳サイド】 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

しばらく廊下で頭を冷やし、もう提督に会っても大丈夫と確信してから執務室の扉をノックします。 「提督。大鳳です。失礼します」 ちゃんと呼び掛けて中に入った私が見たのは、提督の制服を抱き締めているあのクソガキでした。一気に視界が赤く染まっていきます。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「な、にをして、いるの……です……」 頭の中でブチンブチンと何かが切れていく音が聞こえます。殴りかかる数秒前というやつです。 「あ、あの……！し、司令官にお尋ねしたいことがありまして！そしたら服が……その床に落ちてまして！」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

殴りたい殴りたい殴りたい殴りたい。 駄目！ 駄目だ、それをしたら提督が悲しまれる！あの人は惜しみなく全ての艦娘を大事に思っているのだから……。 奥歯がすり減る。爪が指に食い込む。その痛みで怒りを塗りつぶせ！ 駄目だ駄目だ駄目だ。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「そ、そうでしたか……フフフ……そうでしたか……」 何故か笑いが出てしまいます。おかしくなんてないのに。ちっともおかしくなんてないのに。 おかしいのはこのクソガキのオツムの中なのに。 「あ、あの……大鳳さん？」 「は、はい……フフフ。なんでしょう？」 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「司令官は……どちらに居られるか分かりますか？」 ぶちぶちぶち…… それを私に？ 私に聞く？ 私に聞こうというの？ 知っていたとして、私が貴様みたいなクソガキに。発情しきった犬みたいな貴様に教えるとでも？ #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「い、いえ？……ぞぞ存じかねます……」 「そう、ですか。大鳳さんならご存知かと思ったのですが……」 「ななな何故私に？」 「だって大鳳さんは古くからこの鎮守府にいらして司令官との付き合いも長いですから」 ぶちんぶづぶぢ #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

こ、こここのクソガキ……そこまで。そこまで分かっていて私にそれを聞きますか？ それを聞くつもりですか？ そのクソ優等生面した顔面を思いきり歪ませてあげましょうか？ ダメダメ駄目だ駄目だ駄目。 堪えろ。堪えろ私。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

こ、呼吸を……落ち着かないと……兎に角呼吸を整えて落ち着かないと……。 「フッー……フーッ……フフフ。え、えぇ確かに……もうかれこれ１０年程になりますね。提督が新人提督として赴任した時以来ですから……」 そう、そうだ。私と貴様じゃ共に過ごした時間の重みが違うのだ！ #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「いいなあ……その分私の知らないあの人をたくさん知ってるんだろうなあ……」 あの人？ あの人だあ？！ クソガキの分際であの人だ？！ 私の敬愛する提督をあの人呼ばわりだ？！ 小さく呟いたつもりだろうが、そうはいかない。やはりガキはガキ。きちんと一から教育を―― #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「あの……大鳳さん。もう１つお聞きしてよろしいですか？」 この期に及んでまだ何を聞くととと。あ、駄目。もう駄目だ。もう我慢出来ない。 もう無理。 こいつを、このクソガキの面を思いきり―― #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

　 「提督はどのような女性がお好きなのでしょうか？」 　 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

その瞬間。 「あ、あの！べ、別にその……」 一気に潮が引くように。 「特に……意味があ、あるとかではなくですね……あの……」 私の中から怒りが消えていきました。 #朝潮の蝶

大渡　鴉@ミント母の息子 @oowatarikarasu

「ふ、ふふ。」 「？　大鳳…さん？」 「フフフフフフ……うふふふふふ……。あははははははははは！！！あははははははははは！！！」 「た、大鳳さん！？ど、どうしたんですか？」 「あはははは……あーおかしい……フフフ」 #朝潮の蝶