艦々これ#2

艦これSSその2。 続きました。
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あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「那珂ちゃんがセンター? やったぁ!」  島外遠征を担当する第二艦隊の旗艦には、川内と同型の那珂を充てることにした。  工廠の妖精達が川内型の艤装に慣れているので、同型で回す方が効率的なのだ。  本来なら予備戦力として第三艦隊も編成した方がいいのだろうが……。 #knknkr

2014-07-03 16:41:03
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 残念ながら、三艦隊十八隻を同時に運用するだけの余裕はこの泊地にない。  弾薬はもちろん、艤装の整備や艦娘の休息が十分に行えなくなる恐れもある。  しばらくは二つの艦隊を交替しながら運用していくことになるだろう。  時機を見て港湾設備の拡張にも取り掛からなければ。 #knknkr

2014-07-03 16:47:02
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「ご主人様、電文ですよ」  秘書艦の漣が紙切れを手に執務室へと入ってきた。  近隣の鎮守府へ出向いている大淀からの連絡だ。 「『近日中に離島間定期輸送あり、派遣求む』……遠征任務の依頼ね」  さっそく手を回してくれたようだ。ひとまず艦娘達を召集するとしよう。 #knknkr

2014-07-03 16:55:15
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「――任務内容は輸送艦隊の護衛よ。ルートは地図の通り。一週間以上かかるから、旗艦以外は往路と復路で交替してもらうことになる」  集めた艦娘達の殆どは、外洋での作戦経験がない。  哨戒任務ではせいぜい隣の島まで往復する程度だ。  案の定、不安げな表情の子が多くいた。 #knknkr

2014-07-03 17:02:15
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 まあ、航路は幸いにも島伝いだし、大型の敵が入り込める海域はない。  そこまで危険度の高い任務ではないだろう。 「割り当てはこちらで決めておいたから確認しておいてね。質問は?」  問い質すと、おずおずと手が挙がった。 「あの……ずっと、監視し続けるのでしょうか?」 #knknkr

2014-07-03 17:09:12
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「護衛には他所の艦隊もつくからその必要はないわ。休憩を挟みつつ任務にあたって頂戴」 「じゃあ待機艦もいるってこと?」 「輸送艦隊の管理する船舶が一隻宛がわれることになっているわ」 「お風呂は……」 「さすがにそこまではわからないわ。配慮はしているでしょうけど」 #knknkr

2014-07-03 17:15:24
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「――ふう」  説明と編成の確認を終え、執務室のソファにもたれる。  質問攻めにあって、初めて後方の兵站に関してはあまりにも無知だったと気付かされた。  こうして提督として指揮を執るようになった今も、『艦娘は前線で戦うもの』という観念に引きずられている。 #knknkr

2014-07-03 17:20:21
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 燃料がなければ軍艦は動けない。弾薬がなければ火砲は使えない。  当然のことなのに、戦っていた当時はまったく理解できずにいた。 「それも当然か。だって私は――」  気が付けば、声に出して自嘲していた。  傍らにいた漣は首を傾げていたけれど、仕方のない事なのだ。 #knknkr

2014-07-03 17:26:01
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 軍艦とは、戦うために生み出されるものだ。  そして実戦を経験し、戦火の中に命を散らし、また生を受けたのが艦娘だ。  けれど私は、戦いを知らないまま沈み、艦娘として蘇った。  事故ではなく、国同士の政に翻弄された末、『あの戦争』を見ずして前世を終えた艦なのだ。 #knknkr

2014-07-03 17:30:25
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「漣、貴方は『あの戦争』でどんな生き方をしたの?」 「あー。それ訊いちゃうんですか」  尋ねる私に、漣は少し不機嫌な表情を向けてきた。 「ちっとも面白くないですよ。あっちこっち駈けずり回って、最期は潜水艦に魚雷ぶつけられてズドン、ですから」 #knknkr

2014-07-03 17:37:51
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 どうりで妖精達に対潜装備の開発をやたらと要求しているわけだ。 「もしかして、『あの戦争』について興味があるんですか?」 「そう、ね。私の知らない出来事だから」  私の記憶にはなくて、彼女達だけが知っていること。  知りたい一方で、相手のタブーだとも理解している。 #knknkr

2014-07-03 17:43:05
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 だから、これ以上は触れるのも無しだ。 「ごめんなさい、嫌な質問だったわね」 「何、気にすることはない。なーんて」  ……よくわからないのだけれど。 「あ、えーっと……ちょっとご主人様には伝わりにくかったかな?」  バツが悪そうに視線を逸らす漣に、安心感を覚えた。 #knknkr

2014-07-03 17:50:33
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 第二艦隊を遠征に送り出してから数日。  書類に目を通していると、急に執務室の電話がけたたましくベルを鳴らした。 「もしもし」 「大淀です。至急、第一艦隊に召集をかけて頂けますか」  どうやらよくないことが起きたらしい。  受話器を置くなり、私は部屋を飛び出した。 #knknkr

2014-07-03 17:55:59
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 五十鈴、阿武隈と数隻の駆逐艦からなる防衛部隊と非番の艦娘を島に残し、待機艦に島の主力を乗せた。  その間にも大淀からは状況の詳細が送られてくる。 「輸送艦隊は輪月島内に退避、第一艦隊は湾の開口部を封鎖し敵と交戦中、とのことです」  艦橋に逼迫した漣の声が響く。 #knknkr

2014-07-03 18:02:06
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 輪月島というのは、航空写真での見た目から名が付いた小さな無人島だ。  島の中央が円形の湾になっていて、その周囲を取り巻くように岸壁が反り立っている。  たしかに籠城しやすい場所だが、輸送計画の航路からはかなり外れている。  一体何があったというのだろう。 #knknkr

2014-07-03 18:06:44
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「敵は二個艦隊相当、司令塔と思われる未確認種を含め十三隻からなる中規模部隊だそうです」 「発見した艦隊が応戦したものの歯が立たず、航路を外れて避難したのね」 「その通りです。戦艦や空母も複数いるとのことですが、どうします?」  当然、救出に向かうだけだ。 #knknkr

2014-07-03 18:12:06
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「状況は聞いての通りよ。まともに撃ち合えばこちらに勝ち目はないわ」  第一艦隊の面々を集めた私は、救出作戦前の会議を始めた。  悠長に構える時間はないが、焦って被害を増やせば元も子もない。  まずは策を見出さなければ。 「夜を待って奇襲を仕掛けるのはどう?」 #knknkr

2014-07-03 18:16:11
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 真っ先に川内が手を挙げた。  確かに、夜間強襲をかければ相手に肉薄し損傷を与えることはできるだろう。  だが、相手も同じことを考える筈だ。  消耗を承知で籠城艦隊に夜襲をかけ、殲滅に出てもおかしくない。  二面作戦が可能な戦力を相手にこの賭けは無謀すぎる。 #knknkr

2014-07-03 18:24:03
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「それなら、敵を釣ってその隙に脱出させるのはどう?」  陽炎の提案も悪くはない。妹達もその案に賛成している。  しかし、こちらは水雷戦隊、相手は主力に匹敵する戦力だ。戦力比を冷静に判断し、一部のみを迎撃に出す可能性が高い。  残りを挟撃で叩いても撃破は難しい。 #knknkr

2014-07-03 18:30:27
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「めんどーだから、みんなして一斉に突っ込めばいいじゃん」 「それこそ愚策よ」  自棄気味の望月に、陽炎が肩をすくめて言う。  こうしている間にも、刻一刻とタイムリミットは迫っている。それなのに――。 『提督、大淀ですが』  突然、艦内のスピーカーから声が響いた。 #knknkr

2014-07-03 18:40:37
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「今忙しいのだけれど。大体、貴方はどこから放送を――」 『詳しいことは後にしましょう』  問いを無視して大淀は話を続けた。 『先ほど、近隣の鎮守府より艦隊が出撃しました。二時間ほどで海域に到着するでしょう』  というと、金剛達か。巫女装束と艦型艤装が思い浮かぶ。 #knknkr

2014-07-03 18:45:56
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

 いつも執務室にまで上がってくるのは金剛だけなので、他の艦娘とはほとんど面識がない。  しかし、彼女達が鎮守府の主戦力であることは知っている。 『とはいえ、一艦隊では対処は難しいでしょう。提督は彼女達と協同し、敵主力殲滅と退路の確保にあたってください』 #knknkr

2014-07-03 18:51:21
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「承知しました。それで、大淀さんは?」 『私はこちらで指揮を補佐します。それと――失礼、受話器を取っていただけますか?』  そこで放送は途切れ、スピーカーが沈黙した。  私にのみ伝えることがある、そういうことか。  鳴り出した電話の前で、私はしばらく逡巡した。 #knknkr

2014-07-03 18:57:45
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「もしもし」  艦娘達を追い出し、私は決心して受話器を取った。 『船内格納庫、四番艤装の札』 「言った筈よ。私はもう艦娘として戦うことはないと」 『万が一、貴方の力が必要となった時の切り札です』   『私も望みはしません。『公には存在しない』艦隊のものですから』 #knknkr

2014-07-03 19:11:27
あっきぃ。@いろいろつぶやくやつ @akkiy_ya

「HEY、提督ゥ! また会ったネ」  陸地以外で顔を合わせるのはこれが初めてだろうか。  待機艦の脇を進む彼女はいつもの軽い口調で甲板上の私に話しかけてきた。 「敵には空母もいるらしいわ。艦載機の襲撃には注意して」 「それは提督達も同じではありませんカー?」 #knknkr

2014-07-03 19:17:34