文字屋『言の葉』

#空想の街 参加の文字屋『言の葉』の簡易まとめ。
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九夜月 @kuyaduki1006

「あ、ああ、文字屋をしているんですよ。普段は人の肌に文字を書いてちょっとしたまじないをかけています。まあ、応用でこんなことも」懐から紙を取りだし、【雀】と書くと、雀が声をかけてきた女性の頭に飛び乗った。 @hrsrh_a #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 16:43:25
ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

今度は紙から雀を出して見せた男に、思わず絶句する。「…すごおい」目を丸くして彼女が呟いた。「何か御用ですか?」尋ねる文字屋の男に雀を乗せたまま彼女が首を傾げて。「例えば、不泣って書いたら、どうなりますか」 @sui_haku #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 16:50:41
九夜月 @kuyaduki1006

「【不泣】ですか?」影銘は彼女を見つめた。誤魔化しはしない主義だ。「肌に残っている間は涙はでないでしょう。だが、悲しみは感じます。文字が消えた後で倍の反動が来る」ゆっくりと説明する。「泣くのは我慢しない方がいい」 @hrsrh_a #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 16:56:44
ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

男の言葉にはっとして、彼女は顔を伏せた。「ごめんなさい」眉を下げて笑う彼女の手を静かに握る。「馬鹿なこと聞くから」「馬鹿って何よ」睨む彼女を無視して、文字屋に頭を下げた。「正直に言ってくれてありがとうございます」 @sui_haku #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 17:01:17
九夜月 @kuyaduki1006

「こちらこそきついことを言って申し訳ない。お詫びと言ってはなんだが」影銘は紙を取りだし、今度は【守】と書くと二人に一枚ずつ手渡した。「御守りに。一度なら災いを代わりに受けてくれる」役にはたたないだろうが、気持ちだ。 @hrsrh_a #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 18:18:28
ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

「お礼だなんて」慌てたものの、真摯な表情を見ると断った方が失礼になるかもしれない。「ありがとう」紙を握って微笑んだ彼女の横で、僕も小さく微笑んだ。「ありがとうございました」 @sui_haku #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 18:32:42
九夜月 @kuyaduki1006

「じゃあ」色々と嫌な思いをさせてしまったかもしれない後ろめたさか、影銘はそっけなく呟いて頭を下げるとその場を去った。店に来たわけではないのだから優しい言葉を言えば良かったと思う。 @hrsrh_a #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 19:16:29
九夜月 @kuyaduki1006

だが、何かを禁じてもそれは意味がないのだと、昔言われた事があった。今でもそれが胸に刺さっているから、禁じることはしない。もうかすれかけた記憶の中で、彼女が笑んでいた。 @hrsrh_a #空想の街 #文字屋言の葉 #黒山春樹の氷涼祭

2014-07-06 19:19:25
九夜月 @kuyaduki1006

風船が飛ぶ。涙雨が降る。毎年決して風船を持たない影銘は、それでも風船を見送り、涙雨に濡れる。「あんたを呼ばないことを恨むか?」空に問うても答えはない。忘れてはいない。だが忘れないでいることはしないだけだ。流れのままに生きること。それだけが約束。 #空想の街 #文字屋言の葉

2014-07-06 20:14:07