空想の街　黒山春樹の氷涼祭

萌葱［moegi］ @hmoegi

@hrsrh_a 「こんにちは」呼ばれて振り返ると、男性と女性が一人ずつ、興味深げにこちらを見ていた。きっと目立ってしまったのだろう。小さく笑って帽子を傾け、挨拶とともに自己紹介。「こんにちは——私は #色売り です。なにか色をお探しですか」#空想の街 #黒山春樹の氷涼祭

ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

「色売り？」「小瓶の中の色、お好きなものをお売りします」そう言って見せられた小瓶の中には、きらきら渦巻く色が満ちていた。「すごいな…」「綺麗ね」小首を傾げて彼女が色売りさんに言う。「青色はあるかしら？深く澄んだ湖底の色」　#空想の街　#色売り　#黒山春樹の氷涼祭 @hmoegi

萌葱［moegi］ @hmoegi

@hrsrh_a 「湖底の青色ですね」籠の中で色とりどりの小瓶たちが、陽を撥ねて煌めいている。「 #空水底 （そらみなそこ）か #澄瑠璃 （すみるり）などいかがでしょう」淡い水色と深い瑠璃色を並べた。透明感のある、水由来の色二つ。 #色売り #空想の街 #黒山春樹の氷涼祭

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並べられた二つの小瓶に、彼女の目がきらきらと輝いた。「素敵！」「どっちにする？」「選べないわよう」ちろり、と彼女が横の僕を見た。「はるはどっちがいい？」やっぱり。「…#澄瑠璃 かな」「よし、決まり！両方くださいな」　#空想の街　#色売り　#黒山春樹の氷涼祭　@hmoegi

萌葱［moegi］ @hmoegi

@hrsrh_a 「ありがとうございます」コインを受け取り小瓶を二つ手渡した。「水由来ですから、揺れると色も揺らいで綺麗ですよ。蓋を開けると周りが少し、静かになるかもしれません。湖底のようにね」揃って頷く可愛らしい二人に、幸せあれ。 #色売り #空想の街 #黒山春樹の氷涼祭

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「へえ。静かになる、かあ」「すごいわね」料金を払い、色売りさんに手を振って、僕らも歩き出す。「ほんとだ、揺らすと色の濃さが揺れるね」青空に翳すと、空に水面の青がきらきらと反射した。　#空想の街　#色売り　#黒山春樹の氷涼祭　@hmoegi

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「次はどこへ行こうか」「そうね…ってあれ？」「どうした？」立ち止まった彼女の視線の先に、難しい顔の男性が立っている。「道に迷ったのかな」「さあ」「どうしました？」近づいて声をかけると、少し驚いた顔をされた。　#空想の街　#迷夢　#黒山春樹の氷涼祭 @chabashira_okki

春が待ち遠しい @chabashira_okki

唐突に声を掛けられ、俺は分かり易く飛び退いた。何せ視線は液晶に釘付けだ。蜘蛛の糸を掴めば何としてでも登り切りたいのが人間の性だろう。恐る恐る視線を上げる。それは、人の形をしていた。 「人間だ……なあおい、本当に人間か？」 #空想の街 #黒山春樹の氷涼祭 #迷夢 @hrsrh_a

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奇妙なことを言う男性に、僕らは揃って顔を見合わせた。「僕も、彼女も人間だけど…そっちは違うのかい？それとも人外を探してるとか？」心なし、彼女を背中へ庇う。庇われた彼女の目が好奇心に溢れているのは無視だ。　#空想の街　#黒山春樹の氷涼祭　#迷夢 @chabashira_okki

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「よせ、人外は真っ平御免だ……なあ、この顔に見覚えあるか？ ここは何処だ、あんたたちは、何処から来た」 必死の形相で俺は自分の顔を指差す。女の方は浴衣。風船。人間。出で立ちこそ同じだが、相手はこの街によく馴染んでいる。 #空想の街 #黒山春樹の氷涼祭 #迷夢 @hrsrh_a

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「何処からも何も…」再び顔を見合わせる。混乱しているらしい男は必死で、少しやつれても見えた。「ここは街。僕はここの出身だし、彼女もそう。あなたとは会ったのも喋ったのも初めてだ。…大丈夫かい？」　#空想の街　#黒山春樹の氷涼祭　#迷夢 @chabashira_okki

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「――そうか、そっかそっか」 不意に笑いがこみ上げてきた。すべての退路を断たれた。冷静に考えれば目の前の二人に頼らずとも退路など幾らでも存在する可能性はあるが、俺はこの時、吹っ切れてしまったらしい。額に掌を当て、頭を振った。#空想の街 #黒山春樹の氷涼祭 #迷夢 @hrsrh_a

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頭を振る男はまいってるようにも気が違っているようにも見えて、心配と警戒心が湧き上がる。「もしかしてあなた、記憶がないの？」僕の背中から彼女がひょいっと顔を出す。そういえば”顔に見覚えあるか”って言ってたな。　#空想の街　#迷夢　#黒山春樹の氷涼祭 @chabashira_okki

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「ああ、その通りさ。ここに来てから、パーソナルな情報がなにひとつ思い出せないんだ」 俺は溜息を吐き、デバイスを巾着にしまった。 「紹介する名も無い上、取り乱してすまなかった。俺は役所へ向かうつもりなんだ。あんたたちは？」 #空想の街 #迷夢 #黒山春樹の氷涼祭 @hrsrh_a

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少し落ち着いたらしい男性に、僕は警戒を緩めた。どうやら悪人ではないらしい。「僕らは氷涼祭に…って、ああ」氷涼祭も知らないのか。彼女が言葉を添える。「年に一度、死者を迎えるお祭りよ。中央区に出店が出るの」　#空想の街　#迷夢　#黒山春樹の氷涼祭　@chabashira_okki

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アーティの言っていた「祭」とは、彼が口にした氷涼祭の事だろう。凍えそうな名も、死者を迎えるにお誂え向きと言える。中央区は役所のある区域だ。どうにでもなれ、満喫するだけしてしまおう。 「成る程、全貌が見えてきた。感謝する」 #空想の街 #迷夢 #黒山春樹の氷涼祭 @hrsrh_a

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「いや、僕らはなにもしてないし」「お兄さん、街を歩くならこれも持って行ったら」彼女がひらり、と男性に何かを渡す。「これは？」「この街のタウン誌。お店の情報も、地図も載ってるから。便利よ」　#空想の街　#迷夢　#黒山春樹の氷涼祭 @chabashira_okki

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「ありがとう。参考にする」 「どういたしまして」 彼女がふわりと笑う。それがやけに眩しく、俺は潔癖を装い、視線を男の方に戻した。 「先を急ぐよ。世話になったな」 「いいって」 ひらひらと手を振る彼らに、俺も手を振った。 #空想の街 #迷夢 #黒山春樹の氷涼祭 @hrsrh_a

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役所へ向かう男に手を振ってふうっと息を吐く。警戒は解いたつもりだったけど少し緊張していたらしい。「大丈夫かしら、あの人」心配そうな彼女の手を取って彼を見送る。「この街は安全だし、親切な人も多いし」「そうね」 @chabashira_okki　#空想の街　#迷夢　#黒山春樹の氷涼祭

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「…銀氷だ」「銀氷ね」立ち止まって、きらきら光る氷の粒を眺める。「綺麗だね」「うん」繋いだ手を彼女がぎゅ、と握って、驚いて隣を見る。空を見つめた真面目な顔からは、彼女が何を考えているかは分からなかった。空に目を戻して、僕も手に力を込めた。　#空想の街　#黒山春樹の氷涼祭

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「だいぶ人が増えてきたなあ」「にぎやかでいいじゃない」「そういう意味じゃないよ」「分かってるわよ」並び始めた出店に、すっかり機嫌を直して彼女は笑った。お祭り好きの体質は、死んでからも変わらないらしい。　#空想の街　#黒山春樹の氷涼祭

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「あ、ねえあれ」「なんだい」ぐいっと腕を引っ張られて慌てて顔を上げれば、彼女の指す先に看板があった。「風船を飾り付け？」「はるの風船、藍色だけじゃ目立たないでしょ」「目立つ必要はないと思うけど」「すみません！」　@_kumoyuki_ #空想の街　#横峰写真館　#黒山春樹の氷涼祭

雲行き＠空想の街 @_kumoyuki_

「はいはい、こんにちは！マスキングテープのワークショップはこちらですよ」声をかけてくれたのは一組のカップル。「普通のマステもあるし、幅広のマステを自分で好きな形に切り取って貼るのもオススメですよ」 @hrsrh_a #空想の街　#横峰写真館　#黒山春樹の氷涼祭

ハラ@企画用アカウント @hrsrh_a

「どうする？」こちらを覗き込む視線を避けながらむっとして答える。「僕がこういうの苦手なの知ってるだろ」「私も得意ではないけど…藍色だし夜空とか」「なるほど」金と銀、白のマステを受け取って☆の形に切ることにした。　@_kumoyuki_ #空想の街　#横峰写真館　#黒山春樹の氷涼祭

雲行き＠空想の街 @_kumoyuki_

「夜空のモチーフなんですね。風船放しの時に夜空に浮かぶ風船、その中に更に夜空があるなんてとってもロマンチック」 あまり器用そうではないけれど、作業に集中する様子はとても微笑ましい。 @hrsrh_a #空想の街　#横峰写真館　#黒山春樹の氷涼祭