キタユキ（@k_t_y_k）氏の #加賀さん観察日記 2014年 7月分

キタユキ @k_t_y_k

そういえば伊勢に伝えたいことがあってきたのですが、結局また二人で組手に戻ってしまい、言えずじまいでした。まあ後でもいいでしょう。とりあえずあと3人、重要事項を伝えないといけない人物がいます。もっとギリギリの方がプレッシャーにならなくて済むんでしょうけど。 #加賀さん観察日記

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玄関をくぐると、ロビーのソファに大和が腰掛けていました。 「あら、提督ではありませんか。丁度いいところに」 傘を差したまま大和は立ち上がり、しゃなりしゃなりと歩み寄ってきます。 「私の方からお知らせしたいことがありまして…まずは、これをどうぞ」 #加賀さん観察日記

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渡されたのは分厚い茶封筒。中を覗くと大量の書類が入っているようでした。 「彼の人、並びに彼方の鎮守府に所属する艦娘についての“全て”です。敵を知るにはまず味方から。ですが味方はもう知り尽くしてますので、直接調べてきました。これで、こちらの勝ちは決まったも同然」 #加賀さん観察日記

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そう告げられた時、丁度目についた真っ赤な紙を一枚取り出したところでした。幸い、英語で読めませんので、すぐさま封筒に戻し、地面に叩きつけます。 「いらないと？凡ゆるゲームにおいて、ボスの情報を掌握しておくのは攻略の鍵でしょう。それとも、攻略本は見ないタイプで？」 #加賀さん観察日記

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大和は笑います。粗相をした子供を宥めるような、自分が正しい方向へ導いてやろうと言いたげの笑顔です。 ふざけんな糞大和。こんなセコい手使ってまで勝ちたいかよ。プライバシー侵害もいい加減にしな。ココ大丈夫ですか？ 自分のこめかみを指で指し、大和に見せつけます。 #加賀さん観察日記

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とにかく、これは処分だ。胸糞悪い。 「貴女なら上手く使えると思ったのですけどね。大和、哀しい」 しおらしく首を傾ける大和。全く悲しげでないその表情に、怒りすら湧いてきます。 「とにかく、試合、楽しみにしていますよ。大和の出番も、あるといいのですけどね」 #加賀さん観察日記

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「ご主人さま、このクソ暑い中焚火とか、ココ大丈夫ですか」 雨なので玄関先の屋根の下で書類を燃やしていると、漣がやってきました。両側のこめかみを指さし、頭を小刻みに揺らします。 「あと、燃やすならシュレッダーしてからの方がいいですよ」 #加賀さん観察日記 #加賀さん観察日記

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話半分に頷いていると、風邪引かないでくださいね、とだけ言い残して漣は鎮守府に入っていきます。 自動ドアが閉まった後は、雨が屋根を打つ音と、紙の燃える音だけがそこに居て、互いに干渉せず、定められた方向へ鳴り響いていました。 缶の中で、紙が黒ずみ縮みます。 #加賀さん観察日記

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昔のこと、今のこと、自分の記憶のどこまでが正しくて、どこまでが混ざってて、どこまでを知っていてどこまでを知らないのか。鎮守府にきてからのこと、来る前までのこと、思い返そうにも底が見えず、掘れば掘るほど深みに落ちていくような気分です。あまり考えたくないのですが。 #加賀さん観察日記

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大和が相手側の資料を持ってきたということは、あの性格ですし、マイアミの方に接触してる可能性も十分ありえます。元々ゴーヤは、武蔵や大和の仲間。過去にあった云々があちらにもあるかもしれませんが、だからといってこちらが悪用していいわけがありません。 #加賀さん観察日記

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まあ、考えたところで一介の人間がどうこうできるわけでもありません…とりあえず、あちらに大和の無礼を謝るのが先決です。ただ、戦闘前にメディアの目が入らないところで謝らないと面倒になります。ゴシップは糞で鬱陶しいだけです。 こっそり菓子折りでも送っときましょう。 #加賀さん観察日記

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燃やした後を片付けて、執務室に戻る。初夏の蒸し暑さは影に潜み、雨の肌寒さがそこかしこを包んでいた。加賀は、いつものようにベッドに寝そべっていた。大きな掌の中には文庫本がすっぽりと収まっており、一定のリズム、そこそこの速さを伴ってページがめくられていく。 #加賀さん観察日記

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加賀は時間が空くと、本を読む。執務室に居るときは猫のように丸くなっているだけだが、自室に戻ると本の虫になるらしい。この前買い与えた本はあらかた読み尽くしてしまったようで、指の間から見えたのは自分が旅行の暇潰しにと買ってそのまま机にほったらかしていたものだった。 #加賀さん観察日記

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おもむろにベッドに腰掛け、面白いか、と尋ねた。加賀はめくるリズムを崩さない。背中越しに、「ええ」と短い答えが返る。少し間を置いてから、「読んだの」とも。 読んだことは読んだが、面白くはなかった。やたらと人が死ぬ話で、巷では感動巨篇らしい。安いカタルシスだな。 #加賀さん観察日記

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加賀に背を向けたままスマートフォンを弄っていると、紙を擦る音が絶え、本が閉じられた。ほぼ同時に、腰の辺りに温かみが増す。 読んだのか。 目は画面に向けたままの問いかけに、くるる、と喉を鳴らす音がする。ちらりと見ると、加賀は背に背をくっつけ寝そべっていた。 #加賀さん観察日記

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「そういえば試合、いつなの」 来週で話を進めている。 「そう。また、あの子はと戦えるのね」 加賀の首元に手を伸ばし、顎を人差し指でくすぐってやる。加賀は気持ち良さそうに目を細めるが、視線は遠く遥か、己の好敵手へと向けられている。 マイアミ最強の重巡、羽黒。 #加賀さん観察日記

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前回の演習で、加賀は彼女と闘った。改二も何もない時代、それでいて彼女は重巡の枠に収まらない戦闘本能と、計り知れない暴力衝動を余すことなく加賀にぶつけ、加賀もそれに応えた。互いに“ケッコン”状態ーー兵器としてのリミッターを外され、無限の殺意と再生力を兼ね備えて。 #加賀さん観察日記

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めちゃくちゃ強くなってるらしいがな。 「知っているわ。うちにいる羽黒の様子を見ていたら、大体は予想がつく」 お前も改二、くればよかったのにな。 「無い物ねだりしても仕方ないの」 それもそうか。 顎から唇に手を移し、指でなぞった。熱い舌がちろりと先を舐める。 #加賀さん観察日記

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…アラームが鳴る。スマートフォンを触って止めると、液晶は6時をほぼ一周した数字を示していた。窓は少しへりが濡れている。蒸し暑さに我慢ならず、夜中に開けたのを忘れていた。原因の熱源は横でまだ寝息を立てている。もう片手で頭を撫でると満足そうに鼻と喉を鳴らす。 #加賀さん観察日記

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寝てる加賀はそのままに、食堂へ向かった。朝方も雨だったのだろう、外では誰も練習をしていなかった。虫だけがちりちりと鳴く。静かだ。1年前を思い出す。あの時の死にかけていた状態に比べれば、随分回復したものだし、随分余計な知恵を吹き込まれたようにも思う。 #加賀さん観察日記

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食堂の扉を開けると、広いヴァイキングホールには自分と先客以外誰もいなかった。 「おはよう。早いのね」 黒塗りのヘルメットの横に似た色の缶コーヒーを置き、矢矧は長いポニーテールを揺らす。 さっき帰ってきたのか。 「ええ、仕事が長引いて。私は大和達と別行動だから」 #加賀さん観察日記

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ゴーヤの後始末か？ 「まあ、そんなところなんだけど…他にもやることは沢山あるわ。貴女に関することでね」 矢矧は再び缶コーヒーを口にする。人間一人の記憶を漁るのに、大掛かりでご苦労なことだ。 「本当、馬鹿馬鹿しくなるわ。だからさっさと終わらせてほしいのよ、私は」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「前は最長で半年もかからなかったのに、貴女には1年も付きっ切り。二人が何を考えているのか、下の私が知る由もないけれど」 一際大きく顎を上げて、飲み終えた缶を握り潰す。スチールの円マーク。蜜柑の皮でも丸めるように、小さく手の中へ収まって行く。 「全部貴女次第よ」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

善処しますよ。 「そうして欲しいわ、でないと」 矢矧は机に缶を戻す。軽い音を立てるそれは、ティッシュと見間違うほどにくしゅくしゅになっていた。 「私の残業代、貴女に払ってもらうから」 身体でか？ 「それも悪くないわね。吊るしてサンドバックにしてやろうかしら」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

笑いあっていると、スマートフォンが突如鳴る。着信相手には810とだけ数字が出ている。非通知ではないらしい。誰だ。 通話ボタンを押すと、一瞬画面が暗くなる。ビデオ通話。机に置いて、映るのを待つ。矢矧の訝しげな顔を見るに、こいつらの関係者ではないらしい。一体誰だ。 #加賀さん観察日記