キタユキ(@k_t_y_k)氏の #加賀さん観察日記 2014年 7月分

艦これ二次創作、#加賀さん観察日記 のまとめになります。今月より他鎮守府とのコラボ開始。さて、どんな血の雨が降るのでしょう。
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キタユキ @k_t_y_k

プロペラ音。モーター音。エンジン駆動。 上空は機械の唸りを上げる黒雲が覆い、次第に滲み広がっていきます。 「やべぇ烈風だ!撃たれっぞ!」 「言わなくてもわかってるってー!」 息を切らしながら走る二人。先頭の機体が降下を始めたのは、建物に入るのとほぼ同時でした。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 07:35:18
キタユキ @k_t_y_k

さて、押さえのなくなった暴徒達ですが、皆我先にと鎖を千切り雪崩れ込みました。 「陸奥うううあぶぶべ」 「ぴぎゃっ」 しかし群衆の頭上へ踊り出た烈風の群れが、鉛の雨を降らせます。雨粒は柔らかな皮膚を貫き、内臓を食い破って跳ね回り、一面に血の泥水を巻き上げます。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 07:41:07
キタユキ @k_t_y_k

鉛の雨に濡れなかった人々は、倒れた肉塊を傘代わりにして建物を目指しますが、烈風の後ろからは彗星、流星と今度は爆弾と魚雷が降り注ぎます。人々の中には艦娘も混ざっていますが、対空は十分でないらしく、人も地面もどんどん穴だらけになり、炎が吹き上がります。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 09:29:43
キタユキ @k_t_y_k

爆弾にも魚雷にも掛からなかった運の悪い生き残りは、流石に危険と判断して足を引きずったり、よろめきながら来た道を引き返していきますが、いくら問屋が卸しても、雷たちには通じません。 「この距離ならスポット(観測)しなくていいわね?」 雷の問いへの返答は、銃声です。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 13:30:47
キタユキ @k_t_y_k

「うのなんかよりこっちの方がずーっと楽しいっぽい!」 夕立はスナイパーライフルを軽々と構え、散り散りに逃げる背を撃ち抜いていきます。 「同感ですぅ」 綾波も同じく対物ライフルを肩に構えーー駆逐艦でも肩への負担は相当のはずなのですがーー次々と放っていきます。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 13:35:36
キタユキ @k_t_y_k

ライフルの銃声が響く中、空を埋め尽くしていた艦載機の群れは集団で上空で渦を巻きながら旋回していました。まるで瀕死の獲物が死ぬのを待つ禿鷹のように、ゆったりと速度を落としてぐるぐる、ぐるぐると残党の一掃を見守っています。 「くそ真面目なやつ」 雷が一人ごちます。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 13:45:14
キタユキ @k_t_y_k

「先輩、撃たれてないっすか」 「平気、摩耶は?」 「横カスッたけど、何ともないっす」 入口の屋根の下、摩耶は自分を気遣う長良に頬の擦り傷を見せながら、撃ち殺される人々をしたたかに見つめました。 「あそこまでやる必要あんのかよ…」 摩耶の吐く唾は血混じりです。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 13:49:23
キタユキ @k_t_y_k

同刻、空を渦巻く艦載機を見つめる、一人の空母がいました。加賀です。鎮守府の屋上で身じろぎ一つせず、じっと艦載機を見つめています。風が強く、サイドテールが顔の横ではためきます。 そうして暫く渦を見つめていた加賀ですが、銃声が鳴り止むとそっと目を閉じました。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 14:03:27
キタユキ @k_t_y_k

するとどうでしょう、黒雲となって旋回を続けていた艦載機達が、一斉に加賀の居るところ目掛けて針路を変更し始めたではありませんか。加賀は艦載機の群れを前にしてもなお、目を閉じ立ち尽くしたままです。次第に黒い殺し屋の群れは加賀に迫り、そして二つに波が割れました。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 14:05:48
キタユキ @k_t_y_k

ばらばら、ばらばらと豪雨のような音を立て、烈風も彗星も流星も、皆等しく細い一本の矢に戻り、コンクリートに散らばります。それだけでなく、何束かは互いにくっつきあって一本の矢になり、100を優に超す艦載機達は数分もしないうちにたった三本の矢に纏まってしまいました。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 14:08:19
キタユキ @k_t_y_k

加賀は目を開き、生きて動くものの気配が消え失せたのを肌で感じながら、玄関を見下ろしました。初夏の初々しい緑が敷かれた前庭は見る影もなく、血と臓物と脳漿の弾けた澱みで黒ずんでいます。焼け焦げるタンパク質の匂いが風で煽られ、加賀の鼻腔をくすぐりました。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 17:25:20
キタユキ @k_t_y_k

「練習?」 後ろから呼びかけられ、加賀は振り向きました。からから、と三本の矢が風で転がっていき、呼びかけた相手の、艦首を象った靴先に当たり、靴の主はそれをそっと拾いあげました。 「ええ」 加賀のサイドテールも、矢が向かったのと同じ方向へ靡きます。 #加賀さん観察日記

2014-07-07 17:32:25
キタユキ @k_t_y_k

「楽しみね」 白い手が三本の矢をなぞり、艶やかな黒髪は風を受けて舞い上がります。 「はじめちゃん、」 「名前では呼ばない約束よ、“赤城”さん」 加賀が猛禽の目で睨むと、赤城は微笑みました。 「誰も聞きませんよ」 「忘れたの。私達の一挙一動、記録されていること」 #加賀さん観察日記

2014-07-07 17:49:25
キタユキ @k_t_y_k

「忘れるもんですか。もう一万と…何回目でしたっけ。ずーっとここにいるもの」 赤城は腕を広げました。後ろから鴉が飛び立つように、長い髪がうねります。 「ずーっとここにいて、ずーっと大人の人達に見られて。この先もずーっと ここで繰り返されていく。ずーっとずーっと」 #加賀さん観察日記

2014-07-07 17:55:50
キタユキ @k_t_y_k

「ねえ、はじめちゃん。はじめちゃんは平気なの?はじめちゃん、私がここに閉じ込められてから5000と260回後にきたけれど、飽きてこない?どうしてこんなことをしているか、分からなくならない?自分が誰か忘れそうになったり、自分が誰か伝えられなくて苦しくならない?」 #加賀さん観察日記

2014-07-07 18:05:00
キタユキ @k_t_y_k

「…私は、特に何も」 「ほんとに?」 目を伏せて俯く加賀を、真下から赤城が覗き込みます。いつの間にか距離を詰められていたにも関わらず、加賀は表情を崩しません。 「ねえはじめちゃん、覚えてる?私達が生きてたとき、一緒にユニバ行こうってゆうちゃんを誘ったの」 #加賀さん観察日記

2014-07-07 18:23:31
キタユキ @k_t_y_k

「そんなことも、あったわね」 赤城と目を合わせないように加賀は一歩引きますが、すぐに赤城は一歩詰め寄り、彼女の唇に人差し指を当てました。 「だめだよ。そんな他人事みたいに言っちゃ。ちゃんと覚えてるでしょ?一体誰が、最初にゆうちゃんを誘おうって言い出したか」 #加賀さん観察日記

2014-07-07 18:33:53
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