黒猫シャノワールと別れと出会い

脩生 @amenote07

とらん、とろん。ドアが開く。「いらっしゃいませ」僕が振り返るとそこには人の影が二つ。ようこそ、絵本屋へ。ゆっくりして行って下さいね。二人は顔を見合わせてから僕を見る。「えっと…どうしました？」 #絵本屋さん #空想の街 #黒猫 @ce1039

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

やっぱり分からんか。まぁ当然じゃな。猫の姿に戻れば一発じゃろうが、また服を着るのは面倒くさい。でもこれを見ればどうじゃ？わっちは頭の猫耳をピクピク動かし、尻尾をフリフリ振った。そして極めつけに「にゃおん」と鳴く。#絵本屋さん #空想の街 #黒猫@amenote07

脩生 @amenote07

「…えっと」僕は驚きと嬉しさで一瞬止まる。「シャノ…？」人の姿ではあるものの、この耳と尻尾は見覚えがある。そして、この声。「嬉しいよ。また来てくれるなんて」頬が緩んでしまうのが分かる。シャノとの久しぶりの再開だ。@ce1039 #空想の街 #絵本屋さん #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「くく、驚かせてすまんの、脩生。今回は訳あって人間の姿をしておるが、正真正銘のシャノワールじゃ」わっちは尻尾をくるりを回して言った。「あ、紹介しておこう。こやつはあずきじゃ」そう言ってわっちは隣のあずきを指さした。「あずき？」@amenote07 #空想の街 #黒猫 #絵本屋さん

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

脩生が驚いておる。無理もないじゃろう。あずきなんていう名前は滅多にないからな。「滅多にないっていうか、それ本名じゃないですからぁ」あずきが恥ずかしそうに反論。「え？本名じゃない？」脩生はますます混乱。「朝倉たつきといいます」@amenote07 #空想の街 #黒猫 #絵本屋さん

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「そうじゃったな」「シャノさん、ヒドイです。初対面の人にまで言うなんて」「くく」「朝倉たつきさん…で、あずき？」「そうじゃ。最初と最後を繋げてあずきじゃ」この際『”あつき”じゃないの？』というツッコミは無しじゃ。#空想の街 #黒猫 #絵本屋さん @amenote07

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「今回寄ったのは他でもない。前回のお礼と、またお願いがあっての。ほれ」とわっちはあずきの背中を押した。「あ、あの、息子を探してるんです。歳は７歳。黒髪で、背は私の腰ぐらいなんですけど」「どうじゃ？何か情報はないかの？」#空想の街 #黒猫 #絵本屋さん @amenote07

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

絵本屋を出て、目指していた中央区に向かう。 「息子じゃったな。名はなんという？」絵本屋の話を引き継いで話す。「こうちゃんです」「こうちゃん？”こう”という名前なのかや？」「うん。光って書いて”こう”っていうの」「そうか」さぞかし可愛いかったじゃろうな。#空想の街 #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「お主、伴侶はどうした？」「え？ああ、主人ですか？主人も一緒に…です」「そうか。それは悪いことを聞いたの」愛する人と愛する人の間に生まれた子を同時に失うとはどういう気持ちじゃろう？それに比べたら、まだ姉さまが生きてる見込みがあるわっちは幸せ者じゃな。#空想の街 #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「よし！景気づけに浴衣を買おう！」「おー！」とあずきは拳を突き上げるが。「そういえばお主、手ぶらじゃがお金は持っておるのか？」「え？持ってない…」そんなんで浴衣が欲しいとか言っておったのか！「まぁ良い。こんな機会でもないとわっちもお金を使わんからの！奮発じゃ！」#空想の街 #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「え？いいのシャノちゃん？」わっちには以前にこの街でわた飴屋として働いた時のお金がある。猫でいる時も首からぶら下げていたんじゃが、この機会にパッと使ってしまおう。どうせこの街でなければ使えないお金じゃ。「さっきのタウン誌に割引券があったじゃろ？それで大丈夫じゃ」#空想の街 #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

悲しいことは悲しいし、もう元には戻らない。 なら顔を上げて未来を見るしかないじゃろう。 あずきはそれができる子じゃ。ならわっちはそれを精一杯応援して協力するのみ。 今回も姉さまのことでくよくよしていたが、あずきの明るさと奔放さに助けられてるの。 #空想の街 #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

そうして中央区に着いた。中心に時計塔。あの時計塔には姉さまを探すためによく登ったものじゃ。街全体を見渡せるから良いが、７歳の息子を探すのに上からでは埋もれてしまって見えないじゃろうな。今回も地道に行くか。そんな風に時計塔を見上げていると。芳しい匂いに誘われる。#空想の街 #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

出店が並んでおる！「浴衣を着る前に何か喰うかや？」と一応あずきに聞いてみるが、わっちの目線は出店に釘付けじゃ。「私は食べないけど、シャノちゃんが食べたいならいいよ」そんなあずきの言葉もよそに出店を物色していると、微かに「ぴゃー」という声がした。#空想の街 #黒猫

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「ぴゃー」という声は微かに下の方から。あずきに「何か聞こえたか？」と聞いたがあずきは何もという。でもわっちの自慢はこの耳。空耳であるはずがない。しゃがんで見てみると、そこには震えてる小さい何かがいた。#空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険 @000plankton000

みじん子 @000plankton000

変わらず中央広場。これからどうしよう。考え事をしながら進んでいたみじんこは…やはりというべきでしょうか、誰かに踏まれてしまいました。「ぴゃー！」「何じゃこやつは…！」驚いて声を上げたら、同じように驚いた声が降ってきました。 @ce1039 #空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「ちょ！お主、大丈夫かや！？」わっちは踏んでしまったそやつを助けようとしたが、力の加減がわからぬ。つまんで潰してでもしたら大変じゃ。「どうしたの？」とあずきが聞いてくるのであずきに任せた。@000plankton000 #空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「こやつはどうすればいいかの？」あずきに聞くとあずきはそれを覗き込んでうまいことつまみ上げた。さすが赤子を育てたことのある手じゃ。力加減が分かっておる。「君は…虫さん？」とあずきがつまみ上げたそれに聞く。@000plankton000 #空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

みじん子 @000plankton000

驚いた声を上げた男の人と、もう一人女の人がいました。みじんこは、女の人の手によって持ち上げられました。「君は…虫さん？」女の人の質問に、みじんこは宙ぶらりんになりながら叫びました。「ちがいます！　みじんこは、みじんこなのです！」@ce1039 #空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「みじんこ？あずき知っとるか？」「みじんこは海の生き物だよ」「海か。水は苦手での」そんな風に会話をしていたら、どうやらみじんこは勘違いをしておるようじゃ。「踏まれたショックもあるかもしれんが…わっちは女じゃぞ？」@000plankton000 #空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

みじん子 @000plankton000

@ce1039 みじんこを踏んだ人は、男の人ではなくて、女の人でした。「わわ、ごめんなさい！　かっこいい　おしゃべりのしかた　だったので、かんちがい　しちゃいました…」逆さ吊りのまま謝りました。彼女は笑って許してくれたので、ほっとしました。#空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

みじん子 @000plankton000

@ce1039 二人はみじんこに名前を教えてくれました。みじんこを踏んだほうがシャノワールさんで、拾い上げたほうが、あずきさん。シャノワールさんが本当は猫だというのも教えてくれました。「すごいです、みじんこも　おおきくなって　みたいなあ…！」 #空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

咲良 潤　#言の葉の点綴 @sakura77_sosaku

「海の生き物はとてつもなく大きいものもいると聞くが、みじんこはどれぐらい大きくなるんじゃ？」「みじんこってそんなに成長しないんじゃないの？」「そ、そうなのかや？」まぁわっちにも知らない事はあるわいな。@000plankton000 #空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険

みじん子 @000plankton000

@ce1039 二人がみじんこの大きさについて話しています。「きっと、たくさんたべて　たくさん　ねむったら、いまより　もっともっと　おおきく　なるのです！」胸を張って答えたみじんこでしたが、あずきさんは、こっそりと苦笑いをしていました。#空想の街 #黒猫 #みじんこの冒険