バイト君とJKちゃん

勢いで書いてる。
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雨介@レインメイカー @amesuke_1121

不足感とでも言うのだろうか。 クラスの人数が少ない気がする、と言う生徒が増えた。 担任教師も常に3枚分余剰にコピーをしてくるなどのミス……と言えばミスが増えた。 他クラスの生徒が見ても、年度始めに撮った集合写真に違和感を感じるようになった。 #創作

2014-11-20 08:15:03
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

出席番号を間違える生徒が増えたり、教室が何となく広く感じたり――…… やがて、神隠しだ、と誰かが言い出した。 その噂は駆け巡り、やがて当事者の3人組はノイローゼになって、不登校になっていった。 3人のうち、1人は唯一、こう漏らしたと言う。 #創作

2014-11-20 15:38:21
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

「あそこへは、6人で行った気がするんだ」 #創作

2014-11-20 15:39:09
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

噂は町にも広がり、やがて所有者の分からないその森に入る者はいなくなった。 学校も危険性の高い場所として、生徒達に森へ入らないよう呼びかけた。 今は勇気ある誰かが勝手に張ったと見られる2本のトラロープが森の外周を1週して立ち入りを禁じている。 #創作

2014-11-20 15:51:35
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

バイト「不良も入らないような、この森に入ったのか。」 JK「……(コクン」 バイト「……、何で。」 JK「その前に、思い出して欲しいことがあります。 あなたなら思い出せるはず。」 バイト「?」 JK「何で1人で暮らしてるのにコップを2つも持ってるんですか?」 #創作

2014-11-20 16:00:32
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

バイト「は? ――予備だよ。」 JK「コップだけじゃなく、様々な日用品が2つずつあるの何でですか?」 バイト「――予備。」 JK「歯磨き粉、刺激度合いの違う2種類がありましたよね? 本当に予備なんですか?」 バイト「間違えて買った……んだったと思う。」 #創作

2014-11-20 16:11:47
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

JK「あなたの家、2部屋ですよね? あなたはリビングにしている方で寝ている。 何故もう1つの部屋を使わないんですか?」 バイト「それはあいつの、――違う、その方が使い勝手がいいから。」 JK「月5万の家になんで学生でアルバイトのあなたが住んでるんですか?」 #創作

2014-11-20 16:16:07
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

バイト「それは、」 JK「学生でアルバイトだと、月5万は高過ぎませんか? そのクセ、ワンルーム状態で生活してる。 ……何故あの部屋を選んだんですか?」 バイト「それは、あいつと折半するから――……」 JK「……あいつとは、誰、ですか?」 #創作

2014-11-20 23:01:11
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

バイト「――……待ってくれ。 お前、俺の家族を、連れ出しておいて、置き去りにしてきたって言うのか。」 JK「………。」 バイト「いつだ。 いつ、あいつをここに置き去りにしたんだ。」 JK「……1週間前です。」 バイト「――――ッッ!!!」 #創作

2014-11-21 07:35:36
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

JK「正確に言えば、この中です。 この沼の中に落ちたんですよ、彼女。 すぐに助けようと飛び込んだのに、あの子はどんどん沈んで、指も見えなくなって。 沈みきった瞬間に潜ったのに、もうどこにもいなくて、私、わたし、息の続く限り潜って探したのに、底がなくて、見つからなくて。」 #創作

2014-11-21 07:45:22
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

JK「あの子はもうどこにもいなくて、肝試しに誘ったこと、凄く凄く後悔して、私が落ちれば良かったって。 警察に行ったらね、すぐ学校に連絡がいったの。 だけどね、先生達あの子のこと知らないって。 噂は本当だった。 この森じゃない。 この沼に落ちた人が、神隠しに遭うのよ」 #創作

2014-11-21 07:54:24
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

JK「だからね、私、この沼のこと調べ尽くしたの。 あの子を助ける方法は簡単だった。 わたしが堕ちればいい。」 バイト「落ちる? お前があいつの身代わりに?」 JK「……だからあなたをここに連れて来た。 この沼の神隠しは、荷物を遺すから。 住所と鍵はここから。」 #創作

2014-11-21 08:00:32
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

バイト「それは、あいつの鞄……」 JK「生徒手帳の緊急連絡先で住所とあなたの名前を知った。 この鍵で、あなたとあの子の家に入られた。 あなたの顔は知っていた。 あの子がいつも話してたから。」 #創作

2014-11-21 08:11:35
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

バイト「俺は、何のために連れて来られたんだ?」 JK「あの子を、この沼から救い出すために。」 バイト「……だから、俺にあいつを思い出してもらう必要があったのか。」 JK「そう。 この沼から神隠しに遭った人を助け出すには最低でも2人いるの。」 #創作

2014-11-21 08:18:11
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

JK「2人とも、神隠しに遭った人を覚えていることを前提として、1人は沼から引きずり出す要員。 もう1人は、身代わり。 身代わりはね、誰にでもなれる訳じゃない。 神隠しの被害者のことを強く、強く想える――」 #創作

2014-11-21 08:22:20
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

バイト「……は」 JK「お願い、あの子のためなの。」        「代わって」 #創作

2014-11-21 08:25:24
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

胸に強い衝撃。 俺の足が地面から離れる。 何でだ。 彼女が落ちるんじゃなかったのか。 俺が沼から救い出すんじゃなかったのか。 落ちる? 救い出す? ――ああ、そうか。 そこまで考えた時、俺が落ちたにしては、ひどく小さな水音がした。 #創作

2014-11-21 08:36:58
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

水中にいる感覚はなかった。 どこまでもゆっくりと落ちてゆく。 重力に従うように、俺の体は頭を下にし緩く半回転して、黒い空間に落ちる。 黒の中に、ぽつりと白い点が見えた。 落ちて行く俺とは逆に、黒から浮き上がって来るその白い物は、紛れもなく、俺と人生の大半を共にした―― #創作

2014-11-21 17:25:40
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

俺が1週間もの間、薄情にもすっかりと忘れていた――妹の顔だった。 きっと、浮き上がった先であの女子高生が待っているのだろう。 俺がお前を忘れていたように、お前は俺を忘れるのだろう。 教えてくれ。 俺はこれからどうなるんだ。 この黒は一体、どこに繋がっているんだ―― #創作

2014-11-21 17:35:51
雨介@レインメイカー @amesuke_1121

妹「――……、あれ?」 JK「ああ、起きた」 妹「……? あたしどうしたんだっけ……?」 JK「沼に落ちたの。 すぐ引き上げたけど、気を失ってて――、もうちょっと起きなかったら、救急車呼ぼうと思ってた。」 JK「良かった。 起きてくれて。 良かった……。」 #創作

2014-11-21 17:42:29