【超常科学NVL OCCULTIC;NINE】Twitter連載
荒い息をつきながら見上げた僕に、りょーたすは流し目でウインクをして、持っていた拳銃を自身の口元に寄せた。それはとてもレトロなデザインの、銃口に球体がくっついてるような、オモチャの光線銃で。
2014-07-28 22:31:26直後、彼女はぐいっと顔を僕の方に近づけてきた。 そして至近距離で、銃口にフッと息を吹きかけた。その吐息は、なんだか桃みたいな甘い香りがして、ドキドキしてしまった。
2014-07-28 22:32:04僕を上からのぞき込むようにして、触れるほどの距離まで迫ってきた彼女の澄んだ瞳。夕日を背負ってるから陰になってるはずなのに、そのときの僕にはキラキラと輝いているように感じた。
2014-07-28 22:32:40あまりにキレイで、瞳の中に吸い込まれちゃいそうな気がして、息をするのも忘れてしまって。気が付けば、痛みも、汗も、引いていた。
2014-07-28 22:33:04りょーたすのオッパイの感触を忘れないうちに反芻していると─── 「りょーたすは!」 嬉しそうに微笑んだ彼女は、僕の頬を優しく撫でて、こう告げた。 「ガモタンの、使い魔だよぉ!」 それが、自分のことをりょーたすと呼ぶ不思議な少女――成沢稜歌との初めての出会いだった。
2014-07-28 22:33:55あの日以来、りょーたすとはほぼ毎日のように会っている。 でも、あのときりょーたすがどこから現れたのかとか、ポヤガンって一体なんなのかとかは、いまだに謎のままだ。
2014-07-28 22:34:32一番分からないのは、なんで僕みたいなニート神と仲良くしてくれるのか、なんだけどね。 まさにミステリアスにして不思議ちゃん。これぞギャルゲー。 だがかわいければすべて良し。りょーたすマジ天使。
2014-07-28 22:35:08そんな天使との待ち合わせ場所である学校の屋上に出ると、痛いくらいの冷たい風が僕の頬を撫でた。 成明高校の中でも、四階建ての中高中央館は唯一屋上へ出ることができる校舎だ。
2014-07-28 22:35:50こんな真冬の寒い日に屋上を待ち合わせ場所に選んだのは失敗だった。僕ならこの寒さを理由に、待ち合わせなんかほったらかしてさっさと帰っちゃったかも。
2014-07-28 22:36:20でも、ミステリアスにして不思議ちゃんであるところのりょーたすは、誰もいない屋上で金網の柵越しに、眼下へ向けてポヤガンの引き金を引いていた。 風の音に交じって、「いししゅ!」なんていう意味不明なかけ声が聞こえてくる。
2014-07-28 22:37:11「りょーたす!」 声をかけても反応しない。ポヤガンを撃つのに夢中になっている。もちろん撃ってるフリなんだろうけど。あれ、実際に銃口から光線が出るわけで、ヘタすると銃刀法違反でしょ。しょっちゅう撃たれてる僕の身にもなってほしい。
2014-07-28 22:37:58っていうか、ポヤガンを撃たせるためにここで待ち合わせしたわけじゃないんだけどなあ。 ため息をつきつつ、僕は吹きさらしの屋上へと足を踏み出した。 りょーたすの横に立って、周囲の景色を眺める。
2014-07-28 22:38:29そこに見えるのは、成明学園の全景だ。小学校から大学までが同じ敷地内に密集してる。ええと、敷地の広さはどれぐらいだったっけ。東京ドーム三個分ぐらいはあるって聞いたことがあったような。それが広い方なのか狭い方なのかは、いまいちよく分かんないけど。
2014-07-28 22:39:10すぐ真下には桜並木。でも今は当然ピンク色の花は咲いていない。あと一ヶ月以上待たないと。その木々の下を、下校していく生徒たちがぞろぞろと歩いている。 奥にある大きなグラウンドや野球場では、運動部が練習している姿が確認できた。このクソ寒い中でよくやるよ。
2014-07-28 22:40:08右手に目をやると、成明大学の校舎群が並んでいる。そのさらに向こうにあるだろう吉祥寺駅前の街並みは、その校舎群に阻まれて見えなかった。 「いっし☆」 りょーたすはグラウンドで練習する野球部員に向けて、しきりにポヤガンの引き金を引いていた。 野球部に恨みでもあるんだろうか。
2014-07-28 22:40:51でもこの距離じゃ、さすがにいつも僕が食らっているビリビリも発動しないみたいだけど。 「りょーたす? いつまでやってる気?」
2014-07-28 22:41:14よく見るとりょーたすの頬には、ほんのり赤味が掛かっていた。やっぱり寒いんだろう。コートすら着てないし。それを我慢してまでポヤガンでの狙撃に夢中になってるなんて。
2014-07-28 22:41:47風のせいで、セミロングの栗色の髪も乱暴に煽られている。制服のスカートだって裾がめくれて、あとちょっとでパンツが見えそうになっている。りょーたすはそんなこと気にも留めてないみたいだ。
2014-07-28 22:42:19「うむ、レア。マジでレア。りょーたすの貴重な制服姿は超スーパー激レアな上に――」 チラリと、その胸元を盗み見た。 他の女子とは比べものにならないくらいの、とんでもない膨らみだ。 「メロン! メロンが入っております! 熟れ熟れで甘々すぎる! 惜しむらくは乳袋じゃないことだね!」
2014-07-28 22:43:25なんにせよ、りょーたすとこうして学校で会うことなんて滅多にない。学年も違うし、家がどこかも僕は知らない。リア充じゃない僕にはりょーたすに「一緒に帰ろうよ」と誘うような真似もできない。
2014-07-28 22:43:53キリキリバサラの活動のためにカフェ☆ブルゥムーンで集まるときだって、各自勝手に集合って感じで、時間も決めてない。
2014-07-28 22:44:13りょーたすはブルゥムーンに来るときは決まって私服だ。制服は絶対に着てこない。家が近いから学校から一度帰宅して着替えてきているんだろう。
2014-07-28 22:44:41りょーたすの私服のセンスは今風とは言えない。よく言えば大人っぽい。いまいちな感じで言えば、古い。とにかく今どきの女子高生の流行からはちょっと……いや、かなりズレてる。
2014-07-28 22:45:15