稲川淳二のつぶやき怪談　2014年7月30日投稿分

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「首吊りね。じゃあそんな感じでお願いね」 「はいっ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

今度は、また、別の人に、 「あんたは、何で死んだの？」 「あの、凍死です」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

さっきも言ったとおり、着てるの夏服なんですよね。 「まあいいかー、しょうがない、それでいこうかー」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、また、別の人に、 「あんた、何で死んだんだ」 って、聞いた。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「え？　僕ですか？　うん、何で死んだって。あの僕ね、電車飛び込みです」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

電車なんかないんだ、樹海にはね。 まあ、そうこうしているうちに、始まったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うう～～～」 俳優さんが、呻ってる。 と、意外と皆きれいなんですよ、声がね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うううう～～～～」 って、きたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんなに、悪くはないんです。 でも、若手の俳優がきて、言うんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「稲川さん、何かみんな、ちょっと声、高いですよねぇ、 もう少し、こう何かしっくりくる声が、欲しいですよね」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うーん、それもそうだね」 そうなって、で 「よーい、はいっ」 って、始まったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、そん中に 「ヴーーーッ…」 って、声が入ったんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

あ、いいんじゃないの、と思ったんですよ。 雰囲気は、いいんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

誰か、言ってる。 「ヴーーーッ…」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ところがね、よく聞いてみると、それ、なんか違うんだな。 みんな、俳優さんは、こちら側にいるんですがね、 どうも、違う場所から聞こえてくるようなんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

カメラが３台あるんですが、 その内のひとりと音声さん、私、と何人かが、声のする方を向いてんだ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

要するにね、撮影している方とは、違うところから、声がしてるんですよ。 俳優たちじゃ、ないんですよね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「えっ？」 と、思って、 距離からいうと、おおよそ５０メートルくらいじゃないかな、 そのあたりから、声がしてるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

夜中ですよ。 「えぇっ！？」 と、思った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

もしや、と思ってね、 そのシーンが、カットになったんで、行ってみたんだ、ひとりで、トットトットと。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

明かりがないですからね、 我々が、ロケをしてるところから、照明が少しもれて、わかるくらいです。 この辺だったよなぁ、と思った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

するとね、落ち葉が、ばさーっと地面にね、 もうほとんど、地面が見えないくらい、覆いかぶさってんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

この辺だったよなぁ、と思って、ヒョイッと見たら、 葉と葉の間にね、妙なものが、パッと出てるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

スパッと切った、まるで根っこのようなものなんです。 何だろうと思ってね、手を伸ばして、取ってみたんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

とりあげて、驚いたなぁ。 匕首（かまくび）って、ご存知ですか？ 短刀。 その柄なんですよ。