ウィアード・ワンダラー・アンド・ワイアード・ウィッチ #2

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ねえ、ツルギ=サン、何かいいアイディアは無い?」ホリイが問う。「クラタ・メイジンか、その弟子たちと、少しでいいから話をしたいの」「話すだけなら簡単だ。腕のタトゥーを見せりゃ、ヤクザもギャングも、大喜びであんたを捕まえて檻の中に入れるだろ。そんなのがいいのかい?」「まさか」 45

2014-08-03 00:57:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ならヤクザになるか、ギャングになるかだ。ヤクザ事務所には弟子たちが何人か、あとギャングの地下施設にはクラタ・メイジンが捕われてるって噂だ」「ヤクザかギャングに?無理でしょうね」「ああ、そうだろう。答えは、とっとと出て行くことさ。薄情と思われても仕方ねえがよ」老人は言った。 46

2014-08-03 01:04:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ホリイは溜息をついた。急げば追跡者をまけるかもしれない。だが何処へ逃げる?彼女は無力で、カラテ段位も無く、他に信頼できる友も恩師も居ない。口座も凍結された。八方塞がりだ。…ここで、彼女はジェノサイドの言葉を思い出す。「アマクダリ」「アマクダリ?」「ツルギ=サン、知ってる?」 47

2014-08-03 01:11:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「旦那も、おっかねえ声で言ってたな。…アマクダリ……セクト…。ああ、そうだ。思い出したぜ。旦那にも同じ事を聞かれたんだ。で、知らねえと言ったら、忘れろと言われたのさ」「成る程ね」ホリイは何度も頷いた。寝室でのジェノサイドの言葉……彼だけが何かを知っている。アマクダリの事を。 48

2014-08-03 01:20:18
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……うっかり口車に乗せられて、口にしちまったぜ。旦那には黙っといてくれ」ツルギ老人は脇腹を掻きながら言った。酒場の奥をちらりと見るが、幸い、まだジェノサイドは死体めいて硬直したままだった。「言わないわ」ホリイが返す。 49

2014-08-03 01:26:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((もしかすると、ジェノサイド=サンもアマクダリの敵……。だとすると、私が追われている経緯を話せば、彼は手助けしてくれるかもしれない……。でも、確証はどこにも無い……)))ホリイは思案した。「待てよ、そうだ、旦那だ……!」そのとき、ツルギが何か別のアイディアを思いついた。 50

2014-08-03 01:31:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「安全にギャングの一味になる方法があるかもな」ツルギが言った。「旦那をヨージンボーにしようと、ギャングが交渉に来た。あの調子だから、返事はしてねえし、あの性格だから、断ると思うがよ。交渉したいって言やあ、旦那はギャングの施設に入れるだろ。ゲイシャなら一緒についていって当然だ」51

2014-08-03 01:37:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私の状況を話して、一緒に連れて行ってもらうって事?」ホリイが問う。可能性はある。だが危険を冒しても、出来る事といえば、檻越しにメイジンと話ができる程度だろう。その価値はあるのか。またそもそも「問題は、旦那がそんな面倒くせえ頼みを受けるかどうかだけどよ」ツルギ老人が代弁した。52

2014-08-03 01:46:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それに、彼がギャング側についたら、均衡が崩れて、ストリートにまた戦争が…」「ああ、確かにそうだ」老人が額をぴしゃりと叩く。「これでヤクザの方からも話がありゃ、両方話を聞くだけ聞いて、勿体ぶって引き延ばせるんだがなあ。ミヤモト・マサシのコトワザにも、そういうのがあったんだ」 53

2014-08-03 01:52:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『ドッソイ!』不意に、酒場の電子呼び出し音が鳴る。こんな時間に誰が。「ちょっと待っててくれ」ツルギ老人が訝しみながら、UNIX端末のところへサイバネ義足を引きずりながら歩いていった。残されたホリイは、フードをまた目深に被り、俯いた。ジェノサイドはまだ、固まったままだった。 54

2014-08-03 02:00:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カタカタカタ、カタカタカタカタ……閉店状態の薄暗い酒場に、IRCタイプ音が響き渡る。ツルギ老人と外の訪問者が、何事か対話しているのだ。少しすると、シャッターの隙間からマキモノがねじこまれ、訪問者は安堵の息をついて帰って行った。老人はマキモノを持ってカウンターに帰ってきた。 55

2014-08-03 02:05:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だったの」ホリイは不安そうだ。「ヤクザの交渉人だった。あいつら、ギャング団が交渉に来た事を知ってやがった。直接会わせろと言って来たが、こんな状態の旦那と会わせるわけにもいかねえ」とツルギ老人。「上で寝てるから、起こすと滅茶苦茶に怒って事務所に殴り込むぞと言ってやった」 56

2014-08-03 02:09:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「それで、どうなるの」「どうなるかは、旦那次第だ。旦那が動き出したら、話をするしかねえだろう。あんたと話をするうちに、このジジイもよ、腹を括ろうかと思えてきたんだ。旦那が来て、少しだけ平和になったが、それはこの酒場だけだ。結局、何かせにゃあ、この街は遅かれ早かれ死んじまう」 57

2014-08-03 02:16:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうね、話をする」ホリイは頷いた。彼女は知っている。彼はゾンビーで、しかもニンジャだ。怪物だ。だが昨夜、何の縁も無い、助けた所で何の得も無い彼女を、ジェノサイドは匿った。サルーンの寝室では彼女をひとりの人間として扱い、敬意を払った。「話をしなくちゃ」ホリイは老人に言った。 58

2014-08-03 02:25:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はジジイだからよ、どうしても一言多くなっちまう」老人は囁いた「解っちゃいると思うが、あんまり旦那の“コートの内側”について、どうこう言わねえ事だ」「解ってる」「ああ見えて、結構気にしてんのさ」「解ってる」「怒ってなけりゃ、意外と奥ゆかしいんだ」「解ってる」彼女は頷いた。 59

2014-08-03 02:32:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ウィアード・ワンダラー・アンド・ワイアード・ウィッチ】#2終わり #3へ続く

2014-08-03 02:35:08