「千の想いを」~最終章01「出撃」~
- mamiya_AFS
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艦これ二次創作 騙城式読者介入型ストーリー 戦う妹シリーズ第三弾『千の想いを』 最終章 01 『出撃』 開始 最終日 0630 第十五支援艦隊用出撃艦 介入制限 冒頭 夕張・常磐・間宮 のみ 見送りシーン 不問 後半 15隊・桑艦隊・同行者のみ
2014-05-24 19:58:43……ん。 …どこだっけここ。 もそもそと毛布から手を出して目をこする。身体が妙に痛い。壁際の固い長椅子で寝ていたのだから当然だわ。頭の位置を変えると、座ったままですーすーと寝息を立てているお姉の顔が目の前にあった。枕だと思っていたのはどうやらお姉のふとももだったみたい。
2014-05-24 20:09:02急速に冴えていく視界で辺りを確認する。 うちらの艦の談話室みたいね。他の長椅子で常盤が丸くなって眠っている。床では夕張が大の字で大口を開けたまま、シャツがめくれて露わになっているへその周囲をバリバリと掻いていた。女子力欠片も無いわね。 んー。どうしてここで寝ていたんだっけか…。
2014-05-24 20:12:32身を起こして床に足を下ろし、強張った身体をぐぐーっと伸ばす。こきこきと首を鳴らすと、記憶も段々霧が晴れていく感じがする。 毛布をお姉の肩に掛けると、隣のキッチンルームの方向からものすごくいい香りが漂ってきている事に気付く。間宮さんが朝食を作ってくれているんだと思う。
2014-05-24 20:16:42テーブルを挟んだ向かいでカップを傾けながら樫野が呟いた。自分でも不機嫌だとわかる目線を向けて、鼻を鳴らす。 「事情も話してくれないで、こんなとこに缶詰にされたら、新しいスキルの1つも身に付くわよ。全く…、もしかしたら人生で最後の夜と朝だったかもしれないのに…」 唸ってみる
2014-05-24 20:21:29言われた本人は反応の薄い目…というか目の下の隈がすごいんだけど、寝てないのこの子。悪態にたいした反応もしないで、あたしと目を合わせようとしない。 横目で壁に掛けられたカレンダーの方を見ながら、ずず…、と香ばしい何かを口に運んでいる。 思い出す。うーん…。悪いのはあたしだわこれ。
2014-05-24 20:25:28「はいはい、悪かったわよ。事情を話せるわけないわよね。あたしがまともな状態じゃなかったんだから」 寝て起きたら戻ってはいたけれど、昨夜まであたしは『持病』を発症させていた。覚えているのが歯痒い。お姉がずっと宥めてくれていたからマシだったものの、あの姿を仲間に見せたなんて…。
2014-05-24 20:28:43驚きの感情は欠片も見せずに、給兵艦娘が初めてあたしを見る。疲れと怒りとかがなんかごちゃごちゃ混ざっているような、そんな瞳があたしをぼんやりと射抜く。 「だからあんたがお姉に対してずっと喧嘩腰だったのも許してあげるわ。もう戻ったんだしいいでしょ、着替えくらい取りに行かせてよ」
2014-05-24 20:31:56樫野が目線であたしとお姉のいる椅子の端を指す。見てみれば確かに奇麗に畳まれて置かれているのはうちらの着替えだった。下着まで揃ってる。 「…部屋に入ったの?」 箪笥にしまった覚えのあるショーツを指先でつまみながら尋ねる。黒を持ってきたかー。そりゃ勝負すべき日だけどさー。
2014-05-24 20:35:05@tiyodadayo そこは覚えていないのか。いや、もう千代田は寝ていたっけな。 千歳からカギを借りて部屋にお邪魔したからね。姉のフェルト人形枕元にずらっと並べてんの千代田くらいじゃない?
2014-05-24 20:37:01……。 事実、樫野は千歳から手渡しで部屋の鍵を受け取り、見張りを夕張と常磐に任せて千代田の部屋へと赴いた。目当ては着替えの持ち帰り等ではなく、当然確認と探索だ。千歳が何かを企んでいるのは確信している。しかしそれが何なのかがわからない。いくつかの盗聴器以外成果は無かったが。
2014-05-24 20:39:58ほぼ丸一日かけて調べ尽くした。この艦全体、メンバー全員の武装、所持品、衣服に至るまで。だが、いつぞやに樫野の愚兄が犯した異変の時のような、悪意のある装置も奇妙な点も何も見付からない。その場で扶桑の危機を救った面子の1人でもある夕張も一緒に漁ったというのに、徒労に終わったと言える。
2014-05-24 20:43:49千歳本人も、言動におかしな点は見られなかった。子供そのものの千代田とずっと戯れているだけで、ただの妹想いな姉でしかない。用を足す瞬間以外には誰かしらが見張りに付いていた。 何を。千歳はこの出撃の最中に何をしでかすつもりなのか、全く見えない。 見落としている? だとすれば何を?
2014-05-24 20:47:53「ちょ、ちょっと! あたしの時と目も声も違い過ぎない!?」 千代田が足をばたばたと揺らして抗議の声を上げる。聞こえていないように熱い液体をすする樫野を見比べて、夕張が両手を上げて身体を伸ばす。ポニーテールはほどいており、肩までより少し長いくらいの灰緑色の髪が揺れた。
2014-05-24 20:51:27@kashinonanoyo @tiyodadayo んー…いや、大丈夫。夜更かしは慣れてるし。 …樫野こそ大丈夫?”アレ”の準備も含めてフル稼働じゃないの
2014-05-24 20:51:05@tiyodadayo ん、ああ。例の海域って航空機使えないって話したの覚えてる? アレの対策と、みんなの装備の準備をしたのよ。
2014-05-24 20:57:11「ほへぇ。そう言えばそうだったわね。それはお疲れ様だわ。夕張って何故か機械いじり得意だもんね」 千代田が納得し、すぐに興味を失ったようですぐ隣の姉の寝顔をじーっと見詰め始める。 なので夕張が微笑みながらも微かに瞳に哀しみを浮かべて事に気付かない。 樫野が小さく溜め息を吐いた。
2014-05-24 21:00:16