先日、この2つを呟きました。再掲します。 「屋代聡さん【誰が「歴史」をつくるのか/歴史叙述における主体と問題関心】」togetter.com/li/701164 「屋代聡さん【歴史学における史実の修正】」 togetter.com/li/701162
2014-08-09 00:55:37また続編として、これも述べておきました。 【肯定的に評価されるべき「歴史修正主義」と、その条件に関して】 twitter.com/yashirosatoru/…
2014-08-09 00:56:04そしてこれも。 【史料批判とは】 歴史学研究の上で欠かせない「史料批判」とは何か。研究者は何を考慮すべきか。日本の歴史修正主義者は何を見落としているか、について。 togetter.com/li/702957
2014-08-09 00:57:35わが国の困った「歴史修正主義者」は、ことごとく基本的な史料を無視できるのですが、それはなぜでしょうか。 バカだから? かもしれませんが(笑)、僕には、もう1つ大きな理由があるように思えます。
2014-08-09 00:59:0980年代以降に人文・社会科学にひろがった言語論的転回、ここに日本の歴史修正主義が90年代以降、跋扈するようになった一因が潜んでいる気がするのです。
2014-08-09 00:59:46ここでは言語論的転回について詳述を避けます。ただごくおおざっぱに言ってしまえば、すごーく単純化して言えば(だって細かく話せば連ツイ100じゃ足りない笑)、史料の真実性というものに絶対はないということです。
2014-08-09 01:01:29たとえばある貿易関連史料に「赤ブドウ酒1樽」と書いてあったとして、私たちは赤ワイン1樽が取り引きされたんだなと考えますが、そのさいに私たちが想定するのは、私たちが知っている赤ワインです。
2014-08-09 01:02:20しかしこの史料が作成された当時の赤ブドウ酒が、私たちの知る赤ワインだという保証はどこにもありません。 全く別のものをそう記したかもしれないのです。史料を残すことが1つの「解釈」に基づいているからです。
2014-08-09 01:03:20【史料批判とは】で述べたように、史料をいかに丹念に読み解いていっても、”100%客観的な真実”に到達することはできません。 だって史料に解釈という主観は交じっていますし、またこれを読みとく歴史家もいくらか(問題関心という)主観を有しています。
2014-08-09 01:05:06また普段、私たちも誰かと会話しているとき、2人は別物を指して話していたのに、妙に話が通じてしまう時があります。コミュニケーションとは表象作用、記号の解読行為、誤読の連続なので、どんな場合にも、そうしたことが起こりえます。 残存している史料も、そんな産物かもしれません。
2014-08-09 01:06:17過去に書かれた史料についてもそうならば、、書き手と史料と読み手の間に厳密な客観性が存在しないわけですから、史料から絶対的「真実」を読みとることはできません。
2014-08-09 01:07:08それゆえいかなる史料の読解に関しても、厳密にそこに書かれてあることは「真実」であるとはいえませんし、また真実かもしれないのです。史料と歴史家の間にあるのは、どこまでいっても1つの解釈にほかなりません。
2014-08-09 01:07:41問題はここからです。 あらゆる史料が事実を物語るとは限らず、書かれた言葉、語られた言葉が1つの解釈の表明、歴史=個々人の「物語」でしかないとすれば、ネトウヨ的歴史修正主義者は99の事例がある事件を肯定していても、それは「真実」ではないと言いだすでしょう。
2014-08-09 01:08:26もちろん歴史学のほうでは、歴史学は真実ではなく、蓋然性の高い仮説を提示するのがつとめであると開きなおってしまえば(間違いではありませんし)、言語論的転回を乗り越えるのはそう難しいことでもありませんでした。
2014-08-09 01:09:43【史料批判とは】で述べたように、私たち歴史家は、自らの提示したものが1つの事実だと考えていますが、唯一の真実と考えるほどイノセントではありません。
2014-08-09 01:10:22そしてまた、実は言語論的転回は認識論的研究、特に「記憶」研究の誕生と展開に大きな刺激を与えたので、大きな意義があったのです。
2014-08-09 01:10:44さて整理しておきましょう。 歴史学研究の進展による史実の批判的修正と、歴史修正主主義者の主張とでは、次の点が大きく異なります。
2014-08-09 01:11:33歴史学の史実の更新は ①過去にあげられた史料の包括的・総合的把握とその全てに関する史料批判がある。 ②細部は無論、そのことによって従来の研究成果、歴史像がどのように変わるか全体像をみている。 ③歴史とは歴史家の解釈によって示された1つの仮説、イメージであることを理解している。
2014-08-09 01:13:44④複数の史料をつきあわせて、最も整合的な史実を示すことができる。 ⑤歴史=物語であるにしても、過去に生きた人々が共有したであろう「事実」を明らかにするために、自分の主張に合わない史料こそ深く考察する姿勢を持っている。←これ大事。
2014-08-09 01:20:13一方、わが国の歴史修正主義者は、 ①全てにおいて史料批判を伴わない。 ②全体的、総合的把握ができずに細部のみにこだわる。 ③歴史=過去における真実と勘違いしている。
2014-08-09 01:21:01④種々の史料をつきあわせないから、蓋然性を考えることができない。 ⑤歴史=物語という発想を無意識的に持っているので、1つでも自分に都合のいい史料があると無批判に採用する。
2014-08-09 01:21:41