rsbs日誌#18

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　「スマナイ。暑イ日に」「構わん構わん。捕虜、保護者の面倒を見るのも指揮官の勤めじゃ。…そっちのタ級が、お前さんの知り合いか？」わしは対面に座る、白い悪魔ことタ級を眺めながら呟いた。「アア、私の古イ後輩だ…」わしは彼女にゆっくりと声を掛けた。

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#rsbs日誌　【何があったか、話してくれるかや？】深海棲艦の言葉で話しかけられ、驚くタ級であったが、唇を振るわせ始めた。【私は…怖い、思いをしました…先日の、嵐の事だった…艦娘と遭遇して、私達は戦った…いつも通り、真正面からぶつかり合って…戦いを楽しんでいた…そしたら…】

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#rsbs日誌　【相手の大きな、黒い戦艦の目が…血の様に燃え出した…そして…誰も彼も無差別に、攻撃し始めて…手が付けられなくなった…私達は撤退しようとしたけれど…彼奴は、仲間の声も聞かずに、追ってきたんだ…！とても、怖かった…あれは、なんだ？…まるで…生気なんて…なかった…】

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#rsbs日誌　わしはタ級の言葉をゆっくりと噛み締めながら、先日の事件を思い出しておった…タ級にしばし休む様に伝え、わしは内線で或る物を持ってくる様に伝えた。スタッフが現れ、わしに一冊のファイルを届けてくれた…わしはその中から、数枚の写真を取り出しテーブルに広げた…

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#rsbs日誌　【お前さんの見た、血の様に燃え出した眼と言うのは此れの事かや…？】其処に写っていた写真は、先日の炎天下の中で行われた演習の写真。そして、赤々と眼を光らせる金剛の姿があった。それを見て、タ級は狼狽し、過呼吸に陥り掛けた。ル級が彼女の背中を擦った。

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#rsbs日誌　【すまん、いきなりが過ぎたかや】呼吸を乱したタ級を察して、写真を仕舞おうとするわしの手を彼女はそっと制した。【何故、こんな物がある？】【先日、演習をした際に遭遇したのじゃよ。状況はお前さんの証言と全く同じ。敵味方を問わずに攻撃し、馬鹿力を振り撒いておった…】

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#rsbs日誌　【頼む。止めてくれ…あんな物とは、闘いたくない…あんな物のお陰で…私の知り合いや…友人まで…ぅ…ぅぅ…】泣き、咽ぶ深海棲艦をわしはゆっくりと見つめておった。【…こんな事は心外かもしれないが】ル級がタ級の背中を撫でながら紡ぐ。【我々にも、少しは拘りがあるのだ…】

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#rsbs日誌　【拘りかや…】【ああ…我々は無念の象徴とも言える。故にか全力でぶつかりたい。全開で戦い合いたいと願うモノはそう少なくは無い…彼女も私もそうだ。それが此の様な拉致外の物と遭遇したのなら…もう言わずとも判るじゃろう】【…そうじゃな】わしは腰を上げるとタ級を見つめた。

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#rsbs日誌　【暫し心を癒すがよい。ぬしが望むのであれば演習を組んでやろう。わしの艦娘は飛び切り戦闘狂いが多いでな。ぬしを楽しませてやれるじゃろう…ル級よ。後は任せた】頷くル級を見届けてわしは彼女の部屋を後にした。改異を祓わなくてはならぬ。さてはて…面倒な事になったのう…

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#rsbs日誌　わしは執務室で先日の暴走事件の詳細を確かめておった。行動、状況、艦娘本人からの事情聴衆。然し凡例が一件だけでは比較検討も出来ぬ。参ったのう…近隣の知人の提督に問うても此処辺りでは噂話程度にしか聞かぬかった。此れは本土の様に情報が集まる場所に行く他あるまい…

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#rsbs日誌　不意にパタパタと小走りで駆けてくる足音が執務室の外より聞こえて来おった。暫し間を置いてから、コンコンと扉を叩く音。「電報でーす。急ぎの物です」青葉の柔らかい声にわしは入れ。と促した。この暑さの中小走りで走った青葉のシャツは汗で透けておった。風邪を引くでないぞよ。

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#rsbs日誌　わしは暫し電報の文面を読んで…内線に手を伸ばした。青葉や。もう行ってよいぞ。「はい。失礼しました」ぺこりとお辞儀する青葉にわしはお駄賃の飴玉を手渡してやった。放送室かや？今から読み上げる艦娘を執務室に呼んでくれ。ああ、野暮用じゃ。

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#rsbs日誌　それから暫くして、わしらは機上の人となった。二式大艇改が二重反転プロペラを回して洋上を行く。「いったい何用なんだ？提督。速急に旅支度をしろと言われたが…」不思議そうに問う武蔵にわしは茶を飲んでから答えてやった。「わしの仕えておる帝からの呼び出しじゃよ」

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#rsbs日誌　「帝って…先日、提督が話してくださいましたあの帝様ですか…？」おずおずと問う比叡にわしは頷いてやった。「応。先日おぬしにくれてやった写真の御仁じゃよ。あちらに着いたら謁見じゃ」「帝様から直接…って…提督は凄いのですね…」「御使いと何ら変わらんよ。20はこなした」

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#rsbs日誌　日本本土、帝都…東京。わしらは帝の住む邸宅に来ておった。そう大きくはないが、荘厳な雰囲気を纏っておる。「御所では無いのだな…？」武蔵の問い掛けにわしは頷いた。「ちょいと訳ありで別居中なのじゃよ」邸宅の周りには警護の者が多く立っていた。完全武装の艦娘もおる。

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#rsbs日誌　わしは身分証明書と帝からの電報を手渡し照会を待った。「確認が取れた。入れ。粗相がないようにな」番兵らしい日向に指示を受けわしらは邸宅へと足を踏み入れた。やれやれ…堅苦しくて敵わぬ。「殺気が溢れすぎですね」ぽつりと比叡が呟いた。「狗なら狗らしく振る舞わないと…」

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#rsbs日誌　「おぬしも中々言う様になったのう」わしはクスクスと笑った。「帝様に仕えるならば従者もまた相応の振る舞いが必要だと思ったまでです」流石は元御召艦じゃなぁ。「よく来てくれた」声が投げ掛けられる。階段の上よりゆっくりと降りてくる少女が一人。わしは恭しく礼をした。

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#rsbs日誌　「お久しゅう。我が主」「堅苦しい言葉を使うな。息が詰まる…その武蔵が、件の艦娘か…」階段を降りきった少女が問う。「左様。アルストツカ海軍に保護された武蔵じゃ」「ふむ…顔をよく見せておくれ」突然の命令に暫し驚いた武蔵であったが、静かに前に出た。

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#rsbs日誌　「そう固くなってくれるな。私は帝などと呼ばれているが、こうして家を与えられて押し込まれているだけの少女に過ぎない。済まなかったな…我が海軍が何もしてやれなくて…」頬を撫でながら話す帝に武蔵は赤くなり、狼狽した。「いや…その、私は…」

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#rsbs日誌　「比良坂から貴女の無事の報せを受けた時は心からホッとした。一人でも我が国を守る為に我が国の防人と成った者が救われた。此れ程嬉しい事はない…」「…身に余るお言葉です」帝は小さく笑みを浮かべた。「私にもな…友人に艦娘が居るのだ…故に、気が気でない…」

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#rsbs日誌　「何時沈むとも分からぬからな。あの子は今も元気にしているだろうか…」「…貴女様がそう願い続ける限りは、恐らく」武蔵はぽつりと呟いた。「ほう？随分とあやふやな言い方だな？」「艦娘は機械ですが、半分は生身の人間です。故に、機械以上の事を成したりします…」「はははは！」

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#rsbs日誌　帝は笑った。腹の底から。「艦娘本人にその様に言われてしまえば信じる他あるまい！比良坂よ、お前の艦娘はまことに面白い子たちばかりだな」「滅相もない」わしはぽつりと短く呟いた。「さて、立ち話もなんだ。ひとつお茶を戴きながら話をしようではないか」

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#rsbs日誌　ラウンジに通されたわしらは銘々が椅子に座った。派手さは無いが一級品の調度品で飾られた部屋に武蔵は少々落ち着かない様で居た。「そうソワソワしないでくれ。我が家の様に寛いでくれて良い。とは言っても無理な相談か」帝はクスクスと苦笑しておった。わしは背凭れに身を委ねた。

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#rsbs日誌　紅茶と茶菓子を運んできた妙高と阿賀野を比叡と陽炎、不知火は見つめておった。ケッコン済み。改装済み。凄まじいオーラだった。「彼女らなら、気にしなくて良い。お目付け役兼護衛と言った感じなんだ」「無理矢理与えられた艦娘とは息苦しかろう」「無理もない」

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#rsbs日誌　帝は胸元から金の鎖を取り出した。そこには銀色に輝く指輪が幾つか繋げられて居た。「私には過ぎたものだ。彼女らの指は私の為にこんな柵を着ける為にあるのではないと言うのに…」「御守りする為です」妙高がぽつりと呟いた。「分かっている。早く役目が終わると良いな」