坂本龍一『戦メリ』を分析する(その5)

主旋律部分です。彼はどう曲を組み立てていったのかを解き明かします。
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It happens sometimes @ElementaryGard

「戦メリ」分析いきます。昨日ちょっと触れたのですが、改めて紹介。この曲の基本は、この響きです。この響きから発想された曲。youtu.be/gk-qiA9qsUg

2014-08-16 00:19:18
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下から順にファ・ファ・レ・ミの重なり。ファ(の和音)は浮遊感のある響きで知られます。そこにレとミの音が重なる。なぜレとミなのか?

2014-08-16 00:24:33
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この曲は映画『戦場のメリークリスマス』のテーマとして作られました。戦時中のインドネシアが舞台。日本人、朝鮮人(当時は日本の属領人)、オランダ人、イギリス人の軍人、つまり男たちが日本軍の捕虜収容所のなかで衝突するお話です。

2014-08-16 00:26:30
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予告編をどうぞ。 youtu.be/XTKJ_PWGfVs こういう感じの映画です。

2014-08-16 01:37:13
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東洋のような西洋のような、未来のような過去のような、どこの土地なのかよくわからない舞台。それを音楽で表現するならば浮遊感のあるファの和音がいい。そう考えたそうです。

2014-08-16 00:27:43
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インドネシアといえばガムラン音楽。金管楽器です。同じ旋律を何回も何回も繰り返し、陶酔感が生まれる。そういう音楽です。音階の基本はラ・ド・レ・ミ・ソ。いわゆる東洋音階とか五音音階とかいいます。

2014-08-16 00:29:21
It happens sometimes @ElementaryGard

youtu.be/AphKxQ2NsQo 映画『未知との遭遇』から。UFOとの交信に五音音階を使っています。スピルバーグは知ってたんですねこの音階が人類普遍である(とよくいわれる)ことを。♪レーミードード(1オクターブ下)-ソ

2014-08-16 00:34:14
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youtu.be/gk-qiA9qsUg 龍一先生は、和音はファを選んだ。旋律としてはレとミを骨格に選んだ。レとミはこの東洋音階に含まれる音です。インドネシアが舞台でビートたけし軍曹のどアップで終わる映画だから東洋音階が選ばれた。

2014-08-16 00:36:43
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ラ・ド・レ・ミ・ソのうちレとミが選ばれたのは、たぶんピアノでファの和音といっしょに組み合わせをいくつか鳴らしてみて、これが一番いいと思ったのを彼は選んだ。

2014-08-16 00:38:56
It happens sometimes @ElementaryGard

間をおかずに隣り合う音はドとレ、レとミの二つの組み合わせ。桜の花びらが舞い散るイメージを、隣り合う二つの音を交互に鳴らすことで演出できるんじゃないかという計算もあったような気がします。で、レとミの組み合わせが一番応用が効くと気が付いた。これは理論的理由です。詳細は後で。

2014-08-16 00:41:53
It happens sometimes @ElementaryGard

youtu.be/gk-qiA9qsUg ↑この響きをですね、今度は曲に展開します。つまり時間を挿入するのです。こんな感じに。 youtu.be/A98MLpZFoh8

2014-08-16 00:58:31
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どうでしょう「あ、なんだか聞き覚えがあるようなないような…」という気がしませんでしたか聞いてみて。

2014-08-16 00:59:12
It happens sometimes @ElementaryGard

和音はファ→ソ→ドと進んでいます。楽譜の下のパートのことです。これはⅣ→Ⅴ→Ⅰの進行といって、定石です。正しくは王道のなかの王道Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ進行を途中から始めたわけですが。

2014-08-16 01:01:20
It happens sometimes @ElementaryGard

ただですね、せっかく浮遊感のあるファの和音で始まったのに、ドの和音(Ⅰ)が出るとそこで落ち着いてしまうのです。起立→礼→着席の「着席」にあたる和音ですからね。せっかくの浮遊感が台無し。できればドの和音は避けたい。ならば代わりにどんな和音がいい?

2014-08-16 01:04:08
It happens sometimes @ElementaryGard

ラの和音があります。これはドの和音の代わりをよく務めることで有名な方です。ただし「着席!」と言い切るほどの圧倒的存在感はなくて、どこか気弱さがあります。「着席!…なんだけど」な感じの和音。要するに句点(。)ではなく読点(、)っぽい機能があります。

2014-08-16 01:07:19
It happens sometimes @ElementaryGard

先ほどのⅣ→Ⅴ→Ⅰ進行youtu.be/A98MLpZFoh8と聞き比べてみてください。youtu.be/bi909Ypi5Jg

2014-08-16 01:10:21
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It happens sometimes @ElementaryGard

どうでしょう文でいえば句点(。)が読点(、)になった感じがしませんか。一応「着席!」してるんだけど、引き続いて何か起きそうな雰囲気。

2014-08-16 01:12:26
It happens sometimes @ElementaryGard

旋律(楽譜の上のパート)もちょっと工夫してみましょう。 youtu.be/QjpUOMjEqG0 おや、どこかで聞いたような…

2014-08-16 01:16:26
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It happens sometimes @ElementaryGard

パトカーのサイレンみたいで味気ないので、リズムを工夫してみます。和の心を表現したい。ならば俳句のリズムなんていかがでしょう。 youtu.be/14GjyvA9sYg おおおお、それっぽくなってきました。

2014-08-16 01:21:55
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It happens sometimes @ElementaryGard

♪ふるいけやー、かわずとびこむみずのおと 感じでてます。和の心です。ただ最後の音符が気に入りませんね。なんかこう、腰が据わっていない。

2014-08-16 01:23:57
It happens sometimes @ElementaryGard

そこで旋律の最後の音符をいじって、ミではなくドにしてみます。 youtu.be/agE687DIkl0 あ、結句感がでました。これはいけそうです。

2014-08-16 01:27:09
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It happens sometimes @ElementaryGard

先ほどドの和音の代わりにラの和音を使うと話しました。そのほうが浮遊感を残しながら「着席!」感も出せるから、と。和音でこの微妙な着席感(結句感といってもいいかな)が出せるから、旋律は「着席!」感のあるドの音で締めくくってもいいかなーと思ってやってみたらうまくいきました。

2014-08-16 01:29:57
It happens sometimes @ElementaryGard

いかがでしょう龍一先生はこんな風に「戦メリ」を組み立てていったんじゃないかな、と思います。

2014-08-16 01:32:04