アサイラムVSマイアミ鎮守府 わくわく!合同演習! Part4
加賀の醸し出す存在感が、俺の周囲に満ちる。巨獣の印象が五感を通して俺の中に伝わってくる。この者は人を超えた存在であり、人である自分は、その超越者の前にあってはひどくか弱い。あの提督をすごいと思ったことは今まで一度たりともないが、今回ばかりは奴を尊敬する。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:08:39この空気感の中で、あの提督は生きてきたのだ。およそ常人には考えも及ばない世界だ。 -ネコ科の動物みたいなもんだよ。 あの提督なら事も無げにそう言うだろう。だが常人にとって、放し飼いの獣と暮らしを共にすること事態正気の沙汰ではない。ましてやそれと寝食を共にするなど。#艦これ航海日誌
2014-08-19 23:11:01うちの赤城の場合、躾の悪いバカ犬程度のもので、エサで飼いならされ野生もクソもない。すべての行動は予測できるし理解できるものだ。だがこの加賀においては、己の存在を他者の理解の範囲外に屹立させている所がある。理性の及ばぬ領域の生活者。それがこいつの獣たる所以である。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:13:47その加賀が口を開く。 「あの」 相手から何かを切り出すとは思わなかったので、しばしあっけにとられる。 「あの」 一息つく。「何か?」 「ええ、私から話をし始めたほうがいいかと思って」加賀はじーっとこちらを見る。考えの読めない目。 「すまないな」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:16:35「あなたは羽黒さんとしているの」 「何を?」 「セックス」 喉の奥でキンタマ汁が逆流しかける。 「言うに事欠いてそれかよ」 加賀は困惑する。 「ごめんなさいね」 「何故、そんなことを聞く」 「聞いたことがあるの。そういうのは好きな人同士がするものだって」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:18:26俺と羽黒がケッコンしているのは事実。同じ既婚の身としては多少気になる所なんだろう。だがそれにしても直球すぎる。 「私はあまり意思表現も得意ではないから、もしかすると不愉快に思ったかもしれないわね」 俺はマスクの奥で苦い顔をしながら、 「まあ、いいさ」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:22:31「俺はしていない。ケッコンの前も、後も」 「では、好きではないの」 また答えづらい事をあっさり聞いてきやがる。 「そういうわけじゃない」 「では、好きなの」 心の中で舌打ちし、周囲を軽く見る。 叢雲とあきつ丸が人払い(物理)をしてくれたせいで、誰もいない。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:25:21その上で答える。「ああ」 「そう、じゃあセックスをするというのと好きというのはどうつながっているのかしら」 「…表現の仕方なんだろ。少なくとも俺はそういうコミュニケーションをあえてする必要を感じないし、そもそも俺にとってそういう表現の仕方は無理なんだよ」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:27:19「あんたはどうなんだ、加賀さん」 聞かれ続けるのも癪だ。加賀はしばし考える。 「…あの人が求めているから私はそうしている」 「じゃあ愛情表現なのか」 それを聞いて加賀が眉を下げる。 「わからないわ。その、愛というのがどういうものなのか」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:29:25「私はあの人の求める事に応えたいとは思っている。だけど、それが愛情と呼ばれるものなのかはわからない。愛情という言葉の意味自体、とらえどころがないと感じている」 加賀の言葉が続く。抑揚もなく、感情も込めず。いや、自分の中にある物をどう表現すべきか知らないのだ。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:31:58何かを伝えるべきだろうか。少し悩む。本来は提督と加賀の二人同士で解決スべきことのようにも思える。しかしそれでは叢雲にも悪い。「…思うに、互いが互いを必要とするのが愛情ってやつだな」俺がまさかこんな事を言うとは。自分でも意外だったが、言葉は続く。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:34:15「自分が相手を見た時に、失いたくないとか、相手がいないと自分が成り立たないとか、そういう事を感じないか」 「食事はきちんともらっていますが」 俺は頭を抱える。 「それ以外にもあるだろ。もっとよく知りたい、感じたい、理解したいとか…」 加賀はうつむく。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:37:23「多分、そういうのを強烈に感じれば、相手を愛してるって事になるんじゃないか」 「あなたは羽黒さんを見た時そう思うの?」 深く息を吸う。「そうだ。あんたは、あの提督をどう思ってるんだ?」 「前にも言ったとおり。応えてあげたい。それだけ」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:39:24「では、あの提督の思いとはなんだ」 「多分」加賀は薄く目を閉じる。「あの人は私に兵器としての本分を全うして欲しいと思っている。人ではなく艦娘である私は、兵器。その兵器としての、殺しの道具としての能力を最大限に引き出したい」 「それだけか?」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:42:44「さっきの話を聞いていると、兵器としての本領発揮と、互いの肉体を求め合うことの間が繋がらない。何か別の意思があるようにも思える。なぜ提督はあんたを抱くんだ?あるいは、あんたは何故提督を抱く。兵器と人ってだけならセックスの必要はないだろ」 加賀は沈黙する。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:45:23「…これ以上は野暮だな」俺は頭を掻く。 「だが、野暮を承知でもう少し余計なことを言わせてもらう」 「かまわないわ」 「あんたの相手が、兵器以上の何かをあんたに求めているのは確かだと思う。もしあんたがもっとあの提督に応えたいと思うのなら…そこで大事になるのは、多分」#艦これ航海日誌
2014-08-19 23:49:14「あんた自身の、あの提督に対する思いだと思う。今はまだぼやけているかもしれないが、いずれそれは明確にしなければいけないことだと思う。まあ、余計なお世話だが」 「ありがとう」加賀の目がこちらをじっと見つめる。表情は変わらず。 「感謝される覚えはない。野暮だったよ」 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:51:13「いいえ、気にしてないわ」加賀が首を横に振る。そして、「あなたと羽黒さんは、どうなの。互いの思いは一致しているの」「している。多分、世間の連中のそれとは大きくズレているのだろうが」「良かったら、聞かせてもらえる」口調から、”興味”の二文字が滲んでいる。 #艦これ航海日誌
2014-08-19 23:54:32