ウシオガーディアンpart1

Qewestion not allowed @QewWyuki

誰が彼の心持ちを察せましょうか。なぜ彼が潮を毒する者に対してあそこまで非情であるのか、わかる者がおりましょうか。ただひとつわかることは、彼は潮を守護し仇なす者を滅す、ただそのだけなのです。 #潮之守護者

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男が早朝の屋台街を歩く。開いている店は少ないが、数少ない例外は存在する。朝から鳥肉が焼ける音がするが、そも人が少なく客足はない。やけに真新しいトレンチコートを羽織った彼は迷うことなく例外の店の暖簾をくぐる。いらっせえとおやじが言う。 #潮之守護者

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「串を5本、任せる」 口数少なく男は座り、手に持った新聞を置いておやじの方に近づける。察したおやじは串を置く手を休めてそれを受け取り広げる。開けば大きな赤丸で囲まれた記事がすぐに見つかる。 【駆逐艦連続誘拐事件】 おやじは舌打ちをする。 #潮之守護者

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広げた新聞には厚みのある封筒も挟まっていた。中身を軽く出せば、悠に百枚は札が入っているか。 「五本で五新円（ニューイエン）ですぜ旦那」 彼はそう言うと札を半分引き抜いて彼に返す。男は頷いた---男はミラーシェードをつけていて眼元を伺えない。 #潮之守護者

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「不知火！！」 おやじが声を張り上げると若い女の声が「はい」と返ってきてすぐ足音が近づく。感情の少ない顔立ちの少女がそこにいた。 おやじは少女に耳打ちをし、少女は駆け出す。その速度は人のそれを遥かに凌いで。 「少々お待ちくだせえ」親父はやっと串を焼き始めた。 #潮之守護者

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男が五本の焼き鳥を食い終わって暫くしたところで不知火と言われた少女が戻ってきた---手に紙切れを持って。 おやじは紙切れを受け取って読んでまた舌打ち。串を弄ぶ男に紙切れを渡して言う。 「伊勢のところにいきゃすぐわかる、全く不用心な奴らだ」 #潮之守護者

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男は馳走とも言わずに席を立ち、おやじはそれを気にしない。不知火を横に座らせると彼は仕込みを始めた。 チバシティの朝は遅いが、動き出せば有象無象が蠢き始めて、朝から焼き鳥を求める者は多い。 #潮之守護者

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チバシティ……最先端のサイバネ技術を誇り、日本でも数少ない”治外鎮守府”に指定される無法地帯。 独自通貨【新円】が流通し、数多くの提督と艦娘、そしてそれ以上の”ワナビー”を抱擁して離すことはない。 男はそのチバシティの裏路地を単身、足を緩めず歩きゆく。 #潮之守護者

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上を見上げれば今は光を灯していない、くだらない文句の書かれたネオンがあるが今それは問題でない。 男がただただ歩く先にはプレハブ小屋、看板に【瑞雲職業案内所】と書かれた汚い建物があった。 建物の周りには薄汚い男や女どもが座り込んでいて、そこが開くのを待っていた。 #潮之守護者

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男は無象を無視してプレハブ小屋の扉を開く。中は意外に清潔でしかしやはり狭く、受付と思しき長机の前にパイプ椅子があるのみ。そして長机の向こうに航空戦艦が一人。 「まだ瑞雲職業安定所はやってないよお……ってなんだてーとくじゃん」 男は頷いた。受付の伊勢は笑顔。 #潮之守護者

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男は何も言わずに紙切れを伊勢に渡し、伊勢は検める。 「ふーんなるほどねえ ちっとまってねえ」 伊勢は目を瞑る。彼女の首筋に伸びるファイバ、行き先は端末。 ここは【職業安定所】、彼女はデータベースにアクセスしある情報を探している。 #潮之守護者

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伊勢は目を啓く。数十秒とも待たせなかった。 「こいつら新参だねえ、つい一週間前にここにペーパーを登録したばかりだよ。てーとくのこと知らないんじゃないの？ 運がないやつらだね」 伊勢はずっと笑っている。男は少しも口角をあげようとしない。 #潮之守護者

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「じゃあ、これがこいつらの連絡先だから好きにやっちゃってよ。ところで日向は元気？」 ここで始めて男は笑った。伊勢は一層笑顔になる。 伊勢から紙切れを受け取って男は出て行った。気づけばもう瑞雲職業安定が開く時間で、伊勢は笑顔を崩さずに見送った。 #潮之守護者

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全ては順調のはずだった。 しがない地方鎮守府でのヤクザ仕事で金を貯め、やっと出てきたチバシティ。 ”提督”になるにしても”サムライ”やるにしても更に金がいる。んなこってやってみたのが艦娘攫いだ。 #潮之守護者

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戦艦や重巡にゃ叶わないが駆逐艦ならなんとでもなる。 不用心に出歩いていた駆逐艦を攫うなんてわけがなかった。 最初はちょっと遊んでやろうかとも思ったが、初仕事だから遊ぶのはなしだ、買い叩かれる可能性もある。 #潮之守護者

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確か潮って型名の艦娘だったか、ずいぶん怯えちまって申し訳なく感じちまう。 だが憐れみはなしだ。こいつが”娼館”行きになろうが”培養槽”行きになろうが関係ねえ。 艦娘はとにかく金になる。ヴァージンならなおさらな。 #潮之守護者

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港湾地区の廃屋を買い叩いてペーパーカンパニーを作り”サムライ”を雇った。”元”艦娘の重巡姉妹だ。 あとは処分先だけ。こればかりは地道に探すしかなかった。屋台街でその筋を探して打診する。sonokurikaesida #潮之守護者

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港湾地区の廃屋を買い叩いてペーパーカンパニーを作り”サムライ”を雇った。”元”艦娘の重巡姉妹だ。 あとは処分先だけ。こればかりは地道に探すしかなかった。屋台街でその筋を探してそれとなく打診する、それくらいしか新参の俺達にはできなかった。 #潮之守護者

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"I'll contact in a few days" それで電話は切れた。外人だろうがなんだろうが関係ない。金さえ出してくれば問題ない。 この潮型艦娘の運命なんざ関係ない。俺たちはここで新円を稼ぎまくる、それだけだ…… #潮之守護者

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しかしそれも今日で終わりだ。ペーパーカンパニーの電話（勿論足がつかないプリペイドセルラー）に問い合わせがきた。 屋台街での”営業”を聞きつけたのだろう。 彼は（彼女かもしれない）はただ"She is still Virgin?"と問うた。 勿論だと気色ばんで答えた。 #潮之守護者

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「今日の分だ」男から渡された封筒の中身を検める。四万新円也。 「確かに頂きました」私、鳥海は営業スマイルで答える。隣にいる姉の摩耶はおうと空返事。空は既に陽が傾いていてオレンジ色が強く出ている。潮風が心地よい。 #潮之守護者

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もらったお金は"サムライ"代。これから明日の朝までこの倉庫の前を見張るだけの簡単なお仕事。 ”元”艦娘の私達にとってサムライは一般的な職業で、一番手っ取り早い錬金術。 #潮之守護者

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摩耶に唆されて一緒に鎮守府を辞し、裏金で”退化手術”を免れたのは良かったけれども先立つお金に困ったもので、そんな私達を雇ってくれたのがさっきの男でした。 仕事は簡単、”ビズ”がひとつ終わるまでの身辺警護 #潮之守護者

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私達の元同僚の人身売買に関わることは少しは心苦しかったけれども、元艦娘が手っ取り早く稼ぐなんて”娼館”か”サムライ”くらいなもので、借金があった私達に選択の余地はありませんでした。前金十万、日当一人一万新円。暫くお金には困りません。 #潮之守護者

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「しかしよお」摩耶は煙草をくわえて言います。「攫ったのが潮ってのがなあ」 「またその話ですか姉さん」私も叶和圓をくわえて、摩耶のタバコから火をもらう。「うわさ話ですよそんなこと」 #潮之守護者