2014年8月23日

彼女たちの戦後 蒼龍の場合

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MIB@C99木曜日南地区“よ”-27a Skeb受付中 @MIBkai

「おめでとう」 そう、親に祝われた日はいつだっただろうか。たしか、その日は大学へ進学希望だったがために、軍の奨学金制度を利用して、卒業後に艦娘として軍役に就く、というものだった。金が無いのは悲しいものだな、とふ、と彼女は思ったものである。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:36:20
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そして、入学式のその日。届いたのは祝電ではなく、召集令状であった。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:37:15
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精一杯めかしこんでいた親は、手紙を受け取ったその瞬間、泣き崩れていたことを覚えている。 そして、彼女は「奨学金をびた一文受け取らないうちに」戦争に駆り出されることとなったのである。彼女は、蒼龍と呼ばれていた。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:39:37
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戦争は終わった。必死で生き伸びてきた彼女は、そう聞いて惚けていた。戦争は終わった。そうか、そうなのか、と。 「……終わったんですか」 来た、見た、勝った。そう一言で締めた人物が居たというが、なんとはなしに、そう発した気持ちはわからないでもなかった。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:42:54
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本当かな?と蒼龍はほほをつねり、確かに痛い、ということを確かめた。 「そっか。そうなのか……」 そう。戦争は終わったのだ。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:44:20
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そうして、現実感のないふわふわとした気分のまま、蒼龍はいつものように6時に起きて、いつものように朝食を食べて、そして課業に就き、提督の面談を受けた。 「これから、どうしたい」 そう聞かれたとき、即座に蒼龍は答えた。 「大学に復学したいです」 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:45:38
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「復学?……ああ、うん、確かに君は休学扱いになっているね」 そう言って書類を確認した提督は、顔をしかめていた。 「これ、ひどいな……」 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:47:09
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「どうかしましたか?」 「いや、いくら何でも入学式のその日に応召とは……」 「……仕方なかったのだと思います」 正確にどのような状況であったか、については記憶が無いが、たしか台湾沖まで押し込まれた、という話を聞いたことがある。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:48:53
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「うん、まあ軍役にすでに就いているわけだから……君の奨学金に就いてはちゃんと取り計らう」 そう言って、提督はずっしりとしたA4用紙が入るくらいの封筒を手渡してくる。 「いろいろと書いてもらう書類があるから、その中の見本を確認しながら書いてくれ」 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:51:03
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その後、提督によって「帳簿上奨学金を受け取っていたことになっていた」という経理上の不正が判明するなど、大変なことになっていたが、蒼龍は実家に帰り、そして一日しか行っていない大学に復学した。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 01:52:10
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とりあえず、書くたびにフォロワーが減る #彼女たちの戦後 ですが、風呂から出た後に書きます。今回は蒼龍のお話。これまでの話でも読んで退屈を紛らわせててください togetter.com/li/709867

2014-08-23 23:46:13
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戦争に勝ち、当面の脅威は消えた、ということは、一般論としてはごく望ましいことである。勝ったがゆえに更なる紛争に巻き込まれる、大国たる責任を果たせ、といわれることもある。だが、幸いにしてそうしたことはなかった。そう、あくまで一般論としては、だ。 #彼女たちの戦後

2014-08-23 23:59:32
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では、一般論ではなければどうなるのか。軍に残りたいのに、必要とはされない、ということもある。幸いにして、蒼龍はそうではなかった。望んで軍役に就いたわけでもなかったし、もともとやりたいことがあったのだ。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:01:07
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その「やりたいこと」が、彼女を軍役に就く原因でもあったのだが。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:02:03
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軍から離れ、実家に帰ると、家族からお帰り、といわれた。まあ、それ自体は喜ばしいことなのだが、2200を回ると、自然と眠くなり、習慣というものは恐ろしいものだ、と眠い頭で、蒼龍は考えた。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:05:02
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そして、0600に目を覚ました時には、習慣って恐ろしいなあ、とさらに考えてしまう。さっさと起きて布団をたたんで、クローゼットを開ける。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:06:59
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そこには、少しくたびれた色をした「セーラー服」がかかっていた。高校に行っていた時はこれを着ていたなあ、と手でそれをなでると、いろいろと思うところがあった。着てみようかな、と考え、袖を通してみて、思わず笑った。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:08:43
MIB@C99木曜日南地区“よ”-27a Skeb受付中 @MIBkai

「んー、これは……」 我ながら、いくら何でもこれはキツい、と口に出しそうになるのを、蒼龍は笑ってごまかした。行ったことはもちろん無いのだが、見た目としてはいかがわしい店の女性そのものである。制服が本物なことを除けば、だが。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:10:34
MIB@C99木曜日南地区“よ”-27a Skeb受付中 @MIBkai

ふ、と左を見ると、家人と視線が合った。おはよう、といわれたので、おはよう、と返す。 ああ、何だろう、これ。すごい、空気。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:13:00
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「……そういうお店で働くってことになったら、お母さん泣くわよ」 「ち、ちがうよ!」 なんとなく懐かしくなって、と蒼龍は返して、ああ、と考えた。 帰ってきたんだなあ、と。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:14:29
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ひどいなあ、といいながらセーラー服を脱ぎ、思わず苦笑する。こんなことで帰ってきた事を実感するとは。 「帰ってきたんだなあ……本当に」 高校卒業後、誘われた卒業旅行に行かず、大学の入学式に行く当日に召集令状が届いたため、部屋は時が止まっているかのようだった。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:17:15
MIB@C99木曜日南地区“よ”-27a Skeb受付中 @MIBkai

その後は、ごく平凡なことばかりであった。同じ大学に「鳳翔」さんが居たこと、喜んでいたのもつかの間、課題の量に吐き気を催しそうになったこと、サークル活動に勧誘されず、まあ、この見た目じゃ新入生とは思わないだろうなあ、などと苦笑いしたことなど、である。 #彼女たちの戦後

2014-08-24 00:19:53
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