茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1308回「ヒグラシの気配」
脳科学者・茂木健一郎さんの8月26日の連続ツイート。
本日は、夏の終わりに思うこと。
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茂木健一郎
@kenichiromogi
先日、お目にかかった方が、夏は子どもと虫採りをしているといって、その中で、いろいろなものを採ったけれども、ヒグラシはまだなんだ、と言った。それでぼくははっとして、同時に何か違う感じを受けたのだけれども、それがなんなのか、すぐにはわからなかった。
2014-08-26 07:48:12
茂木健一郎
@kenichiromogi
ぼくの少年時代は、本を読むか、野外で蝶をおいかける日々だった。その中で、ヒグラシは、蝶がもう少なくなってきた夕暮れに、カナカナカナと鳴き始める存在として認識されていた。その合唱が聞こえると、そろそろ家に戻らなくてはならない、という一つのシグナルであった。
2014-08-26 07:49:21
茂木健一郎
@kenichiromogi
ところが、ふしぎなことに、ヒグラシの姿を見たことがなかった。というよりも、見ようとも思わなかった。そもそも、薄暗くなっていたし、主な関心は蝶にあったし、セミ類を網の中に納めよう、という発想がなかったのかもしれない。ヒグラシは、純粋に「音」として、ぼくの中では存在していた。
2014-08-26 07:50:31
茂木健一郎
@kenichiromogi
さらに言えば、ぼくは、ヒグラシを、一つの「まぼろし」のような存在としてとらえていたのかもしれない。音の幽霊のような存在として。実際にそこに息づいている節足動物ではなく、夕暮れになると、林のあちらこちらからいっせいに聞こえてくる、一種の気配のようなものだと思っていたのだろう。
2014-08-26 07:51:48
茂木健一郎
@kenichiromogi
「まだヒグラシをとっていないんですよ」というその人の一言で、ぼくは、自分がヒグラシを音の幽霊、林の気配だと思っていた、いや、そのように思っていたかった、ということに気付かされた。人間の認知には、このようなことがある。まだまだたくさんの幽霊、気配が隠されているかもしれぬ。
2014-08-26 07:53:02