ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10100245:メニイ・オア・ワン #1
シマカタ長官は側近に向かってなにか語気を荒らげている。音声はまだ繋がらない。一方で、名声欲にその表情を輝かせるミチグラは、ライブ通信を隔てた相手の様子を把握しきれていなかった。『映像来ているのか?ヤッタ、でかした!さあ、視聴者の皆さん!ウチの局の独占映像です!今まさに!』71
2014-08-31 01:34:36ナンシーはタイピングを続ける。その眉が微かに動いた。画面に映し出されたのは、ネオサイタマ郊外の空撮映像である。燃え上がる瀟洒な邸宅!その尖り屋根の頂点に立てられているのは……おお……ゴウランガ!黒い旗である!黒い旗には禍々しい「忍」「殺」の文字が血のような赤で書かれている! 72
2014-08-31 01:37:46『なんという事だ!まさかフジキド・ケンジの魔の手が……あれはダイザキ・トウゴ氏の邸宅だという情報が同時に入ってきております。ダイザキ=サンは慈善事業に全力をあげて取り組むネオサイタマきっての名士であり、まさかそんな……こんな蛮行の犠牲に……え?何だって?いやライブでしょう!』73
2014-08-31 01:41:35ナンシーの口角が上がり、その頬がやや上気した。タイピングを続ける。TVでは混乱がそのまま音声出力されてくる。『え?ダメなんですか?どうして!スクープだろう!私は……え?長官?え、事案?ダメ?アッハイ、え?音声?音声切れ音、』コマーシャルが始まった。『美しいファンダメンタル!』74
2014-08-31 01:44:37ナンシーはタイピングを続ける。『ファンダメンタルー、生活クオリティいっぱいネー……』封建的ボコーダー・テクノ歌謡コマーシャルソング。ナンシーの緊迫したタイピングとはおよそそぐわない。「セキュリティ重点!」モーターチイサイが電子音を響かせた。「何故!?」ナンシーは思わず叫んだ。75
2014-08-31 01:49:46モーターチイサイの警告、それは即ち、このオフィスに踏み込んできた者があるという事を示す。ナンシーは画面を二度見する。ハイデッカーはいまだこの地に到達していない。他のアマクダリ・セクト存在か?それとも……?問うている時間は無い!ナンシーはネットワーク痕跡を消し、強制切断した。76
2014-08-31 01:53:32「スッゾー!」その瞬間、カーボンフスマが蹴り破られ、ティアドロップサングラスをかけた角刈りのデッカーが室内に突入してきた。銃口。ナンシーは咄嗟に……否。首を振る。更に一人、角刈りのデッカーの陰から立膝で銃を向ける別のデッカー有り。ナンシーは息を吐く。そしてホールドアップした。77
2014-08-31 01:57:11【ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ10100245:メニイ・オア・ワン】#1 終わり。 #2 に続く
2014-08-31 01:58:43