フラグゲーム(第二軸章)

大金が欲しくなったり誰かを殺したくなったり旨いもの食いたかったりしたらいつでも言いたまえ。フラグゲームはプレイヤーを拒まない。 #名乗り出たフォロワーさんを全員殺す創作
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チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「やってやったぜー!!」「ウェーイ!!!」気心の知れた友人と軽やかにハイタッチをする。「まーさかフォワードが参加するとは思わなかったわ」奈美が楽しげに話しかける。「いやー金は魅力っしょやっぱり」フォーワードがあっけらかんと返す。先ほど共謀して人を殺めたとは思えない明るさだった。

2014-08-29 00:59:37
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

奈美とフォーワードはネットの友人であった。互いに「死亡フラグを立てる」能力のせいで世間から迫害されてきた者として、強い友情が両者の間には存在していた。「ピッカーが俺らだけだったら、賞金山分けだな」「したら一生ネトゲして暮らせるな」決定事項だった。「「俺ら以外皆殺しにするよ」」

2014-08-29 01:05:08
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「小龍包おいしいです」床代が言う。「せやな」かのんがチャーハンを頬張りながら返答する。「よく食えるな」ジョンがげんなりとしている。このゲームでは単体で動ける人間は基本的にブレイカーである。そんな計算から、より安全な作戦を求めた赤の他人のこの三人は、割と初期から行動を共にしていた。

2014-08-29 01:14:06
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「で、能力的には実際どうなん?」かのんが切り出した。「あ、私ブレイカーです」「俺も」床代とジョンは答える。「じゃあオブザーバーの俺がいれば完璧だな!!」完璧なドヤ顔を決めるかのんに、二人は盛大にずっこけた。「ブレイカーじゃなかったのかよ!」「イエースザッツライッ!」これはうざい。

2014-08-29 01:19:47
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「とりあえず救護班結成ですね」床代が言った。ブレイカーとオブザーバーが組んだ場合、ピッカーの殲滅が可能になる。大きなチャンスだ。「これで勝つる!というわけでおばちゃんギョーザください」かのんが追加注文を出す。「じゃあ俺ワンタン麺」ジョンもいくらか元気が出たようだ。

2014-08-29 01:24:17
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

猫の化けものと遭遇した気分だった。もりおきの首には、黄緑の燐光を放つフラグが植えつけられている。メモ用紙に犯人たる男の用紙を描きだしていく。ピアスにサイケデリックなシャツのピッカー。どうせ死ぬなら情報だけでも残して綺麗に死にたいと、もりおきは思っていた。

2014-08-29 01:32:04
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

そもそも、もりおきは参加するつもりはなかった。もりおきはこのゲームが何なのかをよく知っている。生きて帰ることを望むならば、死亡フラグ能力者はどう足掻いても手を汚すことになる事も解っていた。しかし、開催にあたっての事務処理で大きなミスをやらかし、主催者直々に放り込まれたのだ。

2014-08-29 01:36:22
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

(俺は死ぬ。だったら迷わん)もりおきの手帳は埋まってゆく。黄緑のピッカー「ベランダ仮面」の情報だ。そして追加して、暗号のようにこのゲームの目的を書いてゆく。突然に、もりおきの視界が境界を溶かして崩れ落ちた。脳卒中だ。(嗚呼)なんてゲームだ。もりおきの人生はここで幕を下ろした。

2014-08-29 01:40:02
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

::: 21時42分19秒 プレイヤー一名死亡 残り参加者 8名 ::::

2014-08-29 01:41:04
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

モリオキさんはゲーム主催者側だったからルールを熟知している。その上でゲームに参加させられたから、誰も殺さないでゲームから抜け出すにはいずれ誰かに殺されるか自殺するかしか選択肢がなかった。 #裏話

2014-08-29 01:59:44
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

開始から数時間も経つと参加者がじわじわと減っていく。いろおにはマカロンを咀嚼しつつあたりを窺った。有名洋菓子店から入荷してるらしいカラフルなマカロンは、いろおににとって憧れのお菓子である。「椛刀さんも食べます?」「いらん」ペットボトルの緑茶を飲みながら椛刀が答える。

2014-09-01 18:52:26
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

ゲーム開始からすでに7時間が経過し、時刻は真夜中となった。視界の悪さを振り払うように椛刀はフィールドを見渡す。「……ん」「どうかしました?」建造物の隙間から漏れる微かな燐光。「回収されたフラグみたいですね」椛刀が見たものを自分でも捉えたいろおにが確認をとる。「行ってみます?」

2014-09-01 18:59:52
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「おまえ、やっぱりアホだろ」椛刀が言う。「でも動かないですし、既に死んでるとみていいんじゃないですか?」ペットボトル入り紅茶を飲みつついろおにが意見する。椛刀がため息をついた。「確かにあの旗は動いてないけどもな、死体の影にあれをブッ刺したピッカーが待ち構えてるかもしれないんだぞ」

2014-09-01 19:06:58
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「う……それもそうですね、やめときましょう」いくらオブザーバーとはいえ、ピッカーがフラグを出さなければ観測することは出来ない。攻撃者がいない状態では、深夜の暗がりでの特攻は自殺行為だ。「そういえば椛刀さんは能力なんなんです?」ピスタチオのマカロンをかじりながらいろおにが訊いた。

2014-09-01 19:11:07
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「あいつら来なかったね」奈美が舌打ちした。「向こうもFPSとかやりこんでるのかもな」フォーワードがファミチキをかじりながら返答する。彼らの隣に横たわるのは、黄緑の旗が刺さった死体。自分たち以外のピッカーが存在するという証明のようなものだ。「ついでにちょっと実験してみる?」

2014-09-01 19:21:36
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

奈美が手を顔の横に翳し、そのまま死体の肩口に何かを突き立てる。死者を弔うという概念は無い。敗者はアイテムに過ぎないのだ。彼女が触れた所には、鮮やかな緑色の旗が煌めいて、すぐに砕けた。「じゃあ俺も」フォーワードが触れた箇所からは色濃く深い赤色のフラグが覗き、やはりすぐに崩れ落ちた。

2014-09-01 19:28:20
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「死体にフラグはやっぱ無理かぁ」奈美がぼやいた。「むしろ一瞬でも立ったことのほうが驚きだわ」フォーワードがもう一度フラグを刺す。「細胞単位で見ればまだ生きてるんじゃない?」奈美はつまらなそうにチーズバーガーを貪った。死亡フラグはピッカーが対象を指定する必要がある。奈美の経験則だ。

2014-09-01 19:34:46
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

「死体が目印とかに使えればよかったのにね」三口でチーズバーガーを食べ終えた奈美が言った。「生きてるうちに刺さなきゃだめか」「まあそうだろ、死亡フラグだし」けだるげにフォーワードが立ち上がる。「そろそろ場所移動しよう。仮眠とれるところ探さないと」「そうだね、休みなしはつらいわー」

2014-09-01 19:39:56
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

ジャンクフードの残骸もそのままに、二人は並んで飲食店街の路地裏を歩きだした。「どこがいいかな」「モーテル!」「直結脳死ねw」軽口を叩きあいながら休めそうな場所を見繕う。「このへんは?」「あ、ここいいかも」「野宿しても隠れやすいし」「まあどこ行っても死にますけどね」空気が凍りつく。

2014-09-01 19:44:33
チャンジャ胡麻油ナンプラー @fish_soup_can

二人が振り向いたときには、誰もいなかった。すぐさま周囲の気配を探る。一寸先すらまともに見えない暗がりの中、先に悲鳴を上げたのは奈美だった。街灯の微かな灯りを頼りに見えない敵を探すフォーワード。しかし、それも彼が頭を真上から踏まれたことで中断させられる。「ふらぐ・おーん!」

2014-09-01 19:50:30