【東荒】甘い香り

弱虫ペダル 二次創作 腐向け 東堂誕生日 その1
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ひな@復旧中 @newgibbousmoon

リクエストまとめ 東荒×3  高校生→大学生→社会人の3シーン構成 東荒♀ 幸せになるための資格3の後日談 東堂VS宮本 荒北セコムぱちと無自覚ストーカー宮本の初対面 宮本と荒北と東堂 ↑その後の話 以上の予定でお送りしますー。

2014-08-06 15:26:10
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

東堂誕妄想SS 東荒① 「荒北、後で話があるんだが、時間をとってくれないか」 「いっけどー……何だよ、改まって。ここじゃできない話ー?」 IH後、一週間もたたずに受験モードに切り替えた荒北に、周囲の誰もが戸惑っている中、東堂だけがまったく動じていなかった。 「できない話だ」

2014-08-06 22:52:25
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon きっぱりと言い切る東堂に、荒北は小さな溜息を一つつく。 「了解。んじゃ、これ片付けてくんから、先に部屋いってて」 「ああ」 「あの、荒北さん」 「何だよ」 夏休み期間中なのに、寮は普段と変わらない賑やかさの中にある。 「あの、今日なんですけど」

2014-08-06 22:57:21
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「おう。何かあったっけ?」 ……今日は、東堂先輩の誕生日だと思うんですけど」 「今日って8月8日?」 「はい」 「うわ、やべ。マジ、忘れてたわ」 なるほど、いつになく静かな……あの口上だの何だのをのべなかったのはそのせいか、と小さく溜息をつく。

2014-08-06 23:00:18
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「あの、談話室でちょっとしたお祝いとか企画してんですけど……」 「もう、準備できてんの?」 「それが、あとちょっとで……」 「わーった、こっちの話終ったらつれてくから。そっち、何分くらい後ならいいんだ?」 「……そうですね、8時でどうですか?」

2014-08-06 23:03:22
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「了解。誰がくんの?」 「チャリ部中心っす。あ、寮じゃねえけど、真波にも声かけてあります」 涼しい顔をした黒田が当たり前のように付け加える。 「そっか。わかった」 (エリートちゃんは、気がきくよな) これが葦木場だったら思いつきもしないだろう。

2014-08-06 23:06:40
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon そして、しっかりしているようで抜けている泉田もそこまでは気付かないかもしれない。 東堂にとって真波山岳という一年生は特別な存在であり、真波にとっても東堂は特別だ。 同じクライマーだからという以上のつながりがあるように思える。

2014-08-06 23:09:26
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (あ……) 「どうしました、荒北さん」 「いや、何でもねえ」 時折、黒田から漂う甘い香りの正体を荒北はつかみかねている。 (……何の匂いなんだろうな、これ) 悪い感じはしないのだ。 むしろ、爽やかにすっきちとしていて、荒北は嫌いじゃない香りである

2014-08-06 23:11:18
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「じゃ、20時な」 「はい」 荒北は夕食のトレーを片付けると、共同の冷蔵庫からストックしているベプシのペットボトルをとりだし、部屋に足を向ける。 「そういえば……」 (東堂もよく黒田に似た香りをさせてんよな) 同じ香水を使っているのかもしれない

2014-08-06 23:15:05
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……たっでーま。……おい、何見てんだよ」 「荒北、おまえ、洋南を受けるのか?」 デスクの上の赤本をめくっていた東堂が顔をあげた。 「おう」 「明早の推薦を受けないのか?」 「受けねえ。ってか、そもそも俺には来ねえよ、そんな推薦」

2014-08-06 23:18:36
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そんなことないだろう。どこのスカウトもおまえとフクをセットで欲しいといっていると顧問から聞いたぞ」 チッと荒北は舌打ちを一つする。 「あのな、もうIHは終ったんだよ、東堂」 「IHは終ったかもしれないが、おまえの自転車人生が終ったわけじゃない」

2014-08-06 23:21:34
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そうだな。……話ってそのことなのか?」 「いや、違う。……ただ、気になったんでな」 「ってか、おまえこそどうすんだよ。大学のスカウト受けねえんだろ?必要ないって顧問に言ったって聞いたぞ」 「ああ。オレはもう決めたからな」 ひらりと茶封筒を見せる

2014-08-06 23:23:19
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……竹下電工?実業団?」 「ああ。そうだ。一足先にプロになることにした。これは面談の通知書だ」 「セレクションとかねえの?」 「セレクション?」 「あー、選抜試験っつーか」 「これまでの実績っていうか、とってきたリザルトでほぼ合否決まてるから」

2014-08-06 23:27:02
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「なるほど。オレには一番縁がねえやつだな」 「アシストに関しては単純にリザルト判断というわけではないだろう」 じゃないと、合格するアシストはいなくなってしまう。 「だろうね……ってか、いつまでも話そらすのやめて本題言ってくんない」

2014-08-06 23:30:26
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 少しだけ荒北は焦れた。 東堂が回りくどいのはいつものことだったが、それが妙に今日は気になる。 (この、匂いのせいだ) 甘い、匂い。 黒田の漂わせているそれと似ているけれど、東堂の方がずっと甘く香る。 今日はいっそう強い気がする。

2014-08-06 23:33:03
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そうだな。……俺としたことが、この後におよんで、話をそらすなんてみっともない」 「……東堂?おまえ、何言ってんの?」 東堂はその綺麗な顔に、何かを諦めたような笑みをひらめかせる。 「東堂?」 不意に、背筋がぞわりと震えた。 「荒北」

2014-08-06 23:35:57
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 声のトーンが変わった。 (聞いたら、ダメだ) 不意にそう思った。 こいつの口を開かせたらダメなのだと、なぜか思った。 「東堂、やめ……」 「やめない」 東堂はニヤリと笑った。 ごく至近距離で、自身でも自信たっぷりに美形だというその顔を見る

2014-08-06 23:40:42
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 正直、男の顔がどんなに綺麗でもどうでもいいと荒北は思っているが、こんなにも近くでみればそれなりの感銘は受ける。 「とうど……」 東堂は、荒北の言葉を遮るように、伸ばした指先で荒北の唇に触れた。 「……好きだ」 ただ一言だった。 (あ……)

2014-08-06 23:49:31
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 囚われてしまった、と思った。 自分をまっすぐと見つめるその青みがかった瞳に。 (反則だろ……) いつもはあんなにうるさいのに、こんな時ばかりこんなにも静かで……そして、たった一言しか言わないのだ。 何よりも、それに掴まってしまった自覚がある。

2014-08-06 23:52:04
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……逃げるな、荒北」 耳元で囁くように言われた。 「逃げるかよ、バァカ」 反射的に言い返した。 (クッソ、このデコッパチが……) 「そうか」 東堂が満足げにクツクツと笑う。 近づいてくる顔を、荒北は避けなかった。 (ああ、そうか……)

2014-08-06 23:56:14
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon この香りは、自分を想うその甘さか、と気付いた。 だから、荒北は笑ってみせた。 東堂が軽く目を見開く。 荒北は一方的に囚われるつもりはまったくなかった。 (ヤラれっぱなしは性に合わねえんだよ) 荒北は、見せ付けるように嫣然と笑みを重ねた。

2014-08-07 00:03:47
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 高校生編END 思ったより長かった。 生書きだとどこに着地するのかわからなくて予測がたたない(笑) どっちも負けず嫌いなので。

2014-08-07 00:05:49