ストレイトロード:ルート140(7周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」のコンビがお届けする、短編という名の習作。1日1話ペースで継続中。 今回は301~350。それ以前のは作者おすすめ欄か下記URLからどうぞ。 元の短編の掲載場所: http://www.gekkado.jp/
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

荒野に怪物が墜落した。車のラジオが繰り返す。「昨日通った所よね。そういえば風がうるさかったわ」それは私達が耳で感じる音とは違うらしい。山より高い空で空気が荒れ狂っていたと藍は言う。「乱気流でしょうか」風に頼る怪物なら風に翻弄されても不思議はない。「何それ?」逆に説明を求められた。

2014-08-25 19:36:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、339。乱気流。 例え同じものを思い浮かべていても、同じ言葉として覚えていないと伝わらない。

2014-08-25 19:37:02
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

広場の中央に立つ時計台は、よく見ると形も長さも不揃いな木材で作られていた。藍と私は時計台の裏へ回り、小さな石碑を見つけた。「この時計の壁、昔この町を洪水が襲った時の流木だそうです」「なんでそんなの造ったの」藍は険しい目で不恰好な装飾を見上げた。災いを知らぬ世代のため、と碑は語る。

2014-08-26 19:51:53
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、340。流木。 悲しみも怒りも、記録に残せば必ず誰かが紐解くから。

2014-08-26 19:52:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達が訪れた村に宿はなく、怪物の群れが通るという日まで村長の家に滞在することになった。藍は村長夫人と親しくなったらしい。蔵書からある有名な小説を借りて読んでいたが、分厚い本を翌朝にはもう返していた。「堂々巡りで全然面白くないの」大人の涙腺には響いても子供には効果がなかったらしい。

2014-08-27 19:03:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、341。涙腺。 子供の頃に読んだ本を大人になって読み返したら、そこはきっと違う世界。

2014-08-27 19:03:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

厳しい暑さが続く旅路で、遂に車の冷房装置が音を上げた。藍は不快な振動ばかり吐き出す送風口を睨み、私に何か訴えかける視線を送り続けている。「今日中に街に着きますから。それまでの辛抱です」真昼の荒野は乾いているが、それは救いとは言い難い。魔女も己の身を焼く熱風を呼びたくはないようだ。

2014-08-28 19:13:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、342。冷房。 停車して直すか、避難が先か。

2014-08-28 19:16:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達は直線の廊下を進み続けた。壁に等間隔に飾られた小さな電球が空間を照らしているが、ずっと先には闇しか見えない。分厚い絨毯に足音を吸い取られ、時の流れさえ見失いかけた私はふと、一歩前を行く藍が何か呟いていることに気づいた。彼女は自分の歩数を数えていた。今にも眠気に負けそうな声で。

2014-08-29 20:02:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、343。廊下。 指標がなければ自分で刻むしかない。

2014-08-29 20:02:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

クリーチャーを狩ることは義務でも仕事でもなく、戦利品の多くに価値はつかない。それでも藍は戦いを挑む。原動力はならず者の牙から人々を守る正義か、それとも。「ああいう時が一番『わたし』らしいことしてる気がするの」藍は磨いた紫水晶のような爪を光にかざした。衝動の名と源を彼女は知らない。

2014-08-30 19:29:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、344。戦利品。 動機が形容しがたい個人的感情でもかまわない。人はそういうものだから。

2014-08-30 19:29:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

荒廃した都市の片隅で一軒だけ繁盛する商店を見かけた。雑音混じりの機械音声が客を出迎えている。口上によると方々から集めた訳ありの品物を安く売っているらしい。「ちょっとぐらい問題あったって、目的通り使えればそれでいいのよね」藍は私の顔をじっと見上げていた。「わたし、今ならよく分かる」

2014-08-31 20:54:37
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、345。訳あり。 今回のお題週、最初は愁海棠(@takuramu_ossan)さんにいただいたテーマから。

2014-08-31 20:54:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「ここの人達もあれを甘く見過ぎ。道具があって上手い人いるから大丈夫って」藍はガラスケースに手をついて展示品を眺めている。様々な鳥の剥製が市役所のロビーに並ぶ理由はどこにも書いていない。「鳥を撃ち落とすのとは訳が違うのに。ねぇ?」口を大きく開けた夜鷹がガラス越しに藍を見上げていた。

2014-09-01 19:34:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、346。夜鷹。 猫(@CheshireConyCat)さんから、一部の方にはタイムリーな話題を。あと1ヶ月ですね!

2014-09-01 19:34:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

藍ちゃんがいる世界におけるクリーチャーと鳥の違い。 サイズ。 他にもいろいろあるけど何よりまずこれが重要。

2014-09-01 19:40:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

草原の端に岩場を見つけた藍はまっすぐ向かって行った。裏側が坂になっていて、大岩の上に登れるらしい。「宿にあった雑誌に載ってたの。昔ここで翼を背負って空飛ぶ練習してたんだって」広い平地に向けて先端が飛び出した形状は確かにジャンプ台だった。遠い時代の勇士達は鳥人間になれたのだろうか。

2014-09-02 19:24:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、347。鳥人間。 ラ(@raaaaaaaaaaaa14)さんよりいただきました。 そういえば現代の鳥人間が限界に挑戦するコンテストは明日放映ですね。録画予約しないと。

2014-09-02 19:25:08
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

荒廃した街に潜んでいたらしい若者達が次々と現れ、ある建物に吸い込まれていく。その数を数える間に藍は私の側を離れ、行列に混ざってしまった。「こんばんはー」入口に立つ黒服の男へ周囲と同じ調子で挨拶したのに、藍だけがつまみ出されていた。堂々としていればよそ者とバレないとでも思ったのか。

2014-09-03 18:46:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、348。挨拶。 こちらは夢亜(@SakuraKirayami)さんから。 大事ですよね。…場合にもよるけど。

2014-09-03 18:47:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

雨は三日間降り続いた。藍は風が弱く雲が動かないと説明したが、人間の都合で雲を追い払うのは気が進まないとも言った。魔女なりの気掛かりがあるらしい。「でも駐車場が浸水したら車が使えなくなります」「やれって言いたいの?指図しないで!」私は予想を述べただけだ。そして彼女は予想を無視した。

2014-09-04 19:14:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、349。浸水。 瀬尾(@Queensriddle)さんからのリクエストでした。 自分たちが無事ならそれで済む、とはいかないこともままある世界。

2014-09-04 19:15:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「何でわざわざ波風立てるの?平和に暮らしてるんだから邪魔しないで!」「本当にそれでいいの?警報鳴ったら隠れて怯えて、どこが平和?」躊躇わず故郷を旅立った少女が、定住者の幸福を説く女に詰め寄る。私はどちらの味方もしない。藍が挑発し呼び寄せた怪物の足音を警戒し、口論を止める時を待つ。

2014-09-05 22:06:52
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、350。幸福。 人によって形が違うのか。形が同じでも見え方が違うのか。 お題は音色(@Aster_planet)さんからでした。

2014-09-05 22:06:58
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