俺の相棒が愛しすぎて辛い

上原恵(@kei00521)によるSS連作その3
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俺の相棒が愛しすぎて辛い

上原 恵 @Uehara_Kei

【無題】強くなって下さい。今にも泣きそうな貴女に伝えたメッセージ。強く気高く、前を向いて凛として。あえてからかうように言ったのに、大きな瞳を揺らしたかと思うと、いい歳のくせして子供みたいにわんわん泣いた。まったくみっともないですよ。 #SS_03

2013-06-10 19:45:31
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei そう言っても崩れた表情は戻ってくれない。困った、心底困った。俺が見たいのはそんな辛そうな顔じゃなくて――能天気で阿呆で間抜けで、でも温かく笑った顔なんです。「成長して下さいよ」これが最期のメッセージになるはずだった。#SS_03

2013-06-10 19:49:00
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 成長して下さい。確かにこう伝えた。彼女は言葉通り成長した。爪先立ちしても届かなかった身長差は頭一つ分から半分に詰めて、剣に振り回されていた非力さは微塵も感じさせず、操る様は美しいとすら思った。強くなったのだ。自分との約束通りに、成長してくれた。#SS_03

2013-06-10 19:54:07
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「本当に成長しましたねぇ」感慨深そうに呟く、ある一点から目を逸らさないまま。俺が見ているものを知った彼女は僅かに身をよじらせて叫ぶ。「どこ見て言ってるの!?」「どこって、その――たわわに実った」「最後まで言うな!言ったら殴るよ!?」#SS_03

2013-06-10 19:57:42
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「じゃあ双丘で」「逆にセクハラ度が増した――!!」ぎゃんぎゃんと喚く彼女を尻目にこっそりと溜息をついた。――1年かそこらでここまで成長するものなのか?彼女の身体は正直未発達で、胸もなだらかな丘というか断崖絶壁そのものだったのに。#SS_03

2013-06-10 20:31:00
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「思考が全部ダダ漏れ!というかだいぶ失礼!」「誰です?」「はい?」彼女のツッコミを遮って真剣な面持ちで両肩に手を置く。「誰に揉まれたんです?」「も、揉まれてません――!!」瞬時に響いた返事で導き出された答えにハッとする。#SS_03

2013-06-10 20:35:58
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「では、ご自分で……」「哀れみの眼差しで見ないで!?そんな趣味あってたまるか!」頬を赤らめながら自分の胸を隠すようにする彼女。俺は乱暴に髪を掻き上げて、「何もない平原から育てるという楽しみが……」絶望した。#SS_03

2013-06-10 20:40:27
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「あんた、そんな危ない夢持ってたの!?」さぁぁっと彼女が青ざめた。「まあ冗談はさておき」「冗談に聞こえなかったよ!私、完全に乙女の危機を迎えてたよね!?」「――本当に成長しました。強くなったんですね」声音を真面目なものに変えてニコリと微笑む。#SS_03

2013-06-10 20:45:25
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei すると、彼女は口をつぐんでしまった。おや、と様子を窺って息を詰めた。そこには必死で涙をこらえる姿があった。「あんな別れ方されて、強くなれないヤツなんていないよ……」肩を震わせて、零れる寸前で落ちることのない涙が光る。#SS_03

2013-06-10 20:48:58
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 眠りにつく前の最後の記憶のままなら、彼女は確実にこの場面で声を上げて泣いていた。「……すみません」そうか、俺が強いてしまったのか。もう逢えないと思ったら口にしてしまっていた。しかし、それは俺のエゴだ。勝手に縛り付けて酷なことをした。#SS_03

2013-06-10 20:52:54
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 今更ながら自分のしてしまったことを後悔する。俯いていると、スッと彼女の指が伸びてきた。訝しげに思っていると、指は優しさといった一切の躊躇いを捨てて額を弾く。あまりの威力に仰け反ってしまい睨みつけると、彼女は得意げに鼻を鳴らした。#SS_03

2013-06-10 20:56:31
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「何らしくない顔してるのよ」勘違いしてるようだけど、と前置きしてから、「あんな一方的な別れなんてないし、正直すごく辛かったよ。しばらく立ち直れなかった」やはりと眉をひそめる。「でも」強い口調で続けた彼女は腰に手を当てた。#SS_03

2013-06-10 21:00:05
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「強くなりたいと、成長したいと思ったのは私自身。だから」もう一度、彼女が俺の額を弾く。今度は軽めに。「あんたが気に病む必要はないの」キラリと強気な瞳が輝いた。茫然自失としていた俺は口元を和ませる。ああ、本当に強くなった。#SS_03

2013-06-10 21:04:33
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 予想を遥かに超えて。「それに辛気臭そうな顔してるの、あんた似合わないし」ヘラッと彼女がおかしそうに笑うのに対し、こちらはひくりと口端が引き攣った。彼女も俺の纏う空気の変化を感じ取ったのか、恐る恐るといった体で距離をとった。#SS_03

2013-06-10 21:08:41
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「あなたのくせに俺を慰めようとか生意気ですよね。殴られるのと蹴られると立派な双丘揉まれるのどれがいいですか?」「選択肢のはずなのに全部物理的なものだね!そして最後のやつは違うよね!?単なる変態の欲望剥き出しだよね!?どれも却下よ!」#SS_03

2013-06-10 21:12:21
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「チッ」「舌打ちする前に拳をボディに撃ち込まないで!?」涙目になりながら脇腹を押さえる彼女に手を伸ばそうとして――やめた。もう少しで指先をかすめそうだった、栗色のふわふわした髪の毛。#SS_03

2013-06-10 21:14:47
上原 恵 @Uehara_Kei

@Uehara_Kei 「本当に……」口を尖らせて文句を垂れながら先を歩く彼女の後ろ姿は、未だに頼りなさげだけど不思議と安心する。その背中に世界の命運がかかってるなんて。「あの人は――」紡いだ言葉の続きは、風に乗って誰にも届かずに消えていった。【Fin】#SS_03

2013-06-10 21:18:13

あとがき

上原 恵 @Uehara_Kei

ボケとツッコミの比率が1:2〜3で変態のS、というネタ話。世界観とか設定とかそんなのどっかに置いてきたさ!完全に勢いとテンションだけだ!(威張るな)

2013-06-10 21:20:26
上原 恵 @Uehara_Kei

ちなみに『双丘』というワードだけで書き散らかしました。お目汚しすみません。ダイレクトな変態は先輩以来かもしれません。

2013-06-10 21:21:57