うっかり伝説の剣抜いちゃった女の子とその剣の聖霊の話

U @ebleco

「それを、こんな、キャンプ感覚で！！」 「はぁ」 「今にして思えば、ここのダンジョンの情報伝えに来た何か王都の諜報部みたいな人も、あれ精鋭だったよ！！」 「左様で御座いますね」 「あの異様に間合いの管理が上手い暗殺者みたいなやつな！？」 「気配からして、暗部の者と見て間違いないかと」

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「だって！　あれが十人くらい襲ってきても、あたしらなら勝てるだろ！」 「勝てますね」 「……歪むよぉ……健康的じゃないよ……そんな強いのが貴族やってたら……『自分は人間じゃないのかも』ってなっちゃうでしょ！！　だってお前、その『暗部の者』が間合いに入るだけで決死の顔してんだぞ！？」

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「そりゃそんな状態で急に『守らなくてもいい人』と会っちゃったら気も許すよぉ……」 「聖剣を抜いて尚且つ五分、でありますからね」 「最近じゃその辺の魔物倒すより空いた時間にあいつらと打ち合ってる方が強くなれてる実感あるからな……何なら留守番するだけならセーブポイントすら要らない……」

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「ですが、其処は流石に、我々は聖剣であります故」 「まぁよく考えたらあたしら一振りで山を切り裂くような剣を腰に提げて歩いてるわけだからな。それはな」 「適性を持った勇者でなければ、抜く事すら儘ならぬ訳ですから」 「もーなー……うっかり抜いちゃった手前、自分の才能を無視出来ない……」

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「……ここまで来ちゃったら、否定のしようが無いよ……あたしが生まれた理由はこれだよ。流石にもう『勇者じゃないです』じゃ通らないもん……」 「はい」 「多分、ロクトがスティレと会う為に生まれた来たように、あたしが生まれて来たのは、お前に会う為なんだよ」 「……はい」 「……」 「……」

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「……？？　待って待って、あたし今すげぇ恥ずかしい事言ってない！？」 「……」 「ちがっ……違、わないんだけど、そういうのじゃなくて、ほらっ、こう……違う違う違う、な！？　お前も……ってうっわぁ何その表情！！？」 「喜びを嚙み締めております」 「なんて華やぐような笑顔なのかしら……」

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「……お前ここに来て初めて見せる顔すんのやめろよ……心臓に悪いんだよ……」 「……はっ」 「は～～？　口元が緩んでる～～……何だそれ顔が整い過ぎてるにも程があるだろ」 「申し訳御座いません」 「お前その顔、絶対あたし以外の前でするなよ。これはあたしだから耐えられてるんだぞ」 「はっ」

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「……」 「……ティーニャ？」 「何だよ」 「我が麗しの太陽よ。貴女が私の為に昇るのならば、私は月となって毎夜その姿を……」 「違う違う違うっ！！　そういうのじゃない！！　あたしは貴族の間で流行ってるって話の『詩を交換してイチャつく奴』をやろうとしたんじゃない！！　やめろやめろ！！」

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「……違いましたか」 「違うよ～、びっくりした……そういう意図じゃないし、お前あいつらの言ってた事真に受けるのそろそろやめろよ～……」 「ですが」 「確かにあの時は盛り上がってたけどな！！　あとお前『私は月』は女が使う叙述だからな！！　お前また剣が勇者に行くもんだと思っただろ！？」

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「以後気を付けます」 「……も～……仲間が貴族だと変な遊びを覚える……」 「ですが、詩的表現の叙述は流行の機微が聊か複雑でして……」 「まぁ確かにな……あたしも最初全然わかんなかったわ……『糸と針』がダメな意味の言葉になっちゃうって何だよ……夜中にお裁縫しない方が絶対問題だろ……」

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「とにかく！　これ以上変な気を遣われても困るから、あんまり二人きりだからって油断しないように！」 「はっ」 「最近あいつらすぐ変な察し方するし……お、終わったか。そっち鍋持って」 「はっ」 「ダンジョンって、魔物の主が倒されると崩れ始めるんだよなー……忘れ物よし、脱出！」 「はっ！」

U @ebleco

……と、いうわけで、感想とか貰えたらまた忘れた頃に続き書きます。