♭7 協奏曲 ♪ NO perfect One gOes (1次予選編前半)

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Astal_jukebox @astral_jukebox

「やめろおおおっ!」 …その結果がこれである。パーツをバキボキと砕かれるドラゴンロボは原型を殆ど残していない。試合開始3秒で半分こ怪ロボットに挟まれ、そのまま反撃も出来ずに10分間噛み砕かれ続けている。決着がついたも同然だが、試合は残り5分もある。 26

2014-09-19 20:20:02
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「もうやめろ!やめ…」 高校生が泣きながら降参しようとする。 「え!?まさか降参?さっき絶対降参しないって言ったよね?マジで?こっちは半日で適当に楽して仕上げてきてんのにそんなガラクタ出されちゃ迷惑なんだYO!?」 「ぐっ…」 勇矢が低次元な下卑た煽りで降参を阻止する。 27

2014-09-19 20:30:15
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この場の全員が…当人は勿論、審判や周囲の観客、裕岐達も早く終わって欲しいと思っているが、勇矢が許さない。降参しようとすれば今の様に煽る。時折拘束を故意に(敵にそうと気付かせぬ巧みさで)弱め、逆転を期待させる。ルールのグレーゾーンを綱渡り…いや糸渡りし、反則を逃れている。 28

2014-09-19 20:40:09
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「ぐ…この野郎…殺してやる!」 「え?嫌だ怖い殺害予告ですよ!審判の人!きゃー」 大口を開け、棒読みで訴えるポーズをとる。当の審判は苦虫を噛み潰した顔。勇矢の行為は「スポーツマンシップに反する行為」ではあるが、困ったことに辛うじて反則では無い。 29

2014-09-19 20:45:06
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「過度の挑発」を禁止するルールはあるにはある。「過度」とは?そもそも挑発とは?曖昧なそれをルールである程度定義している。「『殺す』は相手の顔を見ながら5分に1回以上言えばイエローカード」だとか、敵に送るハンドサインで許されるものはどこまでか、などが細かく決まっている。 30

2014-09-19 20:50:14
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本来なら全面禁止すべきだが、挨拶感覚で「死ね」という様な子供(や子供の様な大人)も少なくない。ある程度認めた方が盛り上がる面もある。ある種の温情措置と言える。その温情がここまで悪用されるのは、第一回大会から務めるこの審判にとっても予想外だった。 31

2014-09-19 20:55:06
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「チ、『チームガルーダ』!故意に試合を長引かせるのはもうやめなさい!2次予選では反則になり得ますよ!」 「え?何故故意だと思ったんですか!?あと今1次ですよね?2次でしたっけっ?」 審判の心証を悪くする言い回しに、後ろのチームメイトたちが頭を抱える。 32

2014-09-19 20:59:07
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実の所、勇矢は去年も2次予選で似た様な事をやっている。相手は介護ロボットメーカーだったが、優祈の尻を通りすがりに撫でようとした(正確には「フリ」だけの挑発だった)のが運のつき。試合開始後2分で彼等のロボ全12機が「ほぼ」行動不能にされた。ちょうど今の高校生達と同じように。 33

2014-09-19 21:10:16
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そして悠々と得点を稼ぎ、圧倒的点差―甲子園の強豪対弱小の試合並の点差をつけた。その間、彼等も機体を修理するべく場外へ動かそうとはしていた。勇矢はそれを放置すると見せかけ、場外へ正に出るというところで自機を急加速させて敵機を場内へ押し戻した。完全なる嬲り殺しである。 34

2014-09-19 21:20:08
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双方のチームに対する満場のブーイングと失笑の中、彼等は何も出来ぬまま惨敗した。勇矢の異常性・特異性を理解せぬ上役にはどやされ、顧客にも冷めた目で見られた。大人十名以上が小学生一人にしてやられたのだ。野球少年にプロ1軍が完敗するに等しい。チームは解散、株価や売上にまで響いた。35

2014-09-19 21:30:12
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更にライバル企業がある有用部品の特許を「どこか」から安く買い取ったことで、業績は更に悪化した。この事が発覚するや、優祈と彼女の姉の真優、勇矢の両親は彼を文字通り袋叩きに制裁した。尤もこの3人も警察や弁護士の立場やツテを利用して追撃を見舞っていたので、勇矢は殴られ損に感じた。36

2014-09-19 21:40:14
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「勇の奴…いや勇の野郎…」 裕岐も流石に我慢の限界だった。「親友」がまたしても外道に落ちようというのが許せなかった。既にこれ以上落ちる先も無さそうな気もしたが、それは忘れておく。 「うん。ありゃ当分甘えさせてやらねぇ」 優祈は残念そうに溜息を吐いた。 37

2014-09-19 21:50:09
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←←←【小休止】←←← 2~3時間後に再開後、1~2時間投下予定

2014-09-19 21:54:28
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「勇の奴…いや勇の野郎…」 裕岐も流石に我慢の限界だった。「親友」がまたしても外道に落ちようというのが許せなかった。既にこれ以上落ちる先も無さそうな気もしたが、それは忘れておく。 「うん。ありゃ当分甘えさせてやらねぇ」 優祈は残念そうに溜息を吐いた。 37

2014-09-20 01:15:21
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「まだやってたんですか…」 「おうよ」 裕岐は勇矢の隣人であるが、ここ1・2年疎遠だった。優祈の犯罪じみたスキンシップも良く知っていたが、まさか未だに小さい頃のままだとは。 「優祈お姉さん、今年で二十歳でしょ?…捕まりますよ?」 勇矢を監視しながら、器用にジト目を送る。 38

2014-09-20 01:23:06
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優祈は人前でこそむしろ過激になる。かつては共に未成年だったから良いが、今や本当に補導されかねない。少なくとも性別が逆なら100%お縄である。 「馬鹿言え!私が二十歳になるってことは、アイツが十歳になるってことだぞ!?」 「そおですね…俺も同い年ですからわかります」 39

2014-09-20 01:35:04
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「今のうちに味わえるだけ味わなくてどうするんだ!ショタコン的に!」 「声量下げて下さい。目撃者多いんですから捕まりますよマジで…うおぅ!?」 左腕で裕岐を抱き寄せ、頭を豊かな胸に押し付ける。右手で丸のサインを作り、悪い笑顔で言った。 「なぁに…コネならいくらでもある!」 40

2014-09-20 01:40:22
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「そのコネって夕里さんなんじゃあ…」 「うん」 勇矢の母夕里は、優祈の叔母に当たる。やり手の弁護士でもある。 「その夕里さんに訴えられたらどうすんです」 「そ、そんときはそん時だよ…」 優祈は露骨に目を逸らす。まあ実際に訴えられはしまいが、何度も釘は刺されているのだ。 41

2014-09-20 01:53:02
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などと言う茶番の間に5分が経った。 「Bブロック第1試…勝者!『チームガルーダ』!」 審判の声は疲弊しつつも、開放感から安堵も感じられた。 「チクショウ!このガキィ!」 一方、高校生達は怒りを爆発させていた。試合中抑えに抑えたものが今解放されたのだ。 42

2014-09-20 02:17:59
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「やめなさい!君達!」 審判や係員3人が阻止しようとする。5人いる高校生の3人が彼等を抑え、残り2人が勇矢の方へ向かってくる。勇矢は席を立った。殴られた時に勢いよく吹っ飛びやすいように。 「まずい」 裕岐は優祈を振り払い、彼等の下へ急ぐ。 43

2014-09-20 02:21:28
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勇矢の体を心配した訳では無い。わざと殴られて傷害で立件させようという勇矢の目論みを阻止する為である。かつて勇矢が使った手だ。相手が悪質だったこともあり、この時は数十人を自殺にまで追いやった。今回はそこまではすまいが、十分やり過ぎだ。 「止めて下さい!殴ったら訴えますよ!」44

2014-09-20 02:27:56
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「何が訴えるだ!こっちは器物損壊で訴えてやる!」 ロボを失った高校生達は、もう全試合棄権して敗北するより無い。後先を考える必要が無くなったとばかりに裕岐に掴み掛るが、裕岐はあっさり振りほどく。それは良いが、どう止めたものか悩んだ。下手に取り押さえてこっちが訴えられても困る。 45

2014-09-20 02:35:56
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裕岐が迷う間に残る1人が勇矢の胸ぐらを掴み上げる。嗚咽交じりに訴える。 「良くも好き勝手やりやがったな!あれはっ…俺達の青春だったんだぞ!お前だって同じことされたら嫌だろうがっ!何であんなことが出来るんだ!」 「動きがトロいからさ」 拘束が強まるが、勇矢は気にせず嘲り続ける 46

2014-09-20 02:42:05
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「だいたいこれは戦いなんだぞ。壊されんのが嫌なら何しに来たんだお前ら…」 正論である。正論だが、口調と顔付きが小憎たらしい物だった。 「まさか自分達は負けないと思ってたんじゃないかね?…あんなガラクタで」 「テメェ!」 図星であった。図星だが、一言多かった。 47

2014-09-20 02:50:14