史上最強の弟子ケンイチ感想

シゲ @shibahige

ケンイチが戦ってきた中でも、朝宮龍斗、叶翔、鍛冶摩里己は象徴的な相手です。 朝宮龍斗は幼馴染であり、過去、同じ事件で異なる体験をし、そこから異なる道を歩んでさらに活人拳と殺人拳とに師事する相手も別れ、再会したときには敵対する立場でした。

シゲ @shibahige

おそらくですが朝宮龍斗もケンイチと同じように普通の家庭に生まれたのでしょう。少しだけ運命が違ったなら武術とは無縁に育ったのかもしれません。しかし彼はケンイチと同じ事件を目にし、暴力に憑かれ、拳聖と出会ってしまいました。

シゲ @shibahige

不良集団のリーダーといじめられっ子（だった）という立場も対照的です。

シゲ @shibahige

叶翔はさらにはっきりとケンイチとは真逆の存在であることがすぐにわかります。誰よりも優れた武術の才能、暗鶚衆という戦闘集団に生まれ、その瞬間から戦いの道を宿命づけられた少年。過去のエピソードから優しい少年であることがわかりますが、その優しさがゆるされる生い立ちではありませんでした。

シゲ @shibahige

おそらく唯一の心許せる相手が師匠である「人越拳神」本郷晶だったのでしょう。しかし、彼だけでは叶翔の孤独は埋められませんでした。陽気にふるまいながら、誰かを常に求めていたのではないでしょうか。そして出会ったのが美羽であり、ケンイチだったわけです。

シゲ @shibahige

美羽の軽やかに飛ぶ姿に心奪われる叶翔ですが、それは初めて会った頃のケンイチも似たような経験をしていたように思います。

シゲ @shibahige

ケンイチと叶翔との対決は、普通の幸せな家庭に生まれ、才能がまるでないのに武術の道に転がり落ちた少年と、恵まれない生い立ちで、有り余る才能を持ちながら満たされない少年の戦いでした。

シゲ @shibahige

鍛冶摩里己とケンイチは奇しくも活人拳と殺人拳、それぞれの弟子集団の中で最も才能に恵まれないながら、それぞれの代表として最終決戦の場で立ち合うことになるのです。

シゲ @shibahige

かつてティーラウィット・コーキンというYOMIのムエタイ使いがケンイチに言ったセリフがあります。「お前は力の強さには心の強さで、技の巧みさには心の巧みさで生き延びてきた」と。才能や武術にふれた時間では、ケンイチはこれまで全ての相手に劣ってきました。

シゲ @shibahige

ケンイチはいつもほとんどギリギリの戦いになりますが、勝負の際、最後に彼を立ち上がらせるのは心……信念によるものが多かったのです。 そして、鍛冶摩里己はその心……武術への気持ちにかけておそらくケンイチに勝るとも劣らぬ強さ巧みさを抱いていたはずです。

シゲ @shibahige

鍛冶摩里己の切り札は、朝宮龍斗が拳聖に教わった静動轟一を彷彿とさせる、相手どころか自身さえ害する危うい技でした。さらに彼の命がけの執念が加わった結果、受けることも流すこともできない技となったのです。

シゲ @shibahige

果たしてケンイチはどうしたか！？というところに関しては、ほんっといまさらですがネタバレに配慮するフリして書きません。技の部分の解釈に関しては割愛します。

シゲ @shibahige

ただ、僕はこの勝負を読んでいる最中、ぼんやりと思っていたのですが、果たしてこのケンイチは鍛冶摩里己に対して心で勝っているだろうか、と。朝宮龍斗、叶翔のときとは違います。正直にいってしまえば鍛冶摩里己という男に対して、ケンイチはほとんど因縁がないのです。

シゲ @shibahige

ケンイチは、私見ですが、相手に向ける強い気持ちを備えてようやくこれまで強敵たちと渡り合ってきたように思います。YOMIの相手の多くともそうでした。そしてその点で、鍛冶摩里己という男に対して、果たして、と思ってしまったのです。

シゲ @shibahige

ケンイチの気持ちが弱いと思ったのではありません。鍛冶摩里己という拳聖とケンイチに似ている男が武術にかける尋常じゃない信念を打ち破るに足るものが、この時点でケンイチにあるかどうかで疑問に思いました。しぐれさん殺されかけるぐらいのことにならないとと考えてしまうぐらいに。

シゲ @shibahige

結末において多くを語るは無粋ですが、もし、このときケンイチが鍛冶摩里己に心で勝っていたとするならば、それは心そのものの強さではなく、互いへ向けた心の質の違いにあったのではないでしょうか。

シゲ @shibahige

鍛冶摩里己は殺人拳の武術家です。武術の発展のために犠牲は仕方ないと考える、拳聖に似た思考の、武術以外を切り捨てた男です。その信念は自分自身がその犠牲の対象であったとしても揺らぐことはありません。より危険な技さえ武術のためにためらいなく使います。

シゲ @shibahige

一方でケンイチは活人拳の武術家です。”闇”やYOMIと敵対する以前から一貫して、彼の拳は人を活かし、守るためにふるわれてきました。だからこそ彼の元にはかつて戦った相手が次々と集まるのです。部下や仇敵としてではなく、友人として。

シゲ @shibahige

もし、もしもこの二人の違いが挙げられるとするならばその一点であろうと僕は思います。鍛冶摩里己は武の発展に命をかけ、ケンイチは人を活かすことに命をかけた。そして、結果的に彼ら二人の信念はどちらも折れることなく叶った、そういうことなのではないでしょうか。

シゲ @shibahige

風林寺砕牙が最後にケンイチに質問したその答えこそが、そのまますべての答えにつながるのだと、僕は思いました。

シゲ @shibahige

史上最強の弟子ケンイチ、とてもおもしろく、とてもいい、素晴らしい漫画でした。長い間楽しませてくれてありがとうございます。最初から最後までずっと大好きでした。大好きです。

シゲ @shibahige

以上です。長々とつぶやいてしまい、TLを席巻してしまったかもしれず、またもしネタバレを食らってしまったとお怒りの方がいらっしゃいましたら失礼しました、申し訳ありません。

シゲ @shibahige

正直エロとか技とかエロとかYOMIの他の弟子とかエロとかしぐれさんとかエロとか師匠たちとかエロとか新白連合とかエロとか語ろうかと思ったんですが、まあ、キリが良いので。

シゲ @shibahige

あ、でも最後までエロを疎かにしなかったのは本当にすごいと思います。やってくれたぜおいちゃん…！