アサイラムVSマイアミ鎮守府 わくわく！合同演習！ Part5

キタユキ @k_t_y_k

自分の主人は、あの人は、彼女と何を話したのだろうか。しかし、今それに気を取られている時間はない。加賀はさらに体重をかけ、一気に押し倒す。頭を潰さんと、再び拳を打ち下ろす。あどけない顔に血が舞う。同時に、加賀の視界も半分塞がれる。手刀が突き刺さってる。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

『……』 『……』 『あの』 『ごっ、ごめんさない！』 『あっいえこちらこそすいません…』 『あ、あの、そういうつもりじゃ……』 『あっ大丈夫ですお気遣いなく』 『は、はい…』 『……』 『……』 『……暑いですね……』 『そうですね……』 『……』 『……』 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

突き刺された加賀の左目、暗く沈んだ眼前に、ぼんやりと人影が浮かび上がってきた。己の主人たる提督だ。見下ろしているが、記憶にない場所。声からして羽黒の視点と気づくのに、そう時間はかからなかった。自分が彼女の主人と話している時の、自分の主人と話している彼女だ。 #加賀さん観察日記

orphe @orphechin

最初から真っ向勝負の殴り合い。前回の戦いで互いの手の内は知り尽くしている。故に小細工など無用。重巡の間合いで空母が戦うなど、ましてや素手での殺し合いなど、常識では理解不能だろう。だがこの二人に常識など存在しない。この戦い方が、こいつらにとっては最上の手段。 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

艦載機はなく、砲もなく。 互いの五体を以て互いを殺す原始の闘争。だがここから産まれる暴力は、紛れもなく兵器たる艦娘の性質を見る者に刻み込ませるだろう。 性愛の徒ではなく、人ですらなく。 眼前の敵を殲滅するただその一点にのみ己の存在を賭する者。それこそが兵器だ。 #艦これ航海日誌

orphe @orphechin

こいつらこそが兵器だ。 お前らこそが艦娘だ。 これほどまでに戦える連中が、お前らの他にいるものか。 殺せ殺せ殺せ。互いの五臓を引き出し六腑を潰し、肉と魂の一片に至るまで、殺し尽くすために燃やし尽くせ。 そうしてこの世界を瞠目せしめるがいい。 #艦これ航海日誌

キタユキ @k_t_y_k

視界左の羽黒と提督は、気まずそうに他愛のない会話を交わしている。『暑いですね』だけでもう五巡ほど。そういえばあの人は、おとなしい艦娘相手にはいつもどう話しかけていいのかわからず、自分に助けを求めてきていた。それにしてもコミュ障だ。加賀は内心呆れていた。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

自分がマイアミの提督と話したような、互いの内面に踏み込むような会話をしているのだろうと、あの人に求めるのが多分間違いだったのだろう。加賀は映像を追うのを諦めた。そして思い出す。かのマスクの下から投げかけられた言葉。思いに応えたいなら、相手のことをよく知れ－－ #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

加賀は鈍感だから、食らうしかできない。肉を引き裂き、腹に溜めることでしか、相手の情に触れることができない。鎮守府に出たゴキブリを火炎放射器で焼いたという話を苦笑いで聞く彼女は、自分の主人に対してどう思ったのか。自分の胸中にない感情が、湧いているのだろうか。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

知りたい、と思った時には、身体が動いていた。眼窩に突き刺さる手を無理やり引き抜き、抑え付けたままの首筋へ牙を立てた。鉄の味が広がる。艦娘の魂の味。それは次第に甘みを増し、ラムネが弾けるように舌の上で踊る。羽黒の手が再び抉れた痕を掴む。頭蓋がひしゃげていく。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

頸動脈を噛み切られ、頭が胴と離れた程度で艦娘は死なない。大量失血してもそれは燃料切れで、注げば再び動き出すのだ。顔半分を潰され、首を拗られながらも、加賀は羽黒の肉を喰む。肩肉を引きちぎり、食い破った装甲をさらに引き裂き、心臓目掛けて牙を食い込ませる。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

食われた羽黒の一部は、水をたっぷり吸ったスポンジを絞るが如く、加賀の腹の中を海で満たしていった。上からも下からも血の降り注ぐ、紅のスノードーム。凡ゆる理性の軛から解き放たれた暴力の条理が、形となって入り込んでくる。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

ーー湖の上、赤い光の柱が二つ。 以前も似たような光景を見た。人工の小さな海の上で、砲も艦載機もなく肉体だけを駆使する艦娘二人。前回は満身創痍からの覚醒だったが、今回は最初からフルスロットルだ。自分の左手に目を落とす。薬指の指輪が、螺旋に食い込んでいる。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

“ケッコン”のリミット解除がきちんと発動しているのだろう。指輪だったものは皮膚の下を蝕むように赤黒く変色し、うねる。痛みはない。というより、痛む神経だけ死んでしまったようなので、痛まない。再び加賀を見やる。先程まで四本足だったが、今は二本足で羽黒に掴みかかる。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

楽しそうだ、と思った。普段の出撃をモニタで見ている時よりずっと。羽黒が相手なおかげもあるだろう。 試合前に彼女と話した時、以前から疑問に思っていたことを聞いた。 『戦うのは楽しいか？』 羽黒は頷いた。付け加えて『人を殺すと司令官さんのことがわかるから』とも。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

互いにしどろもどろだったので深く突っ込んでは聞けなかったが、彼女とあちらは中々にハードな繋がりを持っているようだ。艦娘に人権が付与されないことで！彼のビジネスが進まないことに辟易している、とは聞いたが、私なんかより、ずっと艦娘を兵器として正しく扱えている。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

加賀が何を話してきたかは知らない。あいつのことは未だにわからない。人間だった時のあいつを私は知っているが、その時もあまりよくわからなかった。わからないことだらけだ。でも、今、これだけはわかる。 加賀は、戦うことを楽しんで、殺すことに真剣になっている。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

再び指を見る。4つはめられたリングの一番下、付け根の部分はもう腐って骨だけになっていた。血に飢えた二匹は全身でぶつかりあってはいるが、加賀はどうも押され気味だ。元より空母、白兵より遠隔タイプだから力負けするのは仕方ないのだが、加賀改二はよと思わず呟いてしまう。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

殴り合いは白熱し、水の色は血で黒く濁っていく。羽黒に担ぎ飛ばされ、加賀が近くのフェンスに激突した。けたたましい金網の叫びと、群衆の野次が上がる。加賀、と負けないぐらい大声で呼びかけたが、加賀はこちらに見向きもせず、柵を蹴って戦いの渦中へ戻って行った。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

細切れになってはくっつき、ズタズタになっては戻り。 ケッコンによりリミットを解除した二人は、破壊と再生を延々と繰り返していた。加賀の腕が羽黒の胴を貫いたかと思えば、羽黒の脚が加賀の下腹部を吹き飛ばす。それからフィルムが巻き戻るように、血を巻き込んで再生する。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

もはや強固な戦う意志と桁外れの体力を持つどちらかだけが、最後まで立ち続けることでしか決まらない殺し合いだ。試合開始から5〜6時間は経つ。湖の周囲を囲むフェンスは例外なくひしゃげ、足元にまで二人分の血と臓物が流れてきている。既に水の色は赤を通り越して、黒い。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

選手よりも先に観客が疲れ果てていた。決まらない決着に帰ろうとする人も見たが、皆レ級が出て危険だからと黒づくめの警備員に留められている。だがもうそろそろ戦う二人の体力も限界だろう。自分の指に刻まれた螺旋も骨を蝕み尽くしたのか、根元から折れそうに黒ずんでいる。 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

「横、いいですか」 右から白馬の鼻が突き出した。白いパーカーのフード深く被った、小柄な馬面がグニャグニャのフェンスに肘をかける。よく見ると頭はラバーマスクで、角が一本伸びている。そういえばこいつ、どこかで。 「お久しぶりです。試合前にもお会いしましたね」 #加賀さん観察日記

キタユキ @k_t_y_k

奇怪な見た目と裏腹に、声は幼い。そういえば視察にきた帰り、こいつとぶつかった記憶がある。出し物かと思ってたがどうも一般客らしい。 「いい空母をお持ちですね。でも、このままだと無駄死にすることになる。合図したら、撤退命令を。あちらの提督にも、そう伝えて下さい」 #加賀さん観察日記

フロッグ @thefrog1192

謎のお客さん #加賀観