四大聖戦:決戦フェイズ【『花園』『深淵』】

──『花園』  光焔 @Kouen_Hi  瑞風 @wind_he_ro  慈雨 @JIU_brave 続きを読む
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フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

『叶わなかったなァ』 燃え散る狼。その姿に、異形はその顎を開く。 『愛し、哀し。愛おし、いと惜し。此の世は全く儘ならぬ。』 まるで天に向けるかのように、深淵の中で頭を上げ、咆哮する。 地があれば、震えただろうか。天があれば、落ちただろうか。 しかし其処には何もない。

2014-10-05 19:12:45
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

異形は黒々とした目を瞬き、溜息を吐いた。そうして再び身体を畳み、ちらりと見える光を見遣る。 其処に在る姿は三つ。かつて少女が愛した者。 『愛(かな)しんでくれるか、愛し子を。嗚呼、それだけで、生きた意味も在ったというもの。魔王になった意味も在ったというもの。』 呵呵、と笑い。

2014-10-05 19:13:47
フロリーシャ・ラウィーニーア @flou_siki

異形はゆっくりと目を閉じて。 『悪意が魔になるのではない。善意が聖になるのではない。魔は魔として、聖は聖として生まれる。ただそれのみ。故に争いは止まぬ。殺し合いは続き、荒野が残る。当然の末路。』 言葉を残して、消えていった。 『女神よ、お前はまっこと、無能よなァ…』

2014-10-05 19:14:17

 
 
 
 
 

慈雨の勇者 @JIU_brave

なにかが、吼えた声。燃える匂い。 見えなくても、女は感じていた。それは、最後の希望が潰えたしるし。 「そう……」 顔は上げない。 「人間は、この世界は、これからどうなるのかしら」 女神さまは、また新しい勇者を生み出すのだろうか。 でも、その世界に、私はいない。

2014-10-05 23:56:57
慈雨の勇者 @JIU_brave

「幸せな人生だったかはわからない」 それでも。 「女神さまには、感謝すべきかしら」 少しの間だったけど。 荒れ果てた世界だったけど。 「この目に、光を与えてくださったことに」 命をかけるには、あまりにくだらない理由だっただろうが。 「あたたかい手で触れてくださったことに」

2014-10-05 23:59:43
慈雨の勇者 @JIU_brave

「女神さまは、もう私になにもくださらないけれど」 生きて、死ぬだけの理由をくださった。 ただ死へと導かれただけにしても、ただひたすらあのあたたかい手に、希望に、すがっていた時間は。 「満ち足りていたんでしょうね」

2014-10-06 00:03:26
慈雨の勇者 @JIU_brave

伏せたままの女の顔に、笑みが浮かぶ。 そのまま、顔を上げることなくフィオナは消えた。 一滴の水も、一片の後悔も、そこには残らなかった。

2014-10-06 00:04:12

 
 
 
 
 

【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

――取り返しがつかないと、後悔に喘ぐばかりだった少年は不意に涙するのをやめた。正義が、勇者が、潰えた感覚。どうして、が来る前に、理解めいたものが胸に広がる。 女神にとって、勇者は換えのきく駒に過ぎないのだと。魔王に思う所の無い人間等、そういない。願いを持たない人間も、いない。

2014-10-06 00:42:59
【赫焉の魔王】セティオ @Cettio_FHW

チカラを与えてやれば、人は誰でも勇者になる。なんて簡単な仕組みだろう。女神にとって、この戦いはトライアンドエラー、その一つに過ぎない。 「でも、魔王を殺したいって願ったのは僕だ」 うまく乗せられたような気がした。女神の掌の上に。後悔に理解が被さり、諦観めいた感情に変化していった。

2014-10-06 00:43:03